「旦那様、お城の馬車がきました。なんでもお嬢様を迎えに来たとか・・・」
アイリーン「私を?いったい何事かしら・・・」
役人「ともかく、あなたを即刻お連れするようにとの御命令で・・・ささ、早く」
アイリーンは迎えの馬車に乗り、城へと向かった。
国王「おお!アイリーン、よく来たぞ。立派に成長したものだ。ダイナー殿がお前を引き取った時は、ほんの小さな子供であったが。余も年を取るはずだ」
アイリーン「王様、御機嫌うるわしゅうございます・・・」
国王「うむ、まことに余の機嫌はうるわしいぞ。あの勇者ダイナーの子がこのように立派になって今、余の前におるのだからな」
アイリーン「父も王様によしなに伝えてくれと申しておりました」
国王「今日そなたを呼んだのは他でもない。余はそなたの父上に国を救ってもらって以来、心を入れかえ、大臣達と協力して国政を司ってきた。しかしもう年には勝てぬ」
アイリーン「王様、元気を出してください」
国王「幸いにも今、勇者ダイナー殿の子が立派に成長してくれた。これは天が余に与えてくれた幸運じゃ。アイリーンよ、この国の宰相となって国政を司ってはくれぬか?」
アイリーン「え・・・?!」
大臣「アイリーン、君は若いが才能豊か。しかも英雄ダイナーの一人娘だ。ぜひ引き受けてくれ」
アイリーン「国王陛下、大臣閣下、私は18になったばかりの若輩者。宰相などの大任が勤まるはずもございません」
大臣「いや、最初はわしの下で政治を勉強すればよい。そして折を見て宰相となればよいのだ。司教殿や将軍殿も協力を約束しているから心配ない」
アイリーン「本当に私などでよろしいのでしょうか?」
大臣「君以外にこの国の宰相が考えられようか?我等は皆、立派になった君が、この国を指導してくれる日を楽しみにしてきたのだ」
国王「いやあ、めでたい!大臣、アイリーンの政治の勉強を頼んだぞ。アイリーンが立派な宰相となる日まで、余ももうひと頑張り働こう!」
こうしてアイリーン・ダイナーは王国の宰相となるべく、城に入って政治の勉強を始めた・・・ |
Good |
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為政者として人の上に立つものに、最も必要とされる資質はモラルの高さである。 その点、アイリーンは申し分のない宰相であった。国民はこぞってアイリーンを見習い、重臣たちも力の限り補佐したので、王国は豊かで平和な国となった。 アイリーンの名は後世「理想的名宰相」として、末永く讃えられることとなる。 「この国の豊かさは、全て民の心の豊かさの象徴です。私はただ、父の教えに従っただけ」 |
Normal |
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為政者として人の上に立つものに、最も必要とされる資質はモラルの高さである。 その点、アイリーンはまず合格点であったと言えよう。勇者の娘ということもあって国民の受けも良く、重臣たちもよく協力してくれたので、アイリーンの政権は安定したものになった。 アイリーンの名は「王国最初の女性宰相」として末永く人々の記憶に残った。 「私の様な未熟者が宰相の大任を果たせたのも、国民の助けがあってこそ。感謝しなければ・・・これからも父の教えを守って働くわ」 |
Bad |
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為政者として人の上に立つものに、最も必要とされる資質はモラルの高さである。 その点、アイリーンにはその資質が欠けていたかもしれない。 宰相という権力には誘惑も多い。惜しいことにアイリーンは賄賂の魅力にうち勝つだけのモラルを持ち合わせていなかった・・・・・・ 結局アイリーンの政権は乱脈を極め、不正や情実が横行したため、国王もアイリーンをその任から解かざるを得なかった。以後、王国では女性を宰相に任命することはなかった・・・・・・ 「せっかく宰相にまでなったのに失脚するなんて・・・でも私、後悔なんかしてないわ。また昔のようにお父さんと一緒に暮らしましょう・・・」 |