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火災現場と火災調査

                                   H2−04     07.09/30

 1.現場保存−消防法に定める対応              

 消防法第35条第2項 「消防長又は消防署長は、放火又は失火の犯罪があると認めるときは、
 直ちにこれを所轄警察署に通報するとともに必要な証拠を集めてその保全につとめ、・・・・・・・」
 とあり、「現場保存」が法的に要請されている。
  一般的に「火災」は、社会的事件であり、現場の状況の如何に関わりなく、「現場保存」が求め
 られる。もちろん、人命救助・延焼防止・避難誘導などの消防活動本来業務が優先すべきことは、
 当然ですが、「火災現場」の現場保存は、常に心がけるべき必須事項なっている。
 このため、残火処理などの活動では、上司の中隊長・大隊長などの指示に従い活動し、無用な
 破壊や現場物件の移動は行なわないことになっている。
  火災調査上も「火災現場の保存」が徹底されなければならない。
  
 ここで、「現場保存」を捜査機関の側から見ると、『初期捜査の実際』(綱川著 元警察大学校講師)
 と言う本では。
  1,初期捜査とは何か 2,現場鑑識  3,現場保存 4,現場周辺の捜査 と、
  4つの章の1つに位置づけられる重要事項となっており、
  現場保存の内容は2つの節に分かれ、@現場保存とは何か A現場保存の要領 となっている。
  現場保存とは「現場保存とは、犯罪現場を犯罪の発生または発見当時そのままの状態で、何物
  も加えず、何物も減らさず一定期間保存することである。」 「犯罪の現場には、犯罪と犯人を証明
  し、又は推定する資料があるが、これを変更すれば事実の認定を誤り、資料を滅失すれば捜査の
  手がかりが失われ、余分な物が加われば、むだな捜査をしたりときには無実の者に容疑のかかる
  場合もある。」と述べられている。 警察の捜査活動において、「現場」こそが、もっとも犯人に直接
 つながる資料でもあり、捜査関係者といえども、身分を明確にし、現場保存の重要性を認識してい
 いる者だけが、立入を許されるものとしている。
  
 これら火災の持つ事件性の視点からも、消防法上においても第7章火災調査の中で、規定している。
  「火災出場時の火災調査」活動
   火災の覚知と同時に実施される火災調査活動の中では、現場写真撮影、人的物的被害状況
   の把握、関係者からの現場での供述録取、現場図面作成、消防用設備等の作動状況の確認、
   などと合わせて、「現場保存」からの要請として「立入禁止」の標札を設けて、無用な現場破壊
   がなされないようにすることも重要な任務となっている。
    また、鎮火後は、「火災調査」の腕章を巻いた職員意外は、「無用な立入」として制限すること
   も必要なこととなっている。特に、火災現場に「ある装置や物など」を不用意に触れてはいけな
   いことは当然なことである。

    

  2. 現場保存と視察
  現場保存に対するものとして「現場視察」と言う
 事象が発生する。
 平成2年尼崎市長崎屋デパート火災での消防関係
 の「視察」を報じた新聞記事である。別の雑誌には、
 3月18日から4月7日までに87消防本部330人も
 の視察があり、現地本部ではその対応に追われ、
 火災調査活動に支障をきたしたと報じている。
  さらに、この時に視察した関係者がTV,新聞等に
 さまざまなコメントを出し、あたかも、現地消防の見
 解のように扱われた。その中には隣接市消防局
 某氏のように内部で勝手に撮影した「写真」を報道
 提供した故意的なケースもあった。
  右新聞記事にもあるが、平成元年の東京の
 「高層マンション火災」では、約10団体30人程度
 であった。
 ★ この現場視察では、古くは、東京消防でも
 「ホテルニュージャパンの火災」時の現場内部写真
 の公表問題なども発生している。

  火災は「社会的事件」である、と言われるように、死傷者が多いなどの要因によって、マスコミ等の注目
 の対象となり、合わせて消防関係者等の「視察」が顕在化する。
 このことから、1977年(昭和52年)全国消防長会で「大規模・特異災害時における視察のあり方について」
 として、@災害内容を「災害概要資料」として作成し、全国消防長会等を通じて情報提供する(現地視察を
 控える)。A災害現場を視察しょうとする特別の事情がある時は、県支部長と連絡を取り合って行なう。
 とされており、これらは1990年(平成3年8月)に再度確認された。
  このように、消防機関では、火災調査活動における「現場保存の重要性を踏まえ」たルールが制定され
 ている。ルールに従って、火災現場を案内し、捜査機関との調整の上で支障のない範囲の見学或いは
 資料提供、説明等は行なうこととなっている。これらは、広く「類似火災の予防」と言う面で必要であり、
 また、当該火災に対し、各消防機関の予防的執行を促すうえからも大切なことです。
  なお、外周部から、一般人が普通に分かる範囲は、「禁止」されるべきものではないので、むやみに見学
 等を「火災調査の現場保存」の視点から抑制すべきことではないとされています。 

 3. 現場活動と調査内容の公表

 (1)火災現場で、火災原因を公表したところ、「原告から火災原因は事実と異なり、虚偽事実の公表により
 著しく名誉を毀損された。」として、火災原因の公表による不法行為責任に対する損害賠償請求がなされ
 た事件があります(広島地裁呉支部、昭56.03.26判決)。(詳細は、消防大学校「新消防関係判例解説」を
 見て下さい。各本部の消大卒業生が持っていますから、見せてもらって下さい。他に、森本宏著「消防行
 政責任論」などの書籍参照)
   本火災は、火災の翌日に 「〇〇さんの電気コンロの過熱らしい・・」と発表したものです。
  裁判では、火災調査の内容から、推定した結論が、合理的な根拠に基づいたものであり、また「推定」と
 明示していることから、@将来の類似火災の発生予防 A公共の利益をはかるためになした正当な職務
 行為の範囲に属する、として、訴えは退けられた。
  このことから、火災調査の結果を公表する場合は@とAを勘案して、個人のプライバシーに配慮して
 行なうこととなっている。
(2) 現在は、現場での「火災原因の公表」はほとんどありません。
 火災原因が、火災調査上も現場見分・質問録取などに相当の日数を要するため、その上にたって
 合理的な原因の判定をすることから、現場での公表はほとんどない。
 まれに「放火」「失火」「雷等の自然災害」などで表現される程度の原因発表はある場合もある。 
(3) 現場活動としての「報道対応」
  国民の知る権利を確保する上で、火災現場で「報道対応」することは必要なことです。
  この場合の内容は、「火災原因調査結果の公表」ではなく、「火災現場での広報」となる。
  広報と言っても、その報道する内容は「火災調査」により得られた資料であることには変わりがあり
  ませんが、報道公表の内容は消火活動上において知り得た事実に基づくものを中心としてなされる。
   火災現場での発表
  ・
火災の覚知時間  ・場所、住所  ・被害状況(名称、構造、用途、建・延面積、焼損場所、焼損面積
   建物の特筆事項など) ・責任者(職、氏名、年齢) ・死傷者・要救助者の状況(職、氏名、年齢)
  ・消防活動の状況(活動部隊数、救助活動などの活動状況、今後の展望など) ・出火に至ったと
   推定される状況(出火原因は調査中となることが多い) などです。
  実際は、喧騒の中での対応であることから、現場での臨機の対応が求められることになる。
  2005年4月1日施行の「個人情報保護法」により、個人情報は慎重に扱う事となっている。また、
  同年12月27日「犯罪被害者等基本計画」の策定により、同じく、被害者のプライバシーの保護が求めら
  れる。(「個人情報の保護に関する法律」(平成15年5月30日法律第57号)
  しかし、火災現場では、被害者も含めて被害状況を公表することは、家族による早い救済等が可能
  となり、公共性にかなっているものと言える。 

  4. 調査結果の公表と開示

  「個人情報保護法」「東京都・個人情報保護条例」により、個人のプライバシーが保護されている。
 このことから、出火した建物の居住者に関する「火災調査内容」は、厳格に保護されるべきものとなって
 いる。特に、現在ではプライバシー型よりも「個人識別型」に近い解釈がなされる傾向にあることから
 特定の個人が識別される「情報」の開示は難しいと言える。
 反面、2003年12月31日公布「行政機関情報公開法」 2003年3月14日「東京都・情報公開条例」、そして
 何より1995年の「製造物責任法」により、火災調査により、知り得た「公共危険」に関する情報は、公開
 することが求められている。
   「火災調査調査書類」の開示
  被災者には、自己の自宅から出火した場合、その調査結果を消防の火災調査員から原因等を含め
  説明を受ける。しかし、それらの内容をさらに具体的に知りたい、又は、製造物等に起因した火災として
  損害賠償請求したい場合は、「火災調査書類」の開示請求となる。この場合は、「個人情報保護条例」
  に基づく開示手続きとなる。
  自己建物でなく、同じ町会内で「火災」があったので、その火災原因を知りたいので「火災調査書類」の
  開示を求めるなどのことも発生する。
この場合は、自分自身の情報ではないことから「情報公開条例」
  に基づく開示請求となる。しかし、この場合は、火災となった特定の個人の情報であることから、個人
  情報とされ、一部を除き非開示となるのが一般的傾向である。
  (横浜地裁判決平成10年10月、高裁平成11年11月17日)。
  「危害情報」の公開
  火災原因調査において、前3.広島地裁判決のように、推定した結論が合理的な根拠があると認めら
 れる場合は、その出火原因が「類似火災発生の恐れ」があれば、できる限り速やかに「公表」される。
 火災発生に関わる、継続性のある・生活に密接した・信憑性の高い出火原因とされる情報は、その情報
 を特定して公表することとなる。
 

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