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「ハヤブサ写真展」
「ハヤブサの魅力を解剖する」
「イソヒヨの舞い」
「冬の人気者、コミミズク」
「ヨシ原の人気者、ハイイロチュウヒ」
「日本のチュウヒが危ない」
「下北半島撮影の旅」
「森の王者、クマタカ」
「渡りをするフクロウの仲間、コミミズク」
「諏訪湖のオオワシ」
「日本で最も繁殖が心配されるタカの仲間」
「五島列島福江島のタカ渡りレポート」
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「ハヤブサの魅力を解剖する」 11'7/21
「冬の人気者、コミミズク」 11'1/10
新しい年が明けて本格的な冬の寒さになりましたね。こんな季節は日本海側が雪でも太平洋側は乾燥した晴天で野鳥撮影には最適です。春や夏のモヤっとした青空ではなく、これが本当の青空だと言わんばかりの気持ちの良い青さです。
振り返れば、去年の4月にも今回の主役である、コミミズクを取り上げましたが、撮影場所は前回とは別で冬のメインフィールドでもある渡良瀬遊水地です。
コミミズクの撮影は場所さえ恵まれればそれほど難しいとは思えません。その代わり、バーダーには絶大なる人気があるので、一旦越冬地が知れ渡ると首都圏の場合、物凄い数のカメラマンが押し寄せます。そんなシーンは想像しないで、冬の夕日を背景に飛び回る可愛いコミミズクをご覧ください。
コミミズクは日中は何処にいるのか分からないくらいひっそりと休んでいて夕方になると狩りのために土手付近を飛び回ります。フクロウの仲間特有のフワフワと羽音もなく飛んでいるようですが、草むらに潜んでいる野ネズミのカサッという音を聞きつけて電光石火ダイブして捕まえます。そのために顔の周りに集音効果のある丸い輪があり、首を伸ばして音を確認します
渡良瀬遊水地のコミミズクは6年前にも集団越冬の記録があり、今回の写真にも一部含まれています。一枚だけ夕日を浴びて飛ぶハイイロチュウヒの写真があるのでじっくりご覧ください。只でさえ魅力的な美しいハイイロチュウヒのオスに夕日が差したシーンは一生忘れることができないものです。
この間のデジタルカメラの進歩は著しいものがあり、今では夕暮れの薄暗い状態でも不安なくシャッターが切れます。土手が夕日で黄金色になった背景を羽音もなくフワフワ飛ぶコミミズクは確かに一度目にすると病み付きになってしまいます。日が沈む時間帯になると気温が一気に下がり防寒具を十分にしていても寒さは容赦しませんが、コミミズクの姿がある限り気になりません。
「ヨシ原の人気者、ハイイロチュウヒ」 10'12/31
前回、久しぶりにHPに投稿した所、直接メールで激励を受け、大いに勇気付けられ有難うございます。気が落ち込んでいる時にどれだけ励みになったか。これからもどうかよろしくお願い致します。
それでは勢いに乗って今年最後の原稿?に漕ぎ着けました。来年もお互い、健康で良い年でありますよう。
前回のテーマは「日本のチュウヒが危ない」というものでした。
実際はどうなのか?毎年、冬になると通う渡良瀬遊水地に行って様子をみました。結果は悲惨で、広大なヨシ原のある遊水地ですが、チュウヒの飛ぶ姿は殆どなく、偶に飛ぶのが確認できました。
チュウヒの飛翔は時間帯、天候やその日の状態で変化するものなので、単にその日に飛ぶ姿がないというだけでチュウヒの総数が減ったとはいえないでしょうが、その点を考慮しても明らかにチュウヒが少なくなったのは事実でしょう。
遊水地には日本産のチュウヒの他に大陸育ちのチュウヒが越冬のため飛来します。地味な色のチュウヒはバーダーにそれほど人気があるとは思えませんが、別種のハイイロチュウヒ、特にオスタイプはご覧のようにこれがチュウヒの仲間かと思うくらい美しいタカです。ハイイロチュウヒは日本での繁殖記録はなく、大陸から越冬のために飛来します。
フィールド・ガイドによれば、ハイイロチュウヒは冬鳥として渡来するが多くなく、特にオスの成鳥は少ない、とあります。普通種のチュウヒは少し大きく、地味な色合いなのに対し、ハイイロチュウヒのオスは翼の上面が灰色で下面は白、翼端に黒い風切羽根が目立つお洒落なタカで、バーダーの人気が絶大なのも分かります。フイルムカメラ全盛のころ、フィルム感度がデジカメほど高くなかったので、日没前後に狩場から塒場所に戻ってくるハイイロチュウヒの写真を撮るのは至難の技でしたが、今はデジカメで感度が上げられるので、日没後で暗くなっても撮影が出来るようになりました。
ハイイロチュウヒのメスタイプ、幼鳥「オスの成鳥は薄茶色から灰色に変わる」は薄茶の地味な色で添付写真から違いが分かります。ハイイロチュウヒの狩りは低い草むらにいる小鳥を追い出して長い足でつかむスタイルが多く、小型のネズミなどは低空で獲物を見つけると長い尾羽とV字の翼を反転させて飛び降ります。チュウヒ特有のV字の翼は方向を急転するため役立ちます。よく見ると、顔の周りにフクロウのような丸い模様があり、これは地上のかすかな音をかぎつける集音効果があるものと考えられています。
夕方になると集団で塒入りをすることが知られ、日中に飛び回るシーンは中々、チャンスがありません。ハイイロチュウヒが塒入りする前に風が強い日は数羽がヨシ原周辺を飛び回り、こんな日は寒さを忘れて美しい光景に見とれてしまいます。添付写真でそんな雰囲気を感じて頂ければ幸いです。
「日本のチュウヒが危ない」 10'12/21
このHPをご覧の皆様、今年も残り少なくなりました。我が家にとって今年は家族の不幸という辛い年でもあり、気持ちの余裕がなくHPの投稿も出来ない状態でしたが、何時までもクヨクヨしていても仕方がないので、家の掃除もそこそこに原稿を書く気になってきました。我が10期の同輩からも励ましの言葉を頂き有難うございました。
さて、冒頭から余計なことを書いてしまいましたが、タイトルの方もショッキングなものになりました。
何が危ないのか?チュウヒはタカの仲間でこのHPにも2009年と2008年に紹介しました。生息環境が広大な湿地帯や、埋め立て地なので、もともと日本には少数が繁殖することで知られていました。
チュウヒの大きさはトビが翼長150cm余りなのに対し、120cmから130cm余りで小さく、色の個体差があり、大陸から越冬のために飛来する灰色チュウヒに比べ地味な体色でバーダーの人気度もいまいちかもしれません。でも、チュウヒが独特のV字の翼をヒラヒラさせながらヨシ原を優雅に飛ぶ様は他のタカには見られないもので、個人的にはとても魅力があります。
1982年発行の野鳥の会のフィールドガイドにチュウヒの習性として少数は北日本で繁殖するが、多くは冬鳥として渡来するとあり、元々、日本での繁殖数は少ないのですが、野鳥の会で国内で繁殖するチュウヒの調査をしたところ、冒頭のタイトルのような事実が分かってきたのです。それによると、国内で繁殖するつがいは僅か60羽ほどで、繁殖地は15箇所程度であり、中には工業用地としての埋め立て地や、河川の改修などの開発場所が含まれていることから、もはや繁殖地が増える要素は少ないものと考えて良いでしょう。
本来が地味な鳥なのでこれから始まる保護活動も一部の人の危惧に終わる可能性もあり目が離せません。同じワシタカの仲間である、イヌワシやクマタカが繁殖する場所は絶滅危惧種として国が開発に制限を加えるのが現状なのに比べ、チュウヒは全く手付かずなので、これからの推移は油断できないでしょう。
それではチュウヒの写真を見てやってください。チュウヒは地上の獲物を探しながらヨシ原をゆっくり飛んでいることが多く、目が下を向いているので顔を上げた写真は貴重です。獲物の種類は結構多く、小鳥類からネズミ、はては魚まで捕っています。素早い動きが出来ないので、不意打ち猟スタイルで獲物を見つけると体を交して急降下します。チュウヒの魅力を語るにはまだまだこれでは足りないでしょうが、どうかチュウヒをよろしく見守ってくださいというお願いで原稿を終えます。
「下北半島、撮影の旅」 10'6/16
下北半島は大勢の旅行者が訪れる北海道の観光地のような知名度はありませんが、それだけに自然の豊かさに触れるのに絶好の所です。
本州最北の地である青森県は津軽海峡を挟んで北海道とは生態系が特有で、例を挙げれば、ニホンザル、日本カモシカ、ツキノワグマ、ホンドギツネ、などがあります。
今回の旅も自宅から撮影機材を積んで遥々850キロ離れた下北までドライブしてきました。高速代を節約するため、深夜に起床して途中サービスエリアで仮眠をしながら12時間以上かかります。首都圏では何処に行っても重い撮影機材を担いだカメラマンに出会いますが、6日間に出会ったカメラマンはゼロ。それどころか、本物のクマに出会いました。
6月上旬の北国はまだ新緑の季節。山奥は山菜取りのクルマが林道脇に並んでいます。脇野沢にある鯛島と呼ばれる無人島は(下図参照)成るほどよく見ると魚の形をしています。かって、地元の探鳥会のメンバーと一緒に漁船で渡ったことがありますが、オオセグロカモメが島の至る所で繁殖していて、尾びれに当たる岩にはアマツバメが繁殖したことがあったそうです。
それでは、魅力ある下北半島の野鳥を紹介しましょう。
クマタカは天然林のある森に住む大型のタカで翼長はトビとそれほど変わらない長さですが、翼幅があり、翼面積としてはタカというよりワシといっても良いくらい大きなタカです。日本では北海道から本州、四国、九州まで広く分布して、一年を通して生息場所を移動しない所謂、留鳥です。
かって、生活の糧としてクマタカを飼育し、ノウサギ、タヌキなどを獲っていたタカ匠は明治時代まで日本に存在したが、鉄砲の普及で姿を消しました。
タカ狩りのために一年を通してタカの面倒を見る必要があり、狩りは冬の間に限定されたから、タカ匠の苦労は大変だったでしょう。
クマタカは日本のような森林の多い国では意外に数多く生息しているようですが、狩りのスタイルが殆どが待ち伏せ型のために飛行シーンを見ることは滅多にありません。このHPにある写真のような飛行シーンを見るためにはかなり根気よく、待機しなければなりません。それだけに、山の上で待機して突然!眼下にクマタカの姿を見つけた時の感動は格別なものがあります。クマタカより大型のイヌワシが開けた狩場を必要としているのに対し、クマタカは森の中を通り抜けることができ、小回りが出来るように翼が短めになっています。翼端の風切羽根の枚数が7枚もあるのはいかに大きな翼であるか意味しています。クマタカのような大型の鳥は羽ばたきを殆どしないで、気流の変化を翼で捉えて悠々と飛行します。正に、森の王者の風格があり、クマタカが飛ぶと森はシーンとなります。恐らく、森で生きている生き物は息を殺してじっとしていることでしょう。
「渡りをするフクロウの仲間、コミミズク」 10'4/2
コミミズクは英名をShort Eared Owl といい、文字どうり頭の上に小さな羽角と呼ばれる耳のような突起があり、興奮した時などに飛び出すので普段は隠されていて丸い顔をしています。
繁殖は緯度の高い北半球の極地で、日本には冬鳥として渡ってきます。背の低い河川敷の草むらなどで集団で越冬していることが多く、首都圏では越冬場所が分かると瞬く間にうわさが広まり、信じられないくらい大勢のカメラマンが押し寄せます。それだけバーダーの人気が高い訳です。個体によっては人が接近しても昼間は眠そうな顔で飛び出さないのも人気の元でしょう。
日中は草むらに身を隠し、うとうと仮眠状態ですが、猫や犬が接近すると瞬間に緊張状態になり最後は飛び出します。一般にフクロウの仲間は夜行性で、日没後、暗くなるとネズミや小鳥、昆虫などを丸呑みしますが、コミミズクは日中の明るい時間帯から飛び回ることがあり、フワフワ音もなく羽ばたき、ネズミを探しています。大きな丸い顔はネズミのカサカサという音を集音する意味合いがあるとされ、渡りの際には大きな顔が前面抵抗となり飛行には負担になるでしょうが、比較的長い翼は長距離飛行をする時には誘導抵抗を少なくする効果があるので、自然はあくまで巧くできています。音を聞くための耳は羽角ではなく、両目の付け根に耳があります。
コミミズクの顔つきは如何にも強そうですが、実際のところ脚の力はタカのように強くないし、カラスの鳴き声や、トビが上空を飛んだだけで極端に警戒します。実際にオオタカやノスリというタカの仲間に攻撃を受け、命を落とす例があるという話しをよく聞きます。カラスは猛禽類を見つけると仲間を呼んで追い回す習性があり、コミミズクはカラスに追われると、逃げる手段として階段状に旋回しながら上空高く逃げます。こんな場合、カラスは途中で諦めてしまいます。集団で越冬するのも危険から身を守る知恵なのでしょう。
このHPをご覧の皆さんで一番価値がある写真はどれだと思われますか?生態上、一番価値がある即ち、撮影しようと思ってもチャンスがない写真は上空高く飛んでいるコミミズクです。これは渡り途中のコミミズクを撮ったものです。それではコミミズクの愛らしい姿をじっくりご覧ください。
「諏訪湖のオオワシ」 10'2/11
オオワシは日本で見ることの出来るワシ・タカの仲間では最大でオジロワシやイヌワシより大きいので名前の由来にもなっています。
これらのワシの尾羽は真っ直ぐで長いので昔は矢羽に重宝されたということですが、今では国の天然記念物として保護されています。
オオワシは日本では繁殖していなく、ロシアからの冬の渡り鳥で、世界中ではロシアの極東と冬の北海道を中心とした一部でしか見ることができません。
チュウヒは広大なヨシ原を好んで生息するので、日本全国では工業用の広大な埋立地などでも建設工事が始まる前では少数が見ることが出来ます。一般的に猛禽類は繁殖数が少ないので国が絶滅危惧種として保護鳥に指定しています。このチュウヒはその意味でイヌワシよりも絶滅の可能性が高い種とされていて、繁殖に必要なヨシ原が常に開発のために失われる事があって数の減少が心配されています。渡良瀬遊水地で見られるチュウヒの数は数十年前に比べると明らかに減少しているのが実感できます。
チュウヒは夕方暗くなると集団で地上の安全な場所で塒を取る習性があり、かっては暗くなるとシルエットになって飛んでいるトビ大の鳥は全部チュウヒだったこともあります。冬に日本で見られるチュウヒの仲間は国内産だけでなく大陸育ちの個体が多く含まれていて、写真のように白っぽい綺麗なチュウヒは大陸型のオスタイプとされています。チュウヒは個体差が多く、識別は繁殖地で通念観察している人以外は非常に難しい種です。一見地味なタカですが、浅いV字型の長い翼を独特の羽ばたきでヨシ原すれすれをヒラヒラ飛ぶチュウヒは魅力があります。
「五島列島福江島のタカ渡りレポート」 09'10/1
毎年、9月になるとソワソワして落ち着かなくなります。人呼んで「タカ渡り病」。それもかなり重症です。
タカの仲間でサシバやハチクマは夏鳥として春に日本にやってきて繁殖活動を終えると、この時期に越冬地である東南アジアに渡ってゆきます。
これらの種は獲物がカエルやハチ、昆虫、トカゲ、爬虫類などで秋以降は獲物が捕れなくなるから渡りをすると考えられています。
近年、超小型で軽量の発信機が開発されて、タカに背負わせ、人工衛星による追跡調査ができるようになり、渡りのルートが世界でも初めて解明され、野鳥マニアの興味が加速された感があります。
タカ渡りの名所は青森県の竜飛崎、長野県の白樺峠、愛知県の伊良湖岬などが有名で、今までにも感動的な渡りを見てきましたが、今回、初めて福江島を訪れ、天候にも恵まれたお陰で今までに見たことがないスケールが大きなハチクマの渡りを見ることが出来ました。
ハチクマは日本だけでなくシベリア、朝鮮半島でも繁殖していて、福江島に飛来するハチクマは大陸育ちのものが含まれているはずなので、ここでの渡りは去年の観測データによれば総数20000羽を超えています。
森林性のハチクマは都市部では余り馴染みがないので見たことがある方は少数ではないでしょうか?♂、♀、幼鳥に特徴があってこのHPでも紹介したことがあります。
現地で継続観測している方の話では、福江島から飛び立ったハチクマは東シナ海をひたすら西を目指し、600キロちょっと離れた中国の上海近辺まで無着陸で飛んでゆくそうです。途中に休憩する島はありません。成鳥で3日間、幼鳥は5日かかったのが追跡調査で分かったそうです。驚くべきデータですね。600キロを3日かかるというのは時間がかかりすぎと思われるでしょうが、羽ばたき運動だけで飛ぶわけではなく、海上に発生した僅かな上昇気流を求めて旋回しながら高度を取り、滑翔を交えて移動するので対地速度にすれば遅くなってしまうのでしょう。
夜間飛行では月明かりを見ながら磁気コンパスに相当する機能で方向維持するのでしょうね。まさにヒトにはない超能力の世界です。雨の日などは上昇気流を利用できないので、天気の良い日を選んで飛んでいるはずです。途中、条件が悪くなると海上から引き返すことがあり、夜明けに飛び立った群れが午後に戻ってくることもあります。
福江島へのアクセスは自分のクルマで陸路、長崎まで行き、カーフェリーで島まで渡る他に、空路福岡、長崎空港から乗り継いで福江島まで飛ぶ手段があります。重い撮影機材を持って旅行するのはクルマの方が楽ですが、長崎までのドライブは大変だし、空の旅はもっと体力が要りますね。それでも壮大なハチクマの渡りを一度でも眼にすると貴重な経験になるので止められないでしょうね。「タカ渡り病」は益々重症になる傾向にあります。この病を治すことが出来る医者はノーベル賞ものではないでしょうか?