成熟社会のバイク産業とバイク文化 (05.4.5)


社団法人 全国軽自動車協会連合会「統計」社団法人 日本自動車工業会(JAMA)「データベース」に、四輪とともに二輪に関する統計資料が公開されています。そのデータを加工してグラフ化すると、バイク人口とバイク市場の概要が見えてきます。

今回はその中から、125cc以上の自動二輪についての統計を見ることにします。まずは、1967年から2004年までの国内における新車販売の推移がこのグラフです。

新車販売統計

1997年以降に限られますが、126-250ccの中古車販売のデータもありましたので、加えてあります。1969年から1972年にかけて小さなピークがあるのは、CB750FOURやZ2など、はじめての大型バイクが市場で人気を集めた時期でしょう。それが免許制度の改変のために一時下火になったものの、1977年くらいから経済成長の波に乗り、1988年まで空前のバイクブームが続きます。

私が自動二輪の免許を取得したのは1985年のことで、当時、次から次へと投入されるニューモデルに興奮したことを思いだします。やがて、バブル経済の破綻とともにバイクブームが下火になるのが90年代で、250ccが1999年くらいからいくらか復調するのは、おそらく大型スクーターが人気を博していることによるものでしょう。

ここで注目すべきは、中古の販売が活況であること。250cc以上のデータがありませんが、トータルで新車の販売台数をはるかに越えることになるでしょう。さらに中古の販売台数が同年の、あるいは5年前の新車販売台数より多いことは、その回転が早いことを示唆するものです。

新車販売はこのように経済状況を反映したカーブを示していますが、ではバイク人口はどうなっているかというと、保有台数はこのようになります。

保有台数

10年前から、保有台数は300万で安定していますが、さきほど指摘したように、数年前から大型スクーターが徐々に保有台数を上向きにしているような感があります。それはともかくとして、バイク人口が安定しているということは、全世代に渡ってバイクに乗る人がいて、特別若い人が新たにバイク人口を押し上げることはないと見ることができます。これは以前紹介したバイク所有者の世代分布と符合します。

こうしてみると、バイクに関しては、日本は成熟社会に入ったと言えます。

とは言っても、バイクは、それに乗る人、それをつくるメーカー、整備修理してくれるショップがあって初めて存在できます。販売がピーク時の半分になっているのに、日本の4メーカーが潰れないでいるのは、バイク専業メーカーではなくて別に本業があるせいもあるでしょうが、大きな要因は海外市場に活路を見ているからです。輸出は大型バイクが中心ですので、251cc以上のバイクで国内販売との比較で輸出台数を見てみます。

大型輸出台数

これを見ると、4メーカーにとって、バイクの市場は圧倒的に世界のほうであって、日本のバイク市場はグラフのとおりの米粒のようなものです。国内新車販売台数と4メーカーの国内販売台数の差は、外車と逆輸入車と思われます。外車でいちばん売れているハーレーは、2003年の販売が12,000台でした。国内メーカーについては、バイク雑誌などでモデルカタログの特集を見ると、国内モデルよりも輸出モデルにラインアップが豊富なことに気づきますが、その背景はここにあります。さらに、世界で主流ではなくなった、いわゆる中間排気量の600-750ccのモデルが少なく、大型というといきなりリッターバイク、1300ccなどと大排気量車になるのは、輸出モデルを国内投入しているからです。

この輸出台数のメーカー毎の内訳はこのようになります。

メーカー別大型輸出台数

10年前と比べると、ヤマハとスズキが輸出を2.5倍に増していることが見てとれます。日本で大型バイクの窃盗が野放しの結果、被害にあってバイクから降りるライダーがいたとしても、こうしたメーカーにはまったく痛くも痒くもないでしょうから、盗難対策には冷ややかであるかのように見えることもあります。少なくとも、メーカーにとって日本での大型バイク盗難は死活問題ではなさそうです。

以上は大型バイクについてですが、250ccバイクの輸出比率はどうでしょう。

小型輸出台数

大型バイクほど輸出比率は高くはありません。輸出の多くはオフロードモデルではないかと想像するのですが、それは資料が出てきてから分析することにしましょう。ただここで言えるのは、輸出に依存できない分だけ、このクラスは国内販売に必死であること。このクラスの国内販売が上向きなのは大型スクーターによるもので、現在250ccスクーターはかつての80年代の新車ラッシュを思いださせるほど、各メーカーが力をいれているものです。ATバイクの免許制度高速道路の二人乗り、これらは大型スクーターの販売をもうしばらく押し上げる効果がありそうです。

バイクに乗れるということは、そこにバイクがあるから、ではなくて、バイクメーカーがあるからだ、と言った方が正確かも知れません。壊れたら直すことができる機械は、そのパーツを供給できるメーカーが必要です。できるだけ長く消費財を使うこと、そもそもそのように設計することは環境にも好ましいことです。その一方でメーカーは新車を造り続けなければ存続できないこともまた事実です。

いつまでも新車を前年比アップの右肩上がり成長で製造販売はできないでしょう。世界的にバイクの成熟社会が到来して、新車販売が減少して、中古バイクの市場がそれを上回るようになったとき、メーカー、ショップ、ライダーはどうバイクとつきあうべきか、今から考えておくことは早すぎることはありません。それはもう一部現実となっています。



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