これ位早起き(嘘) 4日目
コモドーロリバダビア−化石の森−サルミエント
アルゼンチンに来て初めてガイドツアーに参加する。
但しここは有名観光地ではない為、大きなツアーなどなく、今回も ガイドと1対1。
ところが、前日になってもツアーの出発時間が何時かわからない。 日本の旅行会社では現地の旅行会社から前日までに連絡が入ると いう事だったのだが・・・。 なので早起きした。待てども連絡は来ない。
とりあえず連絡がないという事はそんなに早い時間ではないだろう と思い、ホテルのレストランで優雅に朝食を摂った後、部屋に戻る。
するとタイミングよく電話がかかってきた。あと30分程で迎えに 来るという。だったらもっと早く電話してこい。この旅では出発時間 に振り回される事が多かった。
アルゼンチン人、本当にてきとー。

約束の時間になったので、ロビーに降りて待つ。待つ。待つ。 ところが来ない。来ねーよ。普段は時間に正確な事など外国で求め たりはしないが、今回はさっき30分後に来るとわざわざ電話して きてたやんけ。 この時点でガイドに対する印象はあまりよくなかった。

結局約束の時間から30分近く経って、ガイドがやっと現れた。 現れたのは、ビヤ樽のような巨体のおばさん。
・・・本当にこの人 がガイドなのか?一瞬疑った。
ガイドの名前はアナ。穴?
遅れた事を丁寧に謝ってくれたので、若干機嫌を直しつつ車に乗る。 ま、今日はこの町にもう1泊するだけで時間制限はないから遅れても いいだろう。気楽に構えながらツアーが始まった。
アナとまずは互いのことについて話す。歳を聞かれたので、何歳位に 見える?と聞き返したら、うちの息子と同じ位と言う。
息子さんは何歳?21歳。・・・ありえねー。もう慣れたが。 実年齢を言うと一瞬絶句した。悪かったな、童顔で。
ちなみにアナは50歳、子供は3人、ドイツ系。お父さんの代にドイツ から移住してきた。その頃のドイツといえば・・・、ナチ?
んな訳ないか。ないのか?

そして何とアナは日本人旅行者をガイドした事があるらしい。結構日本人 来んの?と聞くと、前に日本人と会ったのは5年前。やって。
あーやっぱりねー。そら「地球の●き方」に載っていない場所には日本人 はあんまし行かないよねー。
アナも日本人観光客が何故ぽつぽつとしか来ない事を疑問に思ったらしい。 何故ここに来たいと思ったの?と聞かれた。
テレビ番組。と素直に答える。

どこまでもまっすぐ 出発して15分か20分程で町の外に出た。途端に見渡す限りの大平原。 そして道もどこまでも真っ直ぐに続いている。
けれどー、●ルコー、お前はー、来たんだー。お母さんを探しにアルゼンチン にやって来たえらい少年の歌が頭の中を何回も何回も繰り返し流れている。
大草原(パンパ)の中、マル●のせつないテーマソングを俺の頭の中で再生しながら 車はひた走る。 北海道も比べものにならない程真っ直ぐな道が続いて、ちょっと道なりにカーブを 曲がって、また真っ直ぐな道に出る。

車窓の景色を眺めていると、植物で覆われている大草原の中にところどころ四角く くり抜かれ、周りの景色に不似合いな重機械が1台ぽつんと置かれている場所が ある。
そして辺りが一望できる高台でアナが車を止めた。うわー。地球広えー。
俺が感動しているとアナが、あちこちに機械が置いてあるの見えるでしょ?と 聞いてきた。俺もあれの正体を知りたかったので、あれ何?と聞いてみる。
「あれはアメリカの会社が石油を掘っているの。」と苦々しそうに言う。 またアメ公かよ。
ったく世界のどこに行ってもロクな事しねー、あいつら。
アナの話によると、このだだっ広い草原は実はほとんどが私有で土地持ちの アルゼンチン人から何とかというアメリカの会社が一応土地レンタルって事で 石油を掘っているらしい。
あーあ、台無し。と俺が単純な感想を漏らすと、アナが本当に。って言う。
地元の人達も思う事は一緒か。

それから車を走らせる事約2時間、化石の森に一番近い町サルミエントに到着した。
そこで休憩。アナも俺も喫煙者なので互いに気を遣う事もなくタバコが吸えてよかった。
俺よりアナの方がそう思っているようだった。

情報はこれだけか? 町からさらに車を走らせる事30分ちょっと、景色が大草原から乾いた大地にがらっと 変化してきたところで化石の森の入口に到着。
観光客いねー。ツアーバスどころか車すら全く止まっていない。 俺の他には夫婦1組が自分達の車で来ているだけ。
アナはここの管理人と仲良しらしく、管理人事務所に入れてもらってまた休憩する。 管理人のおっちゃんはここで50年以上管理人を務めているらしい。 おっちゃんの顔を見てると、それが素晴らしい人生だった事がわかる。そんな顔だった。
しみじみしているところへ管理人のおっちゃんから「ビール飲むか?」と勧められた。 いやいや、この後結構歩くんやんな?という事で、帰ってからもらいます。と返事する。

そして外に出る。暑いー。太陽を遮るものが何もない。アナが帽子は?と聞くので、 持ってません。と言うと、そう思って予備持って来たといって帽子を貸してくれた。
アナはとても気配りしてくれていい人だった。最初の印象は変わっていた。

風強すぎ グリーンで「A」のロゴの入った野球帽(野球は全く詳しくないが、これ日本でも一時期流行った アスレチックスってやつやんな、きっと。)を被っていざ出発。 最初はなだらかな傾斜を上っていく。

うっ、風強っ。びゅーびゅーびゅーびゅーすげー風の音がしている。風速20mは下らねーんじゃ ねーの。 アナが俺がそう思ったのを見透かしたように、この時期は毎日もっと風が強いんだけど、 今日は風が弱くてラッキーね。日本からわざわざ来てくれたから神様が都合してくれたのね。
・・・これで風弱いって、いつもはどの位の風なんだ?いつもは風速40m以上あるらしい。
ちょっと聞きますが、その風速は人間が飛ばされる位の強さですか? 俺は幸運にも飛ばされなかったが、帽子はびゅんびゅん飛ばされた。孫悟空のわっか位 きっちきちに被っているのだが・・・。

そんな事に気を取られながら高台の反対側に出た俺は、また言葉を失った。
もー広大すぎて言葉にならない。乾いた大地に三角形の小高い山がぽちぽち見える。
元々平坦な土地だったのを長年の強風が削ったのよ。とアナが説明してくれた。 そりゃこの強風だったら地面もえぐられるっつーの。
そしてふと手前の方に目をやると、あ、あれは!!

木に見えるが木ではなく テレビで観た通りのどう見ても木にしか見えない木の化石が、あちこちにごろんごろん 転がっていた。
すげー(こればっかし)。早速その1つに近付いて触ってみる。色も手触りも 木だよー。でも金属で叩いてみるとキンキンいう。本当に石なのか。すげー。
あちこちにある木の化石を1つずつ触って確かめていく。
おうっ。

そこには確かに俺が「世界遺産」で観た景色が広がっていた。来たよー、本当に来ちゃったよー。 すげーなー。
でも立ち止まっているはずなのに無意識に後ずさってるぞ、俺。
風強すぎやっちゅーねん。
昨日は水しぶきをびっしゃびしゃに浴びてたのに、今日は強烈に乾燥した強風、アルゼンチンは 広い。そして昨日とは違う自然のすごさに感動している。

本当に木ではなく 周りには広大な景色が広がっていて、足元には不思議な木の化石がごろごろ転がっている。 そして風びゅーびゅー。あー、こういう荒涼とした土地もいーね。住みてー。絶対生活は楽じゃない が、こういう所で暮らせたらと本当に思った。 管理人のおっちゃんが心底うらやましかった。

木の化石は発見された当時に、ヨーロッパ人達にばっこし盗まれたらしく、今はそいつらの 家にインテリアとして飾られている木達も多いらしい。
死ね、バカ野郎。
ヨーロッパの奴らの何だ、大航海時代?とやらが歴史的にいい結果を残した事なんざ、何1つない。 その大航海の影響で今の世界はおかしい気がするぞ、おい。

ここ以外に観光客が入れる化石の森は2ヶ所程あるらしい。そこにはここより大きい化石も あるが、数ではここが一番だとアナが説明してくれた。
それを聞いて、おそらく「世界ふしぎ発見」に出ていた化石の森はここではない事を認識した俺は ちょっと落ち込んだ。何故なら、「世界ふしぎ発見」には世界で一番大きな木の化石とやらが 映っていたから。だが、「世界遺産」に出て来た化石の森は絶対ここなので、1勝1敗という 事でよしとする。

写真だと迫力不足 木の化石をひとしきり見た後、アナがせっかく地球の裏側から来てくれたのだから、とっておきの 場所に連れてってあげる。と言って、化石の森の奥深く、薔薇色のストライプの入った小高い丘の 方へ俺を連れて行く。
正直、木の化石と周りの景色の雄大さだけで大満足だったが、アナがせっかく言ってくれたので 付き合って歩き出す。
観光に来ていた夫婦は既に帰ったようで、このだだっ広い化石の森には見渡す限り人影が無い。 いるのは俺とアナだけ。すげーなー。日本では絶対ありえないよな、こんな人口密度の薄さは。

刻々と変わる足元の状態。岩場・草原・火山灰と色々な感触を楽しみながらアナと一緒に、 以前なのか雨期の時なのか、水が流れていただろうと思われる、小川の跡を歩いていく。
そしてある程度歩いた後、アナがここから先はちょっと1人で行ってごらん。と言うので、 1人で歩いて行った。曲がり角を曲がった時、俺の目の前に飛び込んできたのは、洞窟だった。

やっぱり木ではなく 洞窟自体はそんな大きなものではなかったが、突然現れたびっくりと、そこから吹き抜けてくる冷たい 風の心地よさにまた感動していた。
そしてその洞窟の中で昼食。涼しい。そして俺達が動く音以外は風の音しか聞こえない。
1日中、ここで1人で寝ていたい。という気持ちになった。

昼食を終えた俺達は、もう少し公園の中を歩いた。
公園の事務所に戻って来た俺達はまた管理事務所に戻ってきて、ビールで乾杯。公園でほとんど水分を 摂らなかったからか、めっちゃうまいです。あー極楽極楽。
そしてアナが日本語の文字を教えて欲しいというので、喜んで教えた。といっても、アナとアナの家族の 名前を日本語で書いて、音を説明しただけだが。

とんでもなく後ろ髪を引かれながら、サルミエントの町に戻って来た。アナがまた知り合いの 人達がいる旅行会社の事務所に連れて行ってくれた。
そこで挑戦したのが「マテ茶」。アルゼンチン の国民的飲料マテ茶。雑草の中にお湯を入れてぐしゃぐしゃ混ぜましたというようなビジュアルの為、 正直ちょっと躊躇していた。それを茶漉し付のストローで飲む。めっちゃ草臭いんじゃないですか?
でも飲んでみると、ん?緑茶に近い味やん。日本人は結構好きなんちゃうかな、こんな味。

この辺りは恐竜の化石がよく出るらしい。という事で恐竜博物館へ。
ところが恐竜の模型はあれど、化石はなく・・・。博物館の人達としゃべりを楽しむ。みんなの名前を 聞いてそれを日本語で書いてあげると、めっちゃ珍しそうにでもとても喜んでくれた。
その話、詳しくは<旅の出来事>に。

博物館を出た後、あー、今日も1日楽しかったなー。と感慨に浸っていた。
するとアナが湖を見に行こうと言う。湖の名前は忘れた。ただ英語にすると「マスターズレイク」だと いう事は覚えている。「ご主人様の湖」、んー。あんまし期待していなかった。
と、ところが。

湖 あー、きれいだなー。この湖も素晴らしい景色だった。水は澄んでいて、空も澄んでいて、夕焼けの 陽射しは優しくて、遠くの山が少し霞んでいて、足元には色んな色の石が敷き詰められていて。
アルゼンチンの景色は素晴らしい、素晴らしすぎていた。
湖は近郊の町の人達の憩いの場になっているらしく、たくさんの家族連れがくつろいでいた。 あー、俺もこんな湖の近くに住んでいたら、何があってもストレス溜めずに生きていけそうな 気がする。こんな場所が家の近くにあったら何も言う事ないと思う。

アナと2人、靴を脱いで足を冷たい水に浸して、しばらく湖の景色を眺めていた。そしてアナが言う。 ここの湖の石を持って帰ると、またここの湖に来れるのよ。と。
いつもだったら持って帰らないが、この時は素直に石を1つ拾って帰った。

空と湖 そして帰り道、夕暮れの大草原をぶっ走る。夕焼けが辺りのマ●コ感を更に加速させ、頭の中の BGMは「けれどー、」の部分じゃなくて、「さー出発だ!いーま日が上る!」の力強いサビ部分に 変わり、せつなさが非常に増す。
アナとぽちぽちしゃべりながら窓の外の風景を見ていると、遠くの方に微かに煙が上っている。 アナに「あの煙は?」と聞くと、「あの色の煙だと火事かしら?町の方ね。」と言う。
町?まさか俺のホテルとかぼーぼー燃えたりしてんじゃねーだろーなー。
町が近付くにつれて煙の量が半端じゃなく増えてきていた。本当に町が燃えてるのか?

途中の道に警察官らしき人がいたので、アナが聞いてみた。燃えてるのは町ではないらしい。 ただ町に程近い草原との事だった。
その話の通り、町が燃えている訳ではなかったが、町はうっすら煙に包まれていた。

ホテルに戻った後、アナとホテルの喫茶店でもうちょい話してメールアドレスを交換して、あ。 アナに写真送るの忘れてたな。あーあ。落ち着いたら送ろう。その後、煙っている町を少しだけ 歩いてスーパーマーケットに行った。欲しいものはあったが、レジの前の大行列に臆した俺は 何も買わずにホテルに戻った。大行列な上に、レジ係が以上に少ない、そして遅い。
さすがアルゼンチン。


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