二輪車ETC問題はETC車載器問題
昨年の11月11日に『二輪車ETC問題その9 疑惑のETC一般モニター募集』を指摘してから4ヶ月になろうとしています。残念ながら、というべきか、やっぱり、というべきか、疑惑が事実に変わりそうな気配です。
ETCのモニター車載器の装着が済んだライダーが、ブログでレポートしているのが散見されるようになりました。まだまだその数は少ないのですが、せっかくのモニターなのに、ETC利用を先取りできている自慢話に傾きがちです。ETCによる料金所通過が快適なことは、わざわざモニター実験しなくても分かることで、そんなことがモニターの目的ではなかったはずです。本格運用に向けて何がモニターされているものか、今回の一般モニター試行運用の目的に照らした結果が一向に見えてきません。
HIDO(財)道路新産業開発機構による一般モニター募集要項には、その目的が以下のように記されています。
平成17年4月より実施してきた特定モニター による試行運用の結果、走行の安全性、通信の信頼性等に大きな問題がないことが確認されました。そこで、一般モニターを対象とした試行運用を実施し、本格運用に向けた安全性、料金所運用について広く意見を収集することとします。そこで、11月1日にモニター募集となったわけですが、その定員が5000人と多いこと、期限が示されていないことにまず疑惑が頭をもたげます。いったい、二輪ETCの「本格運用」のために、どのような安全性をいつまでに確認しようとしているのか?当サイトが実施したアンケート調査で分かるように、本格運用に向けた意見はすでに出尽くしています。それは、
1.早期実施(料金所を安全に通過、ETC割引の享受) 2.四輪なみのコンパクトな車載器 3.四輪なみの安価な車載器 4.プロライダーのモニターで使われた車載器への不満つまり、本格運用の障害になっている問題はただひとつ、車載器だけです。二輪ETCを本格運用するにしても、まだ市販の車載器がありません。そもそも車載器を製造するメーカーがすでに決まっているという話も耳に入ってきていません。モニター使用の車載器は日本無線による試作品です。その車載器がどのようなものか、すでに周知です。モニターに当たったライダーの中には、車載器があまりに大きく、その取り付け方法に呆れて、モニターを辞退したケースも報告されています。
結局、二輪車ETC問題とは、なんのことはない、二輪ETC車載器の問題だったことになります。
ETC車載器の致命的設計思想
ではなぜ、市販用の二輪ETC車載器が用意できないのか?
それは、ETCゲートを設置している高速道路会社自身がETC車載器を提供しないで、電気製品メーカーに製造販売させている、という構造から来るものです。高速道路会社が車載器を販売しない以上、市販されないことの責任をどこもとりようがない。そして、市販されないのは、メーカーにとって二輪ETC市場が魅力的でない、ただそれだけの理由です。
そもそも、現在のETC車載器は各車両に固定して、他用できないようにした基本設計になっています。それは、それぞれの車種によって料金が異なる現在の料金体系に対応することから来ています。もちろん、取り外しできて携帯性にすぐれた無線器も可能だったはずですが、車種を偽ることを防止することを名目に、わざわざ登録証と照合する手続きを経て、車に装着するしくみにしたものでしょう。
しかも、ETC車載器は四輪を前提として設計されたものです。つまり、車内にアンテナと本体を取り付けて、電源もバッテリーから簡単にとれるという構造です。
一方、バイクには車内がありません。むき出しになったアンテナは耐候性が求められるばかりでなく、いたずらの危険にさらされます。本体を収容できるスペースのあるモデルは限られますし、ETCカードの抜き差しがおっくうになるようでは困ります。
四輪のETC車載器は服のポケットに収まるくらい小型化しているのだから、二輪の場合は脱着可能な設計にして、ジャケットに入れたり、タンクバックに収めればいいものを、上記のように、車両に固定するという致命的な選択をしたがために、後回しにしていた「二輪ETC問題」に直面することになりました。
疑惑のシナリオ
なぜそこまでして、車両に固定する車載器にこだわったのか?
そこには、単に料金所での支払いにとどまらず、永久的に高速道路を有料化しようとする意図も見え隠れします。その先に来るのは、たぶんETC装着の義務化でしょう。まずは首都高がその先導役を担うようです。
そのためには、二輪ETCを形だけでもスタートさせないとなりません。国土交通省はじめ高速道路関係会社のとる道は限られます。たとえば、こんなシナリオがあったでしょうか。
1.どんなに不格好で高価、非実用的であっても、なんとか「二輪ETC車載器」なるものを どこかのメーカーに市販してもらい、二輪ETC本格運用の既成事実を作る。 2.それまで、二輪ETC本格稼働の遅れと、車載器問題が社会問題にならぬよう、ライダー の不満分子を黙らせる。そのためには5000台ほどモニターと称して車載器をタダで配る。 取り付け料もタダにする。 3.そうすると、運良く車載器をプレゼントされたモニターライダーが、ETC先取りが嬉し くて、他のライダーに対してもETCの便利さを吹聴してくれるので、二輪ETC問題につい ての批判を下火にさせることに寄与する。また、タダでもらった車載器にケチはつけにく いだろうから、不満の報告もなく、この試作機のまま市販化に踏み切る口実ができる。 4.さらに、二輪ETCは遅れてはいるが、本格実施にむけて計画が進行しているという錯覚 を、国民にもマスコミにも植え付けられる。これが勘ぐった邪推なのかどうか、ハイカが全面廃止になるこの4月1日にはっきりします。なんども繰り返し引用してきましたが、高速道路会社はハイカの廃止にあたって、以下を公約していました。エイプリルフールがオチではありません。念のため。一方、二輪車のお客様などETCを利用したくてもご利用頂けなかったお客様には、 できるだけ早くETCをご利用いただけるよう、システムの開発を急いで いますが、 同時にプリペイド方式のICカードにより、従来のハイカや回数券同様のメリット を享受していただきたいと思っています。 これらの代替措置が実施されるまでは、ハイカや回数券を廃止する予定はありません ので、ご安心下さい。また、これらの代替措置によって、これまで以上に お客様が より快適に、より楽しく、より便利に高速道路をご利用いただけるよう、努めてまい ります。 (『ハイウェイカード偽造問題について』2004年7月30日)