若い女性に多い社会不安障害
(20年1月号の院内紙「はぶ医院の健康情報」に掲載されたものです。)
(20年1月のコミュニティー紙「おかあさんチョット」に掲載されたものです。)
社会不安障害とは、他人に見られることに過度の関心や不安があり、自分の行動が他人から否定的に評価されるのを常に恐れている状態です。たとえば人前で話したり、他人の見ている前で食事をしたり、公衆トイレで用を足したり、権威のある人と面談したり、来客を迎える、といった状況を苦手とします。
社会不安障害があると、そのような状況におかれた場合、赤面し、動悸を感じ、ふるえたりします。
また、不安や恐怖を感じる状況が予想される場合は、それを回避しようとするのが一般的です。
もともと日本では、対人恐怖症として研究されてきました。内気な性格と考えられていることも多いようですが、内気な性格と違い、社会不安障害では、社会的活動に支障をきたし、生活が思い通りに送れなくなっています。
診断には、パニック障害、うつ病、統合失調症、人格障害等との鑑別が必要です。パニック障害では、パニック発作が起こることを恐れ、むしろ他人と一緒にいたがることが、社会不安障害との違いです。社会不安障害は、うつ病に進行したり、アルコ-ル依存症を併発したりすることがあるので注意を要します。
社会不安障害は、性格的な問題だけではないので、治療により改善する可能性があります。薬物療法としては、ベンゾジアゼピン系の抗不薬、交感神経を遮断するβ遮断薬、三環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が主に用いられます。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、比較的新しい抗うつ薬で、副作用としては、使い初めに嘔気や嘔吐がみられることがありますが、比較的副作用の少ないお薬です。ベンゾジアゼピン系の抗不薬は、他の薬剤に比べ即効性がありますが、急激に中断すると、服薬前よりも不安がかえって増強することがあり、徐々に減量してから中止する必要があります。このため、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)をまず、服用し、症状増悪時にベンゾジアゼピン系の抗不薬を臨時に用いることが多いようです。
社会不安障害は、若い女性に多く見られ、30歳以後に症状が出現することは、まれです。しかしながら、日本の社会では、学校を卒業した時に就職しておかないと、年をとってから最初の就職をすることは、難しく、このため、症状が軽快しても社会生活に障害を来たしかねません。
社会不安障害が疑われる場合は、早めに医師にご相談ください。
パニック障害について
(19年2月号の院内紙「はぶ医院の健康情報」に掲載されたものです。)
突然、動悸や息苦しさ、めまいなどがおこり、ひどい場合は、死んでしまうのではないかとの恐怖から、救急車を呼び、検査を受けるも異常なしと診断されます。症状は、1時間以内に自然に軽快するので、様子を見ていると、後日、再び、同じような症状が出現します。これが、パニック障害の典型的な症状です。治療をせず放置すると、知らない場所で発作が起こることへの恐怖感から、電車に乗れなくなる場合や、外出できなくなる場合もあります。パニック障害の原因となる発作誘発物質が、いくつも発見されており、カフェインや二酸化炭素も関与しています。パニック障害は、体質的な素因を持った人にストレスが加わり、発生します。精神安定剤や抗うつ剤が有効ですので、外出できないような重症にならないうちに治療しておくことが大切です。
