●世界観B創世記・星の終わりの神様少女3

★☆5★☆

 星と月が浮かぶ夜空に比べて、地上は全くの黒一色であった。

 クレネスト達は、道の途中で星動車を隠し、そこからはゴラム監獄へ徒歩で向かっていた。

 この辺りもゴラム市から続く盆地であり、監獄はその中央から東に位置している。

 公道から外れて歩くその地面は、草原であるということだけは分かった。

 エリオが小型星動灯を持ち、その先を布で覆って光量を落としている。看守に光を見られる危険性があるからだ。

 ゴラム監獄から見える微かな光を頼りに目的の場所を目指す。方向が著しく掴み難い。正確な自分達の位置を把握するのも困難であった。

 普通の人間であれば――

「エリオ殿、もう少し右じゃな」

 テスはコンパスも使わずに、正確な位置を示していく。これにはクレネストも非常に感心した。

 この娘も気をよくしたのか、得意気に次々と指示をだす。

 そうして進む方向を彼女が何度も補正すること数十分――

 一向は目的の場所に到達する。

 ゴラム監獄からの光が、だいぶ近い位置に見えていた。あちらは南東の方角だろう。

「エリオ君、そこに立ってローブを広げて下さい」

 クレネストが指示をだす。

 禁術の光を見られないようにするためだ。

 言われたとおりエリオは、監獄側に立ってローブを広げた。ジャラジャラという音がなる。

「一体あなたは何本の星痕杭を隠し持ってるのですか」

「露出狂のポーズみたいじゃのぅ」

「いいから早くしてください」

 交互に変なことを言われて、エリオは頬が熱くなるのを感じた。顔色は暗いので見えはしないだろうが、多分赤い。

「さてさてです」

 クレネストは、バッグから肉の塊を取り出した。途中の店で買ってきた物だ。何の肉かは知らない。

 それを地面に置いてから、独特の歌にも似た音を、その口から奏で始めた。

 同時に指先が複雑な印を結ぶ、実に滑らかに素早く――

 彼女が印を描く度に、白銀の術式が宙に浮かんで円陣を作る。肉の塊も術式として分解し、より複雑な術式が編みこまれていった。

 光はやがて、一瞬の強い輝きを見せてから、闇に溶けるように霧散した。

 辺りは再び暗くなる。

「クレネスト様それは?」

 広げたローブを元に戻し、エリオが聞く。

 星動灯でクレネストの手元を照らすと、なにか奇妙な物が握られているようだが。

「なんじゃ? けったいな生き物よのう」

 テスの言うとおりである。

 大きなショベルのような手足。楕円形の毛むくじゃらな胴体。目は極端に小さく生物のようだが、鼻先はドリルにしか見えないものがついている。

「モゲラ君壱号と名づけました」

「いや、名前はいいんですが、それが穴を掘るための禁術なのでしょうか?」

「他に何があるのですか?」

 言ってクレネストは、ぽいっとモゲラ君壱号を足元に放った。

「下がってください」

 言われたとおり二人とも後ろに下がり、クレネストもその場を離れる。

 と――

 いきなり土砂が舞い上がった。

 彼女がモゲラ君壱号を放った場所である。

 車の中で受けた説明どおりとすれば、あの謎の禁術生物? が、穴を掘り進めているのだろうが――

「な、なかなか頑張りおるのぉ~」

 テスが感心したように言葉を漏らす。

「ええと……これは凄いですね~、見た目のわりには音も静かですし」

「はい、防音の法術も一緒にかけておきましたので」

 クレネストが口元に両手を添えて言う。

 三人が見守る中、やがて巻き上がっていた土砂の量が少なくなってきた。

 おそらくモゲラ君壱号が、もっと穴の奥の方へと進んだのだろう。

「位置計算が正しければ、そろそろ地下監獄に繋がるはずです」

 そう、それこそがクレネストの狙いであった。

 現在、地上に建てられているゴラム監獄は、その殆どが新しく建設しなおされたものである。

 しかしその地中には、古い時代に建設された地下の監獄や墓地が残されているというのだ。

 その位置は、今の刑務所よりも少しだけ北西方向にせり出している。つまりはこの辺り、ということらしい。

「では、行きましょうか」

 穴は、斜めに向かって掘り進められていた。人ひとりが通れる程度の広さで、傾斜が相当にきつい。

 テスは余裕で先に下っていってしまったが、エリオとクレネストはそうもいかなかった。地面に片手をつきながら、腰を落とし気味にしてジリジリと下っていく。

 前にいるエリオが奥を照らすが、まだ先はよく見えない。

「テスちゃーん、何かみえるかーい?」

「真っ暗でなーんにも見えぬが、地面の感触が硬くなったのぅ。少し広い場所? だと思うのじゃが」

 その返事を聞いて、エリオが後ろを振り返る。

 クレネストが小さく頷くのを見て、彼も頷き返すと、再び穴を下り始めた。

 やがて傾斜がゆるくなり、星動灯の明かりが届くようになると、その場所が徐々に見え始める。

「やりましたね、クレネスト様」

「はい」

 クレネストが安堵の声を漏らした。

 穴から抜け出して、エリオは星動灯で辺りを照らす。舞散る埃に光線が見えた。

 そこは石壁の広い空間――であるかのように見えたが違う。

「こいつは凄いな」

 見渡す限りの壁が、全て人骨で出来ていた。柱と柱の間に綺麗に詰め込まれ、ところどころに頭部も埋まっているのが分かる。

 非常に気色の悪い場所ではあった。しかしながら、あまりにも骨の量が多い。それゆえに、さほど不気味な印象は感じなかった。

 が――

「ち、地下墓地……だったんですね」

 いつの間にかクレネストが、彼の右腕に身を寄せていた。袖を掴む手が硬い。

 よくよく見ると、壁を破って内部に侵入したため、地面には崩れた骨が大量に散乱していた。 

「ええっとです。深淵なる星の御許で安らかに~」

 星導教会の紋章を表す星導十字の印を切りながら、クレネストが震える声で祈りの言葉を捧げた。

 暗くて不気味な場所は平気のはずだが、どうやら人骨の方は苦手のようだ。

「テスちゃん、南東の方向はわかるかい?」

「上の建物があった方向であろう? 向こうじゃ」

 と言って、テスは入ってきた穴からみて右方向を差した。

 そちらへ星動灯を向けてみるが、奥に見えるのは骨の壁だった。

 エリオは一呼吸遅れてから理解する。

「……あー壁の向こうってことか」

「今、私達がいるのは多分この辺りですね」

 クレネストが右手でエリオの袖を握り締めつつ、左手ですいっと見取り図を差し出す。

 ここもかなり広い部屋だが、このような空間が四つほどあるようだ。北東方向に二部屋。通路を挟んで南西方向にも二部屋。それぞれが隣接している。

 エリオは北東方向へ光を向けた。すると部屋の入り口らしきものが見えた。

「今は南西の……この部屋のどちらか? ということですか」

「まずはここを出て確かめてみましょう」

 彼女の言葉を受けて、エリオは入り口の方へと足を向ける。テスも後から続いた。

 通路に出ると、左手に一つ、向かいの壁沿いに二つの入り口が見えた。左手の奥は行き止まりで、右手の方は通路がずっと続いているようである。先までは光が届かない。

「向こうですね」

 わざわざ確認するまでもないのだが、なんとなく声にだすエリオ。

 先ほどから右腕にくっついたままのクレネストを気にしつつ、彼女がついてこれるよう歩調を緩めて歩き出す。

 辺りには気持ちの悪い虫が蠢いていた。墓地を出ても腕を離してくれないのは、たぶんそれが原因であろう。

 目の焦点が真っ直ぐ前から微動だにせず、かなり怯えているように思えた。

 それとは対照的に、テスの方はというと呑気なものだ。虫にも骨にも暗闇にも動じず。音もなく落ちてきたデカイ蜘蛛を平気で掴んで捨てた。

 かなり長い通路だったが、ようやく終わりが見えてきた。

「なんか広くて丸い感じぢゃのぅ~」

 テスの言うとおり、そこは円状の広間だった。壁から天井までドーム状となっていて、てっぺんには通風口らしき穴がある。辺りには割れた石のテーブルや、家具かなにかの骨組みが散乱していた。

 壁沿いに見やれば、今入ってきた通路以外にも、あと二つ通路があった。それぞれ南北に分かれている。

 見取り図には確か、北側の方に細かい部屋が沢山書かれていた。おそらくあちらが牢屋なのだろう。南側の通路は、この地下監獄への入り口に通じているのか――

「さっそくですがエリオ君、採血の方をお願いします」

 言って腕を捲くるクレネスト。

 エリオは肩にかけていたバッグを降ろし、中から採血管を取り出した。

「それをどうするのじゃ?」

 針が苦手なのか、テスが引き気味に聞いた。

「血を採るんですよ。私の」

 そう答え、右腕をエリオに差し出すクレネスト。

 針が彼女の腕に向かって構えられると、テスは呻いてあさっての方向をむいてしまった。 

 静かに沈黙する中、クレネストの血液によって採血管が赤く満たされていく。

「はぅ――

 採血が終わると、彼女はそう息を漏らした。消毒液で湿らせた綿で傷口を押さえている。

 エリオは採血管を落とさないよう気をつけながら、クレネストの顔色を確認した。

 うつむき気味ではあったが、特に瞳に陰りはみられない。呼吸も安定している。

 前回からかなり日も開いているので、おそらく体調は大丈夫であろう。

「さて、エリオ君。始めますので採血管を円の中央においてください」

 そう言ってクレネストは、綿を投げ捨てた。

★☆

 瞬く間に、白銀の術式が膨れ上がった。

 飲まれた人影が、光となってほどけ消えていく。

 幾千の生贄で構成される術式が、天まで渦巻き膨張し、ゴラム監獄を侵食していった。

 白くなった世界の中で、書きかけの手紙が揺れている。

 その傍に、微笑む女性の小さな小さな肖像画があった。

 ゆっくりとペンが転がって、机から落ちる――

 床に触れる前に、それは消えた。

★☆

「のぅ……これは……夢……では……ないの、かえ?」

 道の真ん中に立って、それを見上げるテス。大きな瞳をさらに大きくしながら、声を絞り出すようにいった。

 それから一呼吸もしないうちに、足から力が抜けたのか、彼女はその場に膝をつく。

「これで分かってもらえましたか?」

 言いながらその背中を、クレネストがそっと後ろから抱いた。

 雲を突き抜け天高くそびえる世界の柱――

 新世界の防衛機能を司るというそれは、円筒形の塔を幾数も組み合わせたような形であった。規則正しくそれ等を並べて積みあげているような感じではなく、適当にベタベタと貼りつけられた感じで乱雑に見える。その周りを、何百個はあろうかという白い光の球体が飛び回っていた。

 おかげで昼間でなくても塔の姿がよく見える。

 人の侵入を拒む青白い霧も、柱を中心にして渦巻いていた。

「クレネスト様、その……どうですか?」

「成功しました」

 エリオの問いに、まるで事務報告でもするかのような感情を含まない返答。

 彼が聞きたいのはそういうことではなかった。上手い聞き方ができないことを、もどかしく感じる。

 あの一瞬で、ゴラム監獄の中にいた人々全てが、世界の柱の生贄となったのだろう。何千という人の命が、クレネストの手によって一瞬で消えたのだ。

 それをやってしまった本人は、いったいどのような気持ちなのだろう?

 ただ、彼自身もその片棒を担いでいながら、いまいち実感がない。何故か奇妙な安心感だけが、今は身体の中を支配していた。

「エリオ君、体調に変わりはありませんか?」

 黙り込んでいると、逆に心配されてしまった。

 こちらを見ている少女の顔は、いつもどおりの眠たそうな半眼。

 特に無理している様子は見られないが――

「はい……あの、クレネスト様の方は?」

「……やはり気分は、あまり良くないです」

 そう漏らすとクレネストは、テスの頭の上に顎を乗せた。

「それはええと、大丈夫なのですか?」

「術を施行するまでは少々緊張していましたので、疲れが出たのだと思います。ですが、今は無事終えられてほっとしています」

 彼女も自分と、それほど変わらない心境なのだろうか? 

 言葉に裏があるのかどうか分からないが、多分なんとなく、それは本音を言っているのだろうと思えた。

「さてです――テスちゃん立てますか?」

 クレネストが、呆然としたまま固まっているテスのほっぺたを人差し指でつつく。

 するとテスは、自分の頬にゆっくりと手を伸ばした。親指とひとさし指でつまむと、おもいっきりつねり、

「にゃー!! 痛いっ! 夢じゃないのじゃ!」

 飛び上がるテスを、後ろへ下がって避けるクレネスト。

 それだけ冷静な判断ができるようなら、あまり心配はいらなそうだ。

「はい、夢ではありません。現実です。色々と聞きたいことがあるかもしれませんが、ひとまず車に戻りましょう」

「はは、ははははははは」

 引きつった顔のまま、変な笑い声を上げているテスを、クレネストが引きずるようにして連れて行った。

 どちらかといえば、テスの方が壊れ気味だなと思いつつ、エリオも鼻で息をつくと星動車へ戻った。

 星空を行くトライ・ストラトス号――その窓から地上を見下ろして、リギルは感嘆の呻きを漏らしていた。

 超絶に精巧で、膨大かつ巨大な禁術の術式。ついぞ、このような美しくも洗練された術など見たこともない。

 これほどの術式が、俺の作った術式回路と組み合わされば、さぞかし素晴らしい作品が作れるだろうに。

 巨大な建造物が出現した瞬間は、あまりの美しさとスケールに涙すら流した。

 この世にこれほどのものを作り出せる人間がいるのかと。

 その押さえられない感動を、わけのわからない身振り手振りで表現する。

(なんなのだ、この正体はなんなのだ――

 ウロウロせずにはいられない。湧き上がる創作意欲で爆発しそうだった。

「そういえば、ペルネチブ半島の方でもこんな感じで巨大な柱が出現したとか」

「なにっ!」

 ジルがそう言うと、リギルが彼に掴みかかった。

「貴様! なぜそれを言わんのだ!」

「いや、どうでもいいし忘れてた」

「どうでもいいわけねぇだろお前はっ!!」

「そうかっ」

「そうかっ……じゃないわぁ!!」

 相変わらずの腐れた目つきで反応の薄いジルに、興奮したリギルが激昂する。

 もうどうにも押さえようのない感情を、とりあえずジルの身体で晴らしてやろうかと考えたその時。

「騒がしいなお前達」

 ティルダが部屋に入ってきた。

 ジルとリギルがそちらを注目し、二人とも眉をひそめる。

 彼女は黒くてスケスケの、いわゆる勝負下着姿であった。風呂を上がったばかりなのだろう、髪が濡れている。

「なんなんだその、淫らな格好は?」

「これが中々に快適だ」

 ティルダの即答に言葉が詰まる。

(いや、そうではなくてだな)

 頭の中で言いつつ、ますますリギルは眉間のシワを深くした。

「いっそ裸でいた方がもっと楽なのだが」

「皆が居場所に困るから止めてくれ」

「そうなのか? なかなかうるさいな」

 不満気にティルダが言うが、ジルですら引いている。

 こうも堂々とされ過ぎると、色気も何もあったものではない。まして黒は好みではなかった。色気があって好みなら良いという問題でもなかったが。

「そんなことよりもだ」

 自然に話を流すティルダにリギルは嘆息する。ジルはジルで関わりたくないのか、窓の外を見ていた。

 そんな二人の態度を特に気にするでもなく、彼女は続けた。

「リギルよ、必要な資材は揃ったのか?」

「ああ、数は十分だ」

 それを聞いてにやりと、珍しく笑みを浮かべるティルダ。

「あーやっとこれで、この国も色々と捗るな」

 そう言うなりくるりと背をむけて、上機嫌そうに部屋を出て行った。

 しばし二人の男は沈黙する。

 船内の原動機が呻る音が続き――

 それから思い出したかのようにジルが口を開いた。

「次はどこへ行くんだっけ?」

「ミイファミイファミイファー!」

 いきなり襟首を掴み激しく揺さぶるリヴィア。されるがままのミイファは左右に頭を揺らされた。

 教室に入って早々この有様。大体の察しはついているものの、とりあえず手を離してもらわないと喋れない。

 レニスが冷静に、リヴィアの後ろ頭にチョップを入れる。

「レニス痛い……」

 リヴィアが目に涙を浮かべて苦情を言った。開放されたミイファだったが、頭が揺れたままであった。

 レニスがとりあえず、ミイファの頭を両手で掴んで止める。

「リヴィア、落ち着いて」

 静かな声音で、半眼のまなざしをリヴィアに向けるミイファ。

 それを聞いているのか聞いていないのか分からない勢いで、リヴィアが口を開く。

「北の方にぃ! すっごぉーくおっきくて変な建物が出てきたそうだよ!」

「知ってる。新聞で見た」

 と言ってミイファは、自分のカバンを机の上に降ろし、その中からファイルを取り出した。

 ページをめくるミイファの両脇から、レニスとリヴィアが覗き込む。

「これ」

 ミイファが指差したそれは、新聞のスクラップだった。記事の見出しには、『ゴラム盆地に突如出現した巨大建造物!ペルネチブ半島の超巨柱との関係は!?』と書かれていた。

「ああ、僕も読んだよ。ちょうどゴラム監獄のあった場所らしいけど」

 レニスの言葉に、ミイファは微かに目を伏せた。

 もし、未だ彼女の父親が服役したままだったとしたなら、今頃どうなっていたことか。

 クレネストが口利きをしてくれたおかげで、偶然にも助かった――と、ミイファにはそう思える。

(でも、まさか……)

 頭の隅で引っかかるものがあった。もしかしたらクレネストは、こうなることを最初から知っていたのではないだろうか? と。

 星導教会へ入ることを目標にしているミイファは、当然ながら巡礼についても勉強をしていた。

 テスタリオテ市、ポッカ島、そしてゴラム市。セレストから出発したのだとすれば、この順序である。

 巨大な柱が現れたというペルネチブ半島は、テスタリオテ市とそれほど離れていない。ポッカ島ではマーティルの木が巨大化したという。

 異変が起きている順序が巡礼路と合致し、いずれもその時、近辺にクレネストがいたとしても不思議ではない。

(知っていたから助けてくれた?)

 ミイファは考え込む。それはそれで、自分のお父さんだけを助けてくれた理由がわからない。なにか教会側が隠しているようなことでもあるのだろうか?

(考えすぎだよね)

 クレネストの禁術であろうことなど、ミイファには到底想像も及ばなかった。単なる偶然として、ひとまず納得する。

「あっはー何が起きるんだろうね! こわーいオバケとか出てきたりして!」

「僕はきっと隠された古代の遺跡かなんかだと思うよ」

 人々の間には不安が広がっているというのに、リヴィアとレニスは結構気楽な発想をするものである。

 ミイファはそんな二人を見て、静かにため息をついた。

 カバンを机の横についてる金具にかけ、席に着く。

 いまだ憶測を言い合うリヴィアとレニスを尻目に、ミイファは窓の向こうを見ていた。

 そして願い、憧れの人の姿を思い描く――

(……私は必ず、先生のところへ)

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