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A1-16   07.05.19

迷走電流の火災                    転載を禁ず

「迷走電流」などと言う名称を使うと、いかにも、興味を引きそうな名前ですが、
 
 最近は、あまり聞かれなくなってきました。
  火災学会の「火災」誌286号(今年2月)で、東京消防の火災事例報告「分電盤における
  火災の影響により隣接する建物が焼損した事例」が、その「迷走電流」の火災になります。
 
 ☆ 火災概要
 火災誌の火災事例では、耐火3/0の1階の飲食店の動力用分電盤の端子の銅バーの
 取り付け用絶縁材が焼損した火災と隣棟の建物の業務用機器内部が焼損した火災です。
 この2件の火災は、1件目の火災による「迷走電流」が地面を伝わって起こした火災原因です。
 1件目の火災は、分電盤の端子の取り付け用絶縁材が経年により劣化し、充電端子間相互で
 トラッキングによる漏洩放電が進行し、絶縁材の固定ビスから盤本体に流れ、さらに盤のアースに
 地絡し出火したものです。 この地絡した電流が、近隣建物の業務用機器のアースから入り込み
 サージアブソーバ回路を焼損させたものです。
 この地絡した電流による二次火災を「迷走電流による火災」と呼びます。


  この迷走電流の最も一般的なものとしては「落雷火災」があります
 住宅の直近に落雷があり、その後、建物の台所のガステーブル付近から出火するケースです。
 住宅の立ち木や付近の避雷設備に落雷し、そのサージ電流が地中を流れることによって、
 付近の電場が高くなります。この時の状況は、関係者の話では「小雨になりかけた時にピカッと光って
 ドーンと言う音がした時に、窓ごしに外を見ると、庭の地面がボーットと青白く光っていました。」
 と言っている。いわゆる“プラズマ放電”の状態です。
 この、地面に流れたサージ電流よる被害は、多くは建物の電話器のアースに入って、避雷器を破損させ、
 電話器の不通などの被害を発生させた程度で済みます。しかし、たまに、地中に埋められたガス管を
 この雷のサージ電流が流れ、建物の台所のガス台へと伝わり、ガス台回りのステンレス板を経由して、
 コンセントや換気扇の商用電源に戻る回路を構成します。これらは、ごく瞬時にパット発生するので、
 電気の回路的な妥当性と言うより、ほとんど偶然に近い、発生経路をとります。で、このガス管から
 ステンレス板、又は、コンセントなどで強いスパークが発生し、台所からの建物火災となります。
 この時、流し台の壁面のステンレスに最も良い位置関係にあるのが、壁のコンセントや換気扇の
 スイッチ回路の充電部で、ここに放電して、商用電源へと流れることが事例として多いです。
 (さて、カミナリの資料ですが、古典的な参考書は中谷先生の岩波新書「雷」で、
 川俣修一郎先生「カミナリの科学」や月刊誌「電設工業」「OHM」の特集号などが身近で分かりやすいです。)
  なお、水道管は合成樹脂系になってきてますが、ガス管の低圧導管はP管(ポリエチレン管)は
 少なく、だいたいが鋼管ですので、ガス管経由が迷走電流の流れやすい傾向にあります。
 

 ★
 次に、雷以外の原因に、地絡事故によるものがあります
 これは、電柱の「電話線が数mにわたって燃えるケース」などがあります。
  付近の工場や作業場などで使用している動力用の電源線を誤って、地絡させた場合です。
 地絡による「迷走電流」が電柱などのアース線にはり込み、電柱の固定バントから電話線のメッセンジャー
 に流れて、電話線を焼損させます。以前出会った事例では、作業場で使用していた溶接器のコードが
 損傷していて、床に敷かれた鉄板に接触し地絡したことから、作業場の前の電柱アースを経由して
 メッセンジャーから電柱間の電話線を焼損させた火災がありました。
 なお、この火災は「原因不明」となることが多いです。
 燃えているのが電柱間の電話線であり、どこから、どのようにして、迷走電流が流れたか検討が
 つかないことが多いからです。付近の聞き込みでも、使用している動力機器で地絡事故を発生させた
 と言ってくれる関係者がいないことが多いからです。難しい(面倒な)原因調査です。

 ★ 次に、鉄塔の送電線や電車の架線に、クレーン車などが接触して、地絡事故を起こし、
 迷走電流が流れて、付近の建物などが火災となる事例です。
 自動車解体業のクレーン車のアームが送電線に触れ、この接触事故で、送電線が地絡し、
 クレーン車から付近の廃車を経由して、住宅敷地のフェンスまで流れ、たまたま、その時に
 フェンスとベランダにステンレス製物干し竿があったため、これを経由して、建物内に入り、
 建物内のコンセントや蛍光灯が焼損し、さらに積算電力計を焼損させて、もどった事例が有りました。

 ★ このように事例を紹介すると「迷走電流」て結構ありそうですが、
 現実にはこの種火災にあまりありません。
 だから、経験も少ないため、なんだか分からずに「原因不明」としてしまうケースが多いです。
 「火災」誌の火災事例の中に「迷走電流」という言葉を使用していないことから見て、
 この種「迷走電流による火災」は、その用語そのものも「消滅」としていくのかも知れません。