さて、これまで片頭痛と緊張型頭痛について述べてきましたが、ズッキン・ズ
ッキンとした拍動性の痛みが時間が立つにつれズーン・ジワーッとした重い痛み
に変わる両方の頭痛の特徴を持った頭痛も存在しており、「混合性頭痛」と呼ば
れています。国際頭痛学会の分類にこの名称はありませんが、臨床現場では片頭
痛か緊張型の両方の頭痛の症状を兼ねる頭痛は存在し判断に迷うことが少なくあ
りません。片頭痛でも緊張型頭痛でも、その原因に“血管”が出てきますが、片
頭痛の原因となる血管は拍動する比較的太い血管、緊張型頭痛の原因となる血管
は筋肉内などに存在する細い血管なので、この両者が合併しても矛盾はないとさ
れています。
困ったこに、片頭痛と緊張型頭痛の2つの頭痛は、対処法が全くといって良い
ほど正反対で、混合性頭痛であると判断した場合、その症状に合わせた対処法を
選択することになります。
北秋田市住吉町4−10
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さて、今までの頭痛が比較的女性に多い頭痛で
あったのに対し男性に発症が圧倒的に多い頭痛と
されるものに、この「群発頭痛」と呼ばれる頭痛
があります。この頭痛は1年に1〜2回、2日から
2ヵ月間の間、ある決まった時間帯に激烈な頭痛
が1時間くらい出現するという、変わった性質を
持った頭痛で、海外の統計では男女比で6:1と圧
倒的に男性に多い頭痛であることが分かります。
この群発頭痛には、片頭痛の薬を服用すると頭痛
が和らぐことや、頭痛発作時に側頭動脈という、
こめかみにある血管が拡張していることが確認さ
れていることから、片頭痛の兄弟分のように考え
られ、片頭痛と併記して述べられている論文も多
いのですが、発作時の症状は片頭痛とはまるで違
います。
先ず、頭部の片側に出現する部分までは、片頭
痛と同じですが、群発頭痛の頭痛発作時は頭痛と
同じ側の目には涙、鼻には鼻水、多量の発汗が認
められます(そのほか眼球結膜、充血、鼻閉感、
縮瞳、眼裂狭小なども出現するようです)。そし
て何より辛いのはその痛みです。人によっては「
やけ火箸で目をえぐられるようだ」とか「目をえ
ぐり取ってしまいたい」というほど、その痛みは
強烈で、片頭痛が安静にして冷やしてジーッとし
ていれば、痛みが和らぐのに対し群発頭痛のそれ
は痛みでジーッとしていることも困難で、ひどい
場合は痛みを和らげるため、頭をベットや床、壁
に何度も打ち付けるような行動をする患者さんも
いらっしゃいます(実際このような行動で痛みが
和らぐかは不明ですが・・・)
ところが、大体1時間ほどでこの痛みは消失し
てしまうのです。しかも1年間のうち、1回〜2
回だいたい2日〜2ヵ月間の頭痛(群発期といい
ます)があって、あとは翌年までこの頭痛は出現
しないのです。また、群発頭痛が出現するのも多
くが30歳代から発症し、発症間もないころは、
2〜3日の群発期も、年を経る毎にその期間は除
々に延長して行き、最長で2ヶ月位まで群発期は
延長するようです。患者数は、ある先生の統計で
は、片頭痛患者の1/10以下であろうとされてお
り、私もあまりお目にかかることが無い頭痛です。
群発頭痛の対処法は、現在のところその病態も不明瞭なため、経験的な部分が多
い様です。ただし、後で述べる危険な頭痛との見分けが付きにくいところもありま
すので、一度精密検査(CT・MRI)施設を備えた病院での検査をする必要はあると思
います。脳や頭蓋内に異常が見つからない場合、群発頭痛の緩和対策をすることに
なります。現在のところ、片頭痛の薬が効果的な方、酸素吸入が効果的な方、鍼療
法が効果的な方など、様々でどの治療も効く人には効く。効かない人には効かない
と効果は様々です。また、片頭痛と同じように氷嚢で冷やしても、痛みは和らぐよ
うです。群発頭痛では、飲酒が誘因となることも知られていますし、この頭痛の患
者には愛煙家が多いことも知られ、群発期は禁煙・禁酒を心掛けた方が良いでしょ
う。
群発頭痛の治療は、群発頭痛の痛みが激烈であることや、内服薬や酸素吸入療法
で使用する100%酸素の吸入は、火災の危険性を伴うことから医師の指導の下で行
った方が好まいため併用治療が好ましいと考えています。さて、肝心の鍼灸治療の
方は、群発頭痛の特徴の一つに出現する時間が大体決まっているという点に着目し
て行います。頭痛発作が昼や夕方の場合は、発作時に来院して疼痛緩和を目的に治
療します。夜間や就寝時に発作が出現する方は、片頭痛の鍼治療に準じた治療をし
ます。治療期間は群発期と呼ばれる痛みが出現する期間には2〜3日に一度、群発期
が過ぎてからも月1〜2回の定期的な治療を行います。慢性頭痛の場合完全な治癒
は難しく、症状がある時の治療よりも、この無症状の時の治療により体調を調え体
質を改善することの方が大事であると考えています。
さらに群発頭痛の方を悩ませるものに痛みの他に治療費の問題があります。酸素
吸入療法を開始する場合、初期費用に3〜4万、その後酸素代にさらに3〜4万程掛
り、そのほか薬代、診察代、鍼治療費となればその額は膨大です。スポーツ店など
で販売している携帯酸素は、3〜4分程度のものが多く、20分程の吸入を必要とす
るこの頭痛の治療には代用出来ません。当院では、保険治療の対象にならない幾つ
かの慢性疾患に対して割り引き制度を設けてあります。本頭痛でも、担当医の紹介
状をお持ち頂ければ、割引制度をご利用いただけます。