境孝彦・野鳥のページU巻

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                  「ハヤブサ写真展」
                  「ハヤブサの魅力を解剖する」
                  「イソヒヨの舞い」
                     「冬の人気者、コミミズク」
                  
「ヨシ原の人気者、ハイイロチュウヒ」
                  
「日本のチュウヒが危ない」
                  
「下北半島撮影の旅」
                  「森の王者、クマタカ」
                  
「渡りをするフクロウの仲間、コミミズク」
                   
「諏訪湖のオオワシ」
                   「日本で最も繁殖が心配されるタカの仲間」
                  「五島列島福江島のタカ渡りレポート」


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「ハヤブサ写真展」               12'5/31

Gがかかり翼がしなる オスの成鳥 お気に入りの崖から飛び出す ギャラリー内
 
自宅から遠くない所に区役所、警察署、公会堂があり、公会堂地下の喫茶室にあるミニ・ギャラリーでこの春に次男が山野草のイラスト展を開きました。
 
其のつながりで、今迄に撮りだめたハヤブサの写真展をすることになったのが、3月末のことです。
海面スレスレを飛ぶ 休憩中のハヤブサに朝日が当たる 水浴び直後の飛び出し
 
ハヤブサの写真は数台のハードディスクに保存しているのですが、総数でいえば数十万枚にはなるので、始めは一枚一枚選別をしていたのが根気が続かず、最後は滅多に撮影のチャンスがない写真を選んでなんとか30枚の写真を自宅のプリンターでA3サイズにプリントしました。このプリントに要するインクの量は半端ではなく、インクの補充のために何度も店に通うことになりました。写真を納める額も30枚ともなると相当な重さで、写真展が始まる5月14日の前日にクルマで会場に運び、野鳥仲間数人が飾り付けを手伝ってくれたお蔭で初日を迎えました。
写真展会場_ 巣立ったばかりの幼鳥 巣立った幼鳥3羽が揃った
 
写真展のためのチラシや郵便物によりお知らせなどはしなかったので、我が中学の仲間には失礼しましたが、遠方からわざわざ来られるのは大変だという思いがありました。公会堂は一階にコンサートホールやスポーツセンターがあり、区民のために安い料金で利用できるようになっています。写真展は2週間あったので、中学、高校、大学、会社の仲間や、野鳥仲間、一般のフラット立ち寄られた方など様々でした。感想として皆さんにハヤブサの魅力が伝わったようで苦労して写真展を開いた甲斐がありました。このHPで会場の雰囲気を感じてもらえば幸せです。
大きな魚を捕ったミサゴ 猛禽類とは思えない愛らしい姿 来客用のメモ
 
最後にこの原稿をHPに載せるにあたり、多忙の編集長の熱意には頭が下がります。


「ハヤブサの魅力を解剖する」          11'7/21

 
猛禽類の中でもハヤブサは広い空間を飛んでいる獲物を空中でつかみ取る習性があり、そのために速く飛ぶための機能が発達しています。
翼の先端が尖っているのがまず目につきます。水平飛行で獲物に追いつく場合などは翼が完全に畳まれることはありませんが、海上を飛ぶヒヨドリの群れやレースバトを襲うときは高い高度から急降下してスピードにものをいわせた狩りをします。高度を取るために上昇しているときはどうしてもスピードが落ちます。場合によっては獲物の飛ぶ方向とは別方向に上昇するので狩りはしないか?と思っていると、ハヤブサはちゃんと獲物と会合するためのコースを考えているのです。
Gが掛かるとしなる翼 スピード感あふれる形 チョウゲンボウの鼻先にある空気口 ハヤブサにある空気穴の中骨

体重の重いハヤブサは上昇気流が利用できない日は崖や高い木に停まって、獲物が飛んで来るのを見張っています。その視力は驚異的で数キロ離れた獲物を見つけると激しく羽ばたいてダッシュします。ハヤブサの慌てた飛び出しで獲物を見つけたのは分かりますが、双眼鏡でいくら探しても見つからない距離でもはっきり認識しているのです。狩りの対象は空中で運べるサイズの獲物ですから、ハヤブサより大型の重い鳥は無視します。レースバトは野生のドバトとは違い、飛び方に特徴があるので犠牲になることが多く、ヒヨドリなどの群れは群れから外れた一羽に狙いをつけて追いかけます。
ハヤブサの背面は灰色 ハヤブサ独特のスピード感あふれる飛行 羽ばたきの角度によって翼が短く見える 獲物に襲いかかる表情

狩りの成功率はハヤブサ個体の能力により差があるようで、何度急降下を繰り返しても失敗してへとへとになって戻ってくることもあります。日によっては朝からずっと狩りが出来ず、午後になってやっと獲物を持ってくることもあります。自然界で生きてゆく為に、一日の殆どを獲物探しに費やしています。
急降下の最終段階 垂直降下の姿勢 着地前の表情

ハヤブサの特徴として尖った翼の他に、嘴の付け根にある空気穴があります。よく見ると、空気穴の中に小さな骨が見えますが、これは急降下をしているときでもこの骨がバッファーになって呼吸が出来る機能があるのです。同じハヤブサの仲間のチョウゲンボウはハヤブサのような高速で急降下をすることがないので、小さな空気穴に骨はありません。

鷹匠が飼育しているハヤブサと小型軽飛行機に同乗して餌をを持ってパラシュートを背負って飛び降り、その後にハヤブサが餌を貰うために鷹匠目がけて急降下する際にスピードを計測したら時速300キロ以上出ていたという事が分っています。ハヤブサの急降下は常にこのようなスピードが出ている訳ではなく、羽ばたきで加速した後は自由落下によって出るスピードですから、ケースバイケースと考えた方がいいでしょう。ハヤブサの目の下にある通常「ハヤブサひげ」と呼ばれている黒い模様は野球の選手が目の下を黒く塗って光の反射を防ぐのと同じ効果があるとされています。顔の面積に比べて目が大きいのも特徴です。数百キロのスピードで獲物に接近したら即、近距離の視力に切り替えないと具合が悪いでしょうから、老眼になったら狩りは無理でしょうね。このため、狩りをするときの燃えるような鋭い目つき、食事が終わって優しい顔になるなど表情豊かなのも魅力の一つです。特徴はまだあります。それは体の大きさに不釣り合いな頑丈で大きな足です。爪はナイフのような切れ味で、ハヤブサの強力な武器になっています。口ばしにはギザギザがあり獲物を調理する時のナイフの役目をしています。ハヤブサの話になるとどうにも止まらないですね。編集長からもっと短くと言われそうなので、怒られない内にこの位で失礼します。



「イソヒヨの舞い」     11'5/30
 
皆様、一週間のご無沙汰です。今年は何時もより早く、梅雨入りしてしまいました。雨が降って天気が悪い日はいくらアウトドアが好きでも出かける気がしません。そこで今回の原稿が登場ということになりました。
 
野鳥の観察、撮影を始めてライフワークとして猛禽類の飛翔をテーマにしてきましたが、今回は珍しく、可愛い小鳥です。その名はイソヒヨドリ、野鳥仲間の間では略して「イソヒヨ」で通っています。
 
小鳥の仲間は概してオスの方が色美しく、鮮やかで目を引きます。このイソヒヨもその例で添付写真にメスの姿が少ないのはメスの方が地味で、見つけ難いのと、同時に姿を見せてもどうしてもオスの方が目立つのでついレンズを向けてしまうからです。イソヒヨドリは大きさがツグミ、ヒヨドリ大でご覧のようにオスは色鮮やかなので、以前にオスのイソヒヨを見て、野鳥に関しては知識がなさそうな人が「カワセミだ!」と叫んで内心苦笑したことがあります。名前のように海岸沿いで生息していることが多く、磯の岩場で春に子育てをしますが、内陸でも見られることがあり、事実、この鳥の分布はヨーロッパ南部から中央アジア、中国、日本までとなっていて、海岸でのみ見られるとは限らないようです。
♂に比べると地味な♀ カメラに向かってハイ、チーズ! メスのいる前で翼を震わせてポーズ 枯草でお遊び?
 
春の繁殖時期になるとオスはメスのいる方向を向いて、美しい声で鳴きます。内陸でこの鳴き声を耳にすると、熱心なバーダーには特に人気のある「オオルリ」と間違っても不思議ではないくらいです。イソヒヨはツグミ大の小鳥ですから、飛翔シーンをレンズに収めるのは至難の技です。イソヒヨが飛ぶと、瞬間的に望遠レンズを向けてシャッターを切る必要があるので、ボツになるカットが殆どなのです。機材を三脚に据えつけているとまず間に合わないので、5キロ以上はある撮影機材を予め膝に置いて、手持ちで撮影します。シャッター速度が速いのでぶれることはありません。写真で見ると肉眼では見られない美しい翼が分かりますね。
光が当るとこんなに綺麗
高い崖の上から舞い降りるイソヒヨドリ♂ 飛行準備よし! 翼を畳んで急降下
イソヒヨドリ♂同士の争い イソヒヨドリのディスプレ まるでタカのよう 着地前のスタイル



「冬の人気者、コミミズク」          11'1/10

新しい年が明けて本格的な冬の寒さになりましたね。こんな季節は日本海側が雪でも太平洋側は乾燥した晴天で野鳥撮影には最適です。春や夏のモヤっとした青空ではなく、これが本当の青空だと言わんばかりの気持ちの良い青さです。

振り返れば、去年の4月にも今回の主役である、コミミズクを取り上げましたが、撮影場所は前回とは別で冬のメインフィールドでもある渡良瀬遊水地です。

コミミズクの撮影は場所さえ恵まれればそれほど難しいとは思えません。その代わり、バーダーには絶大なる人気があるので、一旦越冬地が知れ渡ると首都圏の場合、物凄い数のカメラマンが押し寄せます。そんなシーンは想像しないで、冬の夕日を背景に飛び回る可愛いコミミズクをご覧ください。

この顔では抵抗が大きそう コミミズクの翼は意外に長い 獲物の音がすると首が伸びる 固体によって顔つきが異なる

コミミズクは日中は何処にいるのか分からないくらいひっそりと休んでいて夕方になると狩りのために土手付近を飛び回ります。フクロウの仲間特有のフワフワと羽音もなく飛んでいるようですが、草むらに潜んでいる野ネズミのカサッという音を聞きつけて電光石火ダイブして捕まえます。そのために顔の周りに集音効果のある丸い輪があり、首を伸ばして音を確認します

草むらに下りたコミミズクに夕日が当たる 草むらに潜むネズミを探して飛ぶ 捕ったネズミを奪いとろうとバトル 名前の由来でもある小耳が見える

渡良瀬遊水地のコミミズクは6年前にも集団越冬の記録があり、今回の写真にも一部含まれています。一枚だけ夕日を浴びて飛ぶハイイロチュウヒの写真があるのでじっくりご覧ください。只でさえ魅力的な美しいハイイロチュウヒのオスに夕日が差したシーンは一生忘れることができないものです。

野鳥とは思えない顔つき 夕日を浴びて輝くような美しさのハイイロチュウヒ

この間のデジタルカメラの進歩は著しいものがあり、今では夕暮れの薄暗い状態でも不安なくシャッターが切れます。土手が夕日で黄金色になった背景を羽音もなくフワフワ飛ぶコミミズクは確かに一度目にすると病み付きになってしまいます。日が沈む時間帯になると気温が一気に下がり防寒具を十分にしていても寒さは容赦しませんが、コミミズクの姿がある限り気になりません。



「ヨシ原の人気者、ハイイロチュウヒ」          10'12/31

前回、久しぶりにHPに投稿した所、直接メールで激励を受け、大いに勇気付けられ有難うございます。気が落ち込んでいる時にどれだけ励みになったか。これからもどうかよろしくお願い致します。

それでは勢いに乗って今年最後の原稿?に漕ぎ着けました。来年もお互い、健康で良い年でありますよう。

前回のテーマは「日本のチュウヒが危ない」というものでした。

実際はどうなのか?毎年、冬になると通う渡良瀬遊水地に行って様子をみました。結果は悲惨で、広大なヨシ原のある遊水地ですが、チュウヒの飛ぶ姿は殆どなく、偶に飛ぶのが確認できました。

チュウヒの飛翔は時間帯、天候やその日の状態で変化するものなので、単にその日に飛ぶ姿がないというだけでチュウヒの総数が減ったとはいえないでしょうが、その点を考慮しても明らかにチュウヒが少なくなったのは事実でしょう。

こんなシーンは滅多にない チュウヒが飛ぶ環境 チュウヒの正面飛行は浅いV字 ハイイロチュウヒ♂と♀の同時飛行

遊水地には日本産のチュウヒの他に大陸育ちのチュウヒが越冬のため飛来します。地味な色のチュウヒはバーダーにそれほど人気があるとは思えませんが、別種のハイイロチュウヒ、特にオスタイプはご覧のようにこれがチュウヒの仲間かと思うくらい美しいタカです。ハイイロチュウヒは日本での繁殖記録はなく、大陸から越冬のために飛来します。

ハイイロチュウヒの♀タイプは別種のような色 ハイイロチュウヒの♂上面は文字どうり灰色 惚れ惚れする美しさ 人気抜群ハイイロチュウヒ♂

フィールド・ガイドによれば、ハイイロチュウヒは冬鳥として渡来するが多くなく、特にオスの成鳥は少ない、とあります。普通種のチュウヒは少し大きく、地味な色合いなのに対し、ハイイロチュウヒのオスは翼の上面が灰色で下面は白、翼端に黒い風切羽根が目立つお洒落なタカで、バーダーの人気が絶大なのも分かります。フイルムカメラ全盛のころ、フィルム感度がデジカメほど高くなかったので、日没前後に狩場から塒場所に戻ってくるハイイロチュウヒの写真を撮るのは至難の技でしたが、今はデジカメで感度が上げられるので、日没後で暗くなっても撮影が出来るようになりました。

夕方に塒周辺を飛ぶハイイロチュウヒ♂ 翼端の黒い斑点が目立つハイイロチュウヒ♂

ハイイロチュウヒのメスタイプ、幼鳥「オスの成鳥は薄茶色から灰色に変わる」は薄茶の地味な色で添付写真から違いが分かります。ハイイロチュウヒの狩りは低い草むらにいる小鳥を追い出して長い足でつかむスタイルが多く、小型のネズミなどは低空で獲物を見つけると長い尾羽とV字の翼を反転させて飛び降ります。チュウヒ特有のV字の翼は方向を急転するため役立ちます。よく見ると、顔の周りにフクロウのような丸い模様があり、これは地上のかすかな音をかぎつける集音効果があるものと考えられています。
夕方になると集団で塒入りをすることが知られ、日中に飛び回るシーンは中々、チャンスがありません。ハイイロチュウヒが塒入りする前に風が強い日は数羽がヨシ原周辺を飛び回り、こんな日は寒さを忘れて美しい光景に見とれてしまいます。添付写真でそんな雰囲気を感じて頂ければ幸いです。




「日本のチュウヒが危ない」               10'12/21

このHPをご覧の皆様、今年も残り少なくなりました。我が家にとって今年は家族の不幸という辛い年でもあり、気持ちの余裕がなくHPの投稿も出来ない状態でしたが、何時までもクヨクヨしていても仕方がないので、家の掃除もそこそこに原稿を書く気になってきました。我が10期の同輩からも励ましの言葉を頂き有難うございました。

さて、冒頭から余計なことを書いてしまいましたが、タイトルの方もショッキングなものになりました。

何が危ないのか?チュウヒはタカの仲間でこのHPにも2009年と2008年に紹介しました。生息環境が広大な湿地帯や、埋め立て地なので、もともと日本には少数が繁殖することで知られていました。

チュウヒの大きさはトビが翼長150cm余りなのに対し、120cmから130cm余りで小さく、色の個体差があり、大陸から越冬のために飛来する灰色チュウヒに比べ地味な体色でバーダーの人気度もいまいちかもしれません。でも、チュウヒが独特のV字の翼をヒラヒラさせながらヨシ原を優雅に飛ぶ様は他のタカには見られないもので、個人的にはとても魅力があります。

1982年発行の野鳥の会のフィールドガイドにチュウヒの習性として少数は北日本で繁殖するが、多くは冬鳥として渡来するとあり、元々、日本での繁殖数は少ないのですが、野鳥の会で国内で繁殖するチュウヒの調査をしたところ、冒頭のタイトルのような事実が分かってきたのです。それによると、国内で繁殖するつがいは僅か60羽ほどで、繁殖地は15箇所程度であり、中には工業用地としての埋め立て地や、河川の改修などの開発場所が含まれていることから、もはや繁殖地が増える要素は少ないものと考えて良いでしょう。


本来が地味な鳥なのでこれから始まる保護活動も一部の人の危惧に終わる可能性もあり目が離せません。同じワシタカの仲間である、イヌワシやクマタカが繁殖する場所は絶滅危惧種として国が開発に制限を加えるのが現状なのに比べ、チュウヒは全く手付かずなので、これからの推移は油断できないでしょう。

それではチュウヒの写真を見てやってください。チュウヒは地上の獲物を探しながらヨシ原をゆっくり飛んでいることが多く、目が下を向いているので顔を上げた写真は貴重です。獲物の種類は結構多く、小鳥類からネズミ、はては魚まで捕っています。素早い動きが出来ないので、不意打ち猟スタイルで獲物を見つけると体を交して急降下します。チュウヒの魅力を語るにはまだまだこれでは足りないでしょうが、どうかチュウヒをよろしく見守ってくださいというお願いで原稿を終えます。

チュウヒ チュウヒと目が合った チュウヒの着地 チュウヒの特徴は浅いV字飛行
チュウヒの背中 ヨシ原を低空飛行して獲物を探す 鋭い顔はタカの仲間の証拠 獲物を見つけて急降下する
成鳥は目が黄色で鋭い 足と尾羽が長いのもチュウヒの特徴 獲物を探すため下を向いて飛ぶことが多い 目が光った

                                             
                                                   

「下北半島、撮影の旅」
                10'6/16

下北半島は大勢の旅行者が訪れる北海道の観光地のような知名度はありませんが、それだけに自然の豊かさに触れるのに絶好の所です。
本州最北の地である青森県は津軽海峡を挟んで北海道とは生態系が特有で、例を挙げれば、ニホンザル、日本カモシカ、ツキノワグマ、ホンドギツネ、などがあります。
今回の旅も自宅から撮影機材を積んで遥々850キロ離れた下北までドライブしてきました。高速代を節約するため、深夜に起床して途中サービスエリアで仮眠をしながら12時間以上かかります。首都圏では何処に行っても重い撮影機材を担いだカメラマンに出会いますが、6日間に出会ったカメラマンはゼロ。それどころか、本物のクマに出会いました。
6月上旬の北国はまだ新緑の季節。山奥は山菜取りのクルマが林道脇に並んでいます。脇野沢にある鯛島と呼ばれる無人島は
(下図参照)成るほどよく見ると魚の形をしています。かって、地元の探鳥会のメンバーと一緒に漁船で渡ったことがありますが、オオセグロカモメが島の至る所で繁殖していて、尾びれに当たる岩にはアマツバメが繁殖したことがあったそうです。

それでは、魅力ある下北半島の野鳥を紹介しましょう。

オオセッカが繁殖する仏沼 オオセッカのさえずり飛翔 どちらを向いているのかシノリガモのオス 海岸ではミサゴ
「オオセッカ」
オオセッカは三沢にある小川原湖脇の仏沼が日本一の繁殖地として知られています。
野鳥に普段馴染まない方から見れば、コヨシキリと同じに見えるかもしれません。尾羽が長く、背中の色もコヨシキリより濃いようです。何よりの違いは繁殖期特有のさえずり飛翔と呼ばれるヨシ原から飛び出して波状飛行しながら鳴く声です。ジブジブジブと鳴きながら元の場所に降りるシーンを何とか撮りたいとレンズを向けてもピントが合うタイミングが合わなくて苦労します。何度も試した挙句、オオセッカがヨシに止まっているのを探し、飛び立つ瞬間から連続シャッターを切って何とか成功しました。
オオセッカの総数は少なく、今では繁殖が茨城県でも少数が確認されていますが、貴重な種であるのは間違いありません。

尻屋崎の丘陵にある無数の風力発電風車 草原の賑やか者コヨシキリ 突然上空を飛んだチュウヒ
「コヨシキリ」
コヨシキリは媚班に特徴があり、オオセッカと同じウグイスの仲間です。
繁殖期には決まった止まり場所でギョッ、ギョッ、ギョッと賑やかに鳴きます。
オオセッカの繁殖地が限られているのに対し、コヨシキリは草原に普通に繁殖しています。北海道や青森では低地の草原で繁殖するのに、本州中部では高原の鳥です。

水の綺麗な渓流で繁殖するシノリガモ 潜水して水生動物を食べるシノリガモ 繁殖期特有のジブジブ鳴き、オオセッカ
「シノリガモ」
シノリガモは冬鳥として岩礁の多い海岸に飛来し、別に珍しくありませんが、繁殖時期には特別な場所でしか見ることが出来ません。
フィールドガイドによれば本州北部の山間の渓流で少数が繁殖するとあります。薬研渓流は正にそんな環境で水が透き通った渓流で潜水しながら水生生物を捕っています。
オスのシノリガモは何処を向いているのか目が後ろについているようにも見え、派手な色合いです。
英名でHarlequin Duck と呼ばれているのはまるでサーカスの道化者のようだからでしょう。

「ミサゴ」「チュウヒ」は説明省略です。どちらも美しい、魅力あるタカの仲間ですね。

仏ヶ浦の奇岩 本物のクマに出会った宇曾利湖の原生林 薬研渓流 脇野沢から見た鯛島



                                        10'5/11
 
「森の王者、クマタカ」

この附中10期のホームページで紹介する野鳥シリーズはかなりのボリュームになりました。

ワシ・タカの仲間が主ですが、今回紹介するクマタカは初めてです。一部の写真は古い時代に撮ったフィルムカメラのものがあり、出来は良くありません。
しかし、深山幽谷に生息していたクマタカが森の開発のために生息場所を追われて最早姿を消した写真もあり貴重だといえます。
それでは、そんな思い入れのあるクマタカの説明に移りましょう。

獲物を探して低空飛行 原生林から飛び出した 森の王者の雰囲気 大木に止まって獲物を探す

クマタカは天然林のある森に住む大型のタカで翼長はトビとそれほど変わらない長さですが、翼幅があり、翼面積としてはタカというよりワシといっても良いくらい大きなタカです。日本では北海道から本州、四国、九州まで広く分布して、一年を通して生息場所を移動しない所謂、留鳥です。

かって、生活の糧としてクマタカを飼育し、ノウサギ、タヌキなどを獲っていたタカ匠は明治時代まで日本に存在したが、鉄砲の普及で姿を消しました。
タカ狩りのために一年を通してタカの面倒を見る必要があり、狩りは冬の間に限定されたから、タカ匠の苦労は大変だったでしょう。

目線をクマタカが飛ぶ 翼面積が大きいのが特徴 塒の森からとんだ

クマタカは日本のような森林の多い国では意外に数多く生息しているようですが、狩りのスタイルが殆どが待ち伏せ型のために飛行シーンを見ることは滅多にありません。このHPにある写真のような飛行シーンを見るためにはかなり根気よく、待機しなければなりません。それだけに、山の上で待機して突然!眼下にクマタカの姿を見つけた時の感動は格別なものがあります。クマタカより大型のイヌワシが開けた狩場を必要としているのに対し、クマタカは森の中を通り抜けることができ、小回りが出来るように翼が短めになっています。翼端の風切羽根の枚数が7枚もあるのはいかに大きな翼であるか意味しています。クマタカのような大型の鳥は羽ばたきを殆どしないで、気流の変化を翼で捉えて悠々と飛行します。正に、森の王者の風格があり、クマタカが飛ぶと森はシーンとなります。恐らく、森で生きている生き物は息を殺してじっとしていることでしょう。




「渡りをするフクロウの仲間、コミミズク」         
10'4/2

コミミズクは英名をShort Eared Owl といい、文字どうり頭の上に小さな羽角と呼ばれる耳のような突起があり、興奮した時などに飛び出すので普段は隠されていて丸い顔をしています。

繁殖は緯度の高い北半球の極地で、日本には冬鳥として渡ってきます。背の低い河川敷の草むらなどで集団で越冬していることが多く、首都圏では越冬場所が分かると瞬く間にうわさが広まり、信じられないくらい大勢のカメラマンが押し寄せます。それだけバーダーの人気が高い訳です。個体によっては人が接近しても昼間は眠そうな顔で飛び出さないのも人気の元でしょう。

いざ飛ばん! カラスの鳴き声で警戒する この可愛さが人気の元 まだ目が覚めない様子

日中は草むらに身を隠し、うとうと仮眠状態ですが、猫や犬が接近すると瞬間に緊張状態になり最後は飛び出します。一般にフクロウの仲間は夜行性で、日没後、暗くなるとネズミや小鳥、昆虫などを丸呑みしますが、コミミズクは日中の明るい時間帯から飛び回ることがあり、フワフワ音もなく羽ばたき、ネズミを探しています。大きな丸い顔はネズミのカサカサという音を集音する意味合いがあるとされ、渡りの際には大きな顔が前面抵抗となり飛行には負担になるでしょうが、比較的長い翼は長距離飛行をする時には誘導抵抗を少なくする効果があるので、自然はあくまで巧くできています。音を聞くための耳は羽角ではなく、両目の付け根に耳があります。

上空を飛ぶトビに警戒 堤防下の杭に飛びつく 渡り途中のコミミズク 日中は草むらに身を隠している

コミミズクの顔つきは如何にも強そうですが、実際のところ脚の力はタカのように強くないし、カラスの鳴き声や、トビが上空を飛んだだけで極端に警戒します。実際にオオタカやノスリというタカの仲間に攻撃を受け、命を落とす例があるという話しをよく聞きます。カラスは猛禽類を見つけると仲間を呼んで追い回す習性があり、コミミズクはカラスに追われると、逃げる手段として階段状に旋回しながら上空高く逃げます。こんな場合、カラスは途中で諦めてしまいます。集団で越冬するのも危険から身を守る知恵なのでしょう。

如何にも前面抵抗が大きそうな顔 目を閉じると人のよう 夕方になり狩りをする前に屈伸運動

このHPをご覧の皆さんで一番価値がある写真はどれだと思われますか?生態上、一番価値がある即ち、撮影しようと思ってもチャンスがない写真は上空高く飛んでいるコミミズクです。これは渡り途中のコミミズクを撮ったものです。それではコミミズクの愛らしい姿をじっくりご覧ください




「諏訪湖のオオワシ」
              10'2/11

オオワシは日本で見ることの出来るワシ・タカの仲間では最大でオジロワシやイヌワシより大きいので名前の由来にもなっています。
これらのワシの尾羽は真っ直ぐで長いので昔は矢羽に重宝されたということですが、今では国の天然記念物として保護されています。
オオワシは日本では繁殖していなく、ロシアからの冬の渡り鳥で、世界中ではロシアの極東と冬の北海道を中心とした一部でしか見ることができません。

オオワシの背面 湖で大きな鯉を獲った 湖に張った氷の上にたたずむオオワシ 山際で旋回するオオワシ
オオワシやオジロワシは魚食のワシで海辺や凍らない川で魚を食べています。魚が獲れないと内陸部で死んだ鹿を食べることがあり、ハンターに撃たれた鹿の体内に鉛が残っていると、それを食べたオオワシが鉛中毒で死んでしまう例があり、それがきっかけで鉛の散弾は使用しないようになりました。

本州では日本海側や東北の一部に少数が越冬していて、長野県の諏訪湖のような内陸部で越冬するのは稀です。琵琶湖や中禅寺湖でも見ることが出来るそうです。共通しているのは何処も寒そうな場所ですね。毎年、12月末にやってきて2月一杯、その年によっては3月上旬に北に帰ってゆきます。

諏訪湖のオオワシには特別な背景があり、見る人にとっては単なる野鳥以上の感情がわいてきます。
それは1999年の1月のことでした。湖畔で衰弱して飛べなくなっていたオオワシを地元の野鳥の会の方が見つけ、保護し、50日後に体力が回復した後、自然界に放鳥したのです。このとき、鳥類研究所の専門家が換羽の様子から4歳のメスだと判定しました。以後、毎年、このオオワシは冬になると諏訪湖に飛来し、湖で狩りをするそうです。
今年で11年目の里帰り?ということで、有名な民話「夕鶴」は人間の欲にからんだ悲しい話ですが、このオオワシは名前も「グル」と呼ばれ、今では諏訪の町の人気者になっています。

小雪の中を飛ぶ 青空バックに飛ぶ 雪山を背景 側まで飛んで来ると王者の雰囲気
実際にオオワシが飛んでいるシーンは羽ばたきをほとんどしないで、雄大な飛行は感動ものです。添付写真のようなシーンがいつも見れるとは限りません。一日数回見れればよい方で、天候具合や狩りが成功した後など、一回も姿を見せない日もあります。それでも突然、姿を現したオオワシを見るとすべてを忘れて見入ってしまいます。




「日本で最も繁殖が心配されるタカの仲間」          09'12/10

今年も残りが押し迫ってきました。このHPをご覧の皆様はこの一年を存分に過ごされたでしょうか?
私は体が動く間は存分に野鳥撮影したいと普段思っていますが、遠出するとそろそろ体力を考えた動きにした方が楽かな?と思うようになりました。

さて、今回は群馬、栃木、茨城、埼玉の4県にまたがる日本一広大なヨシ原を有する渡良瀬遊水地で冬を中心に見られるタカの仲間「チュウヒ」です。
チュウヒそのものは「草原のハンター」として以前にこのHPで紹介したことがあります。

渡良瀬遊水地はかって足尾銅山の鉱毒を沈殿させる目的で渡良瀬川の下流に作られた遊水地です。足尾銅山が廃鉱になったので、本来の毒物沈殿の必要はなくなりましたが、広大な土地は常に開発のターゲットになり、自衛隊や米軍の演習地、はては空港用地として狙われたこともあります。
チュウヒと目が合った チュウヒの背面 チュウヒの舞い チュウヒを目線で撮る

チュウヒは広大なヨシ原を好んで生息するので、日本全国では工業用の広大な埋立地などでも建設工事が始まる前では少数が見ることが出来ます。一般的に猛禽類は繁殖数が少ないので国が絶滅危惧種として保護鳥に指定しています。このチュウヒはその意味でイヌワシよりも絶滅の可能性が高い種とされていて、繁殖に必要なヨシ原が常に開発のために失われる事があって数の減少が心配されています。渡良瀬遊水地で見られるチュウヒの数は数十年前に比べると明らかに減少しているのが実感できます。

ハイイロチュウヒの塒入り ハイイロチュウヒメスタイプがすぐ側を通過 ミコアイサのオス,メス ヨシ原上空を悠々ソアリングするチュウヒ 獲物を見つけるとヨシに飛び込む

チュウヒは夕方暗くなると集団で地上の安全な場所で塒を取る習性があり、かっては暗くなるとシルエットになって飛んでいるトビ大の鳥は全部チュウヒだったこともあります。冬に日本で見られるチュウヒの仲間は国内産だけでなく大陸育ちの個体が多く含まれていて、写真のように白っぽい綺麗なチュウヒは大陸型のオスタイプとされています。チュウヒは個体差が多く、識別は繁殖地で通念観察している人以外は非常に難しい種です。一見地味なタカですが、浅いV字型の長い翼を独特の羽ばたきでヨシ原すれすれをヒラヒラ飛ぶチュウヒは魅力があります。

上空にはノスリ 低空飛行で獲物を探すチュウヒ 日没後に戻ってきたハイイロチュウヒオス チュウヒが塒入りするヨシ原 渡良瀬遊水地




                                                              
「五島列島福江島のタカ渡りレポート」
              09'10/1

毎年、9月になるとソワソワして落ち着かなくなります。人呼んで「タカ渡り病」。それもかなり重症です。

タカの仲間でサシバやハチクマは夏鳥として春に日本にやってきて繁殖活動を終えると、この時期に越冬地である東南アジアに渡ってゆきます。
これらの種は獲物がカエルやハチ、昆虫、トカゲ、爬虫類などで秋以降は獲物が捕れなくなるから渡りをすると考えられています。

近年、超小型で軽量の発信機が開発されて、タカに背負わせ、人工衛星による追跡調査ができるようになり、渡りのルートが世界でも初めて解明され、野鳥マニアの興味が加速された感があります。
タカ渡りの名所は青森県の竜飛崎、長野県の白樺峠、愛知県の伊良湖岬などが有名で、今までにも感動的な渡りを見てきましたが、今回、初めて福江島を訪れ、天候にも恵まれたお陰で今までに見たことがないスケールが大きなハチクマの渡りを見ることが出来ました。

これは♀ ハチクマ♀ ハチクマだけの大群は福江島でしか見られない 海上で上昇気流を探す♂ 眼の前を横切ったハチクマ♀

ハチクマは日本だけでなくシベリア、朝鮮半島でも繁殖していて、福江島に飛来するハチクマは大陸育ちのものが含まれているはずなので、ここでの渡りは去年の観測データによれば総数20000羽を超えています。

森林性のハチクマは都市部では余り馴染みがないので見たことがある方は少数ではないでしょうか?♂、♀、幼鳥に特徴があってこのHPでも紹介したことがあります。

現地で継続観測している方の話では、福江島から飛び立ったハチクマは東シナ海をひたすら西を目指し、600キロちょっと離れた中国の上海近辺まで無着陸で飛んでゆくそうです。途中に休憩する島はありません。成鳥で3日間、幼鳥は5日かかったのが追跡調査で分かったそうです。驚くべきデータですね。600キロを3日かかるというのは時間がかかりすぎと思われるでしょうが、羽ばたき運動だけで飛ぶわけではなく、海上に発生した僅かな上昇気流を求めて旋回しながら高度を取り、滑翔を交えて移動するので対地速度にすれば遅くなってしまうのでしょう。

夜間飛行では月明かりを見ながら磁気コンパスに相当する機能で方向維持するのでしょうね。まさにヒトにはない超能力の世界です。雨の日などは上昇気流を利用できないので、天気の良い日を選んで飛んでいるはずです。途中、条件が悪くなると海上から引き返すことがあり、夜明けに飛び立った群れが午後に戻ってくることもあります。

対岸の山を背景に飛ぶ 大瀬崎断崖から灯台を見る 大瀬山展望台から南東方向 大瀬山展望台から北東方向

福江島へのアクセスは自分のクルマで陸路、長崎まで行き、カーフェリーで島まで渡る他に、空路福岡、長崎空港から乗り継いで福江島まで飛ぶ手段があります。重い撮影機材を持って旅行するのはクルマの方が楽ですが、長崎までのドライブは大変だし、空の旅はもっと体力が要りますね。それでも壮大なハチクマの渡りを一度でも眼にすると貴重な経験になるので止められないでしょうね。「タカ渡り病」は益々重症になる傾向にあります。この病を治すことが出来る医者はノーベル賞ものではないでしょうか?

長崎から空路25分で福江島 展望台から日の出 渡りを止めて海上から戻ってきた幼鳥 日の出と共に飛び出したハチクマの群れ


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