ブリキおもちゃの万引き事件にバイク窃盗を重ねると店の防犯カメラに捉えられた犯人の顔写真を無修正でネット上で公開するかどうかで話題になった、ブリキおもちゃ「鉄人28号」万引き事件。結局、同業の古物商に転売されていたことが分かり、犯人はあっけなく逮捕。これで一件落着のように報じられています。
いくら犯人とはいえ、その写真を無修正でネットで公開することの是非が論じられたことは、ひとつの副産物として意義のあることでした。その是非をめぐってマスコミが騒いでくれたことが、結果として犯人逮捕に結びついたわけですが、議論そのものが決着を見たわけではありません。警察が捜査に乗り出さない以上、ギリギリのモザイクで犯人の画像を公開することはこれからも続くことでしょう。でないと、そもそも防犯カメラが役立たずになってしまう、という意見もあるからです。
でも、バイク窃盗に関連させてこのニュースを見ていた(いる)人は、おそらく感じていることでしょう ー 事件はまだ解決していないじゃん。そう、肝心の盗品はまだ持ち主に戻っていないのです。
今回の古物品の万引きとバイク窃盗とは全く同じカテゴリーの事件です。バイク窃盗は万引きと同じ扱いで、いくら防犯カメラの犯人画像を警察に提出しても、ふつうは捜査されるものではありません。それが、警視庁が被害店にネット上での公開をやめるよう要請していたこともあったのでしょう、たかが万引き事件にしては異例の捜査に乗り出しました。その結果、
ちょっとおかしいのは、買い取ったのは被害にあった古書店と同じショッピングモール内の古物商ということ。ニュースで話題になっていたのに、警察に届け出るつもりがなかったのかしら。捜査員が18日、中野ブロードウェイ内の別の古物店で、渦中の盗難品と みられる“鉄人28号”を発見。店側に確認すると、事件3日後の7日、 男が6万4000円で売っていたことが判明。 「まんだらけ万引犯逮捕、27万円「鉄人28号」叩き売りしてた」 スポニチアネックス 8月20日(水)7時1分配信もしも盗品と知らずに買ったものなら、ふつうは所有権は買った人に移って、取り戻すことが難しい ー と私は理解していました。でも、ちょっと違っていたようです。
窃盗犯罪、とくにバイク窃盗は、その多くが転売目的だろうと私は考えています。つまり、転売が簡単にできる環境があるから窃盗が横行するのであって、逆ではない。ならば、盗まれないように防犯対策をとるのは当然として、盗まれても転売しにくいシステムや工夫が求められます。今回たまたま万引き犯が逮捕されたからといって、これを契機に窃盗事件が減少に向かうことなどあり得ないのです。「まんだらけから盗まれた「鉄人28号」 古物店で売られていた人形は戻ってくるのか?」 弁護士ドットコム 2014年08月20日 11時35分
小柄なライダーが乗りこなす大型バイク白バイに採用されている最新バイクモデルは何かと調べていたら、CB1300SFがそのひとつと分かりました。さらに、身長155cmと小柄な女性白バイ隊員がその白バイ仕様CB1300Pを華麗に乗りこなしている映像がアップされていました。昨年10月の第44回全国白バイ安 全運転競技大会での、石川県警米澤隊員のスラローム演技です。
とかく力でマシンをねじ伏せているように見えてしまう男性隊員と比べて、なんとしなやかなライディング。あんなふうに乗りこなしたいものだ、と同じく小柄な私は限定解除に挑戦していたころを思い出したことでした。
「バイク市場復活の兆し」キャンペーンの裏事情 その2 ― 欧米のバイク市場ハーレー・ダビッドソンのアニュアル・レポートには、自社の製品の出荷台数の報告があります。6年前の市場分析
「続・ハーレーダビッドソンの成長神話 - HD Annual Report に見るバイク市場動向」(2008.2.2)で2007年までの出荷台数の推移をグラフにしました。図3でその後の推移を示します。アメリカ国内向けの出荷がピーク時と比べて2010年には半減したものの、それ以降は持ち直しつつあるように見えます。さらに、輸出が国内向けほどには落ち込まなかったことが見て取れます。
大型バイクの市場は世界的にはアメリカとヨーロッパがメインで、げんに日本メーカーが輸出する251cc以上の「小型二輪車」は主に大型自動二輪で、その75%(2013年)が北米とヨーロッパ向けで占められます。その欧米の大型二輪市場について、やはりハーレーのアニュアル・レポートには651cc以上の排気量について登録台数の統計が記載されています。それをグラフにしたのが下の図4です。
ハーレーはアメリカ市場ではシェアが約5割を占めていますので、アメリカ市場のグラフがハーレー出荷台数と連動していることが分かります。かたや、ヨーロッパは市場規模は減少しているものの、アメリカほどの落ち込みではありません。
ではなぜ、日本メーカーの出荷がピーク時の1/3にまで落ち込んだのか。ひとつには、円高があると思われます。ドル安・ユーロ安は日本で製造する大型二輪の輸出にとってはそれなりのハンディとなります。下に対ドルの円レートの推移を示します。ただ、大型バイクは趣味性の強い商品なので、価格がどれだけ購買意欲に影響するのか、微妙な点があります。
ここまで見る限りでは、日本メーカーの輸出不振は、たんに市場の縮小と円高を反映したものか、と思いたくなります。ならば、経産省がわざわざ「国を挙げて、バイクの競争力向上に不可欠な国内需要を増や」そうと、急に旗を振り出した背景が分かりません。
そもそも自動二輪の「国内需要」はどうなっているのか、次回はその分析を試みましょう。(つづく)
「バイク市場復活の兆し」キャンペーンの裏事情 その1 ― なぜ経産省が旗振り?このところ、国内の二輪市場が復活の兆し、というニュース記事が目につきます。モーターサイクルショーの入場者の増加、メーカーからの新しいモデルの投入、そして、いわゆる中高年のリターンライダーが増えている、などの事実と背景が根拠になっています。
おとといのSankeiBiz もそうした記事のひとつ。ただ、記事を読んでいると、数字の使い方に、おやっ、と読み流せない箇所がありました。たとえば、
前年比5割増と言われれば、ずごい増え方のように錯覚してしまいます。それだけならともかく、20年前の数字を持ち出すことは文脈からどうなのか、と思います。リーマン・ショックを引き合いに出すからには、その前後の数字と比べるほうが、調査報道ならば、妥当なところですが。2013年度の排気量251cc以上のバイク販売台数は前年度比48.5%増の 3万6985台。12万台を超えていた20年前に比べると3割にも満たないが、 リーマン・ショック後から4年連続で続いた2万台からようやく脱却し、需要が 戻りつつある。 中・大型バイク復活の兆し 中高年ライダー増加、各社モデル拡充 SankeiBiz 2014.6.14 07:58もうひとつ、気になったのは、上記の記事の終わりの部分。
はて、なぜ経産省が今になって二輪の国内需要を増やそうとするのかしら? しかも、世界シェアが4割という日本メーカーの輸出は大型バイクが大部分で、記事でいう251cc以上の排気量で一括されるのですが、目標の「国内販売の100万台」とは、どうみても原付きバイクを含んだ数字でしょう。バイク復活は国策としての側面もある。ホンダ、ヤマハ発、スズキ、川崎重工業を 合わせた世界シェアは4割を超えており、世界で高い競争力を維持しているからだ。 経済産業省が昨年、「2020年までにバイクの国内販売台数100万台回復、 日本勢の世界シェア5割」を掲げたのもこのためだ。国を挙げて、バイクの競争力 向上に不可欠な国内需要を増やしていく方針だ。そこでまず、251cc以上のバイクの輸出台数と国内出荷台数(4メーカー合計)について、過去10年間の推移を図1に示します。(日本自動車工業会「統計速報」のデータより作成)
これは9年前のエッセー
「成熟社会のバイク産業とバイク文化(05.4.5)」で示したグラフを現在にまで延長したかたちになります。すると、日本の4メーカーにとっての大問題は、輸出が2006年のピーク時から1/3にまで落ち込んだことだと分かります。黄色のグラフは国内向け出荷台数です。図1では砂粒みたいで「棒」にならない黄色のグラフの、座標軸を引き延ばしたのが図2です。250ccクラスの出荷台数も並べています。たしかに251cc以上も、126-250ccクラスも、ここ数年増加傾向が見えますが、輸出減をカバーするには、なおほど遠いものです。上記エッセーでは、「4メーカーにとって、バイクの市場は圧倒的に世界のほうであって、日本のバイク市場はグラフのとおりの米粒のようなもの」と書いたのですが、米粒はやはり米粒のまま。これらグラフを見ると、なぜ経産省がよりによって「国内100万台、世界シェア5割」というキャンペーンを張るのか、どこか現実とのズレを感じます。
そもそも輸出がなぜこんなに激減したままなのか、次回はその分析をしてみましょう。(つづく)