2日目
イグアス
朝起きて、思ったより疲れが残っていない事に驚いた。
ひょっとしたら、時差がちょうど12時間なのがいいのかもしれん。会社でも昼間
最高に眠い時あるしなー。
朝食はホテルのバイキング。特にどうって事もなく、コンチネンタルブレックファスト
(何がコンチで何がネンタルなのか、詳細は全く不明。)を楽しんだ後、早速公園内へ。
最初にどこに行くか・・・。行っとけ。イグアス国立公園の中でも一番の見所
「悪魔の喉笛」に初っ端から向かう事にした。
公園の入口から中心を経て悪魔の喉笛まで専用の電車が通っているのだが、早朝の
為、動いていない。天気もいいし、まだ涼しいし、ひょっとしたら一番乗りできるかも
しれんし、歩いて行ってみよう。誰もいない線路沿いの道を歩く。自由だな、俺。
そしてここで何があっても目撃者はいないな。
2、30分右手に線路、左手に川(水路)を見ながら歩いていく。時折カラフルな
鳥達が空を飛んでいく。そして木に留まる。俺が近付くと飛び立ってしまうので、
写真は全く撮れない。撮れてもシルエットのみ。
段々水音が大きくなってきた。そして水煙が段々近付いてきた。あー、興奮するねー。
他人が見ても絶対興奮状態には見えないと思うが、興奮するねー。
鉄道駅の終点を過ぎた辺りからは金属製の通路で森を渡り、水路を渡って悪魔の喉笛に向かう。
おー、水煙と水音が最大級になって来た。
まだ100m以上あるのにその水煙が身体を濡らしていく。
森の中にはカラフルな蝶、そしてまたカラフルな鳥達が飛んでいる。
あ、第一レンジャー発見。
さすがに一番乗りは無理だったようだ。でも日中よりかなり人は少ないんじゃねーかな。
遠くの方に俺が滞在しているホテルが見える。本当に滝の正面にあるホテルなんやな。
近付いてはいるが、滝の上端とほぼ同じ高さを歩いているので滝壷は全く見えない。
ただ下の方から膨大な量の水煙が上がっているのはわかる。
とうとうつきあたりが見えてきた。通路が展望台に繋がった所で終わっている。
そこには観光客が10人程いた。ツアー客だろうか。
そして、念願の悪魔の喉笛。言葉にならない。言葉は出ないが口開きっぱなし、
顔緩みっぱなし。三方からとんでもない量の水が滝壺に落ち込んでいる。そしてもう一方に続く川へ
水は下っていく。
すごいなー、こんな滝があるんだなー。単純に圧倒されていた。本当にただただ圧倒されていた。
この辺りまで来ると水煙というより、雨の中にいるような状態で風向きが変わる度に髪と服は
びっしゃびしゃに濡れる。でも気温も高いし快晴だったので乾くのは早かった。
ひとしきり滝壺を見続けた後、周りの風景に目をやる。あちこちに小さな虹が出ていた。
展望台の向かい側はブラジルの地。どうしようか、ブラジル側にも行ってみようか。でもブラジルは
ビザ取らなあかんし、面倒くさいなー。
でも向こうからも素晴らしい眺めが見られるんだろうな。
けど、ブラジル側のい展望台らしき建物は少し奥まった所にあるようで、あそこからやと滝の全景は
見えてもこの迫力は感じられんだろうな。先にブラジル側からの方がよかったのかもしれん。
こんな状態ではデジカメが危険なので、あれを出そう。
たらららったらーん「水中用使い捨てカメラー。」、大したものではない。でも役に立った。
それを使って写真を撮りながら展望台をあっちに行ったりこっちに行ったり、喫煙したり(ちゃんと
灰皿設置してありました。)していた。
時間が経つにつれて段々観光客の数が増えてきた。そしてちらほら日本人の姿が見え始めた。
日本人をちらと見ると、お。携帯で写真を撮っていた。普段なら何とも思わんのだが、今回は
俺も携帯を取り出す。俺の携帯は防水機能付。全然へっちゃらで画像に動画を撮っていた。
今までの人生でこんな事はほとんどないのだが、この滝と一緒に写真に収まりたくなった。
だが、やはり自分が写真に入り込むと風景が壊れるのでやめた。
夜ここをもう一度訪れる事を考えてワクワクしていた。満月ツアー。くーっ。
いい時間になって来たのか、観光客が増えてきたので場所を譲る事にして、悪魔の喉笛を
後にする。よく考えると「悪魔の喉笛」って何だ?
喉笛?それは身体の部位か?あの滝の
形が悪魔の身体の部位に形が似ているから名付けられたのか?
それとも音か?あの轟音が悪魔の吠え声に例えられたのか?喉笛っつーのは声か。それとも
口笛の喉バージョンか。喉で音なんて鳴らせんぞ。げっぷか。
かっちょいー名前だが、由来がわからん。日本語もよくわからんようになっていた。
ガイドはまともに読んでいない。絶対にちゃんと書いてあるが読んでいない。
今でも読んでいない。
写真では全く迫力が伝わらん。っくー。
絶対に行ってその目で見て欲しい。本当に素晴らしいんだよ。
悪魔の喉笛から公園の中心部に戻り、遊歩道を歩いてあちこちの滝を見て回る。
アルゼンチン側はこうやって色んな滝の近くまで歩いていけるのが売りで、ブラジル側は
滝の全景を見渡せるのが売りらしい。俺は近くまで行ける方がいい。
遊歩道を歩いていると、韓国人ツアーの一行がいた。・・・。ツアーガイドらしき
人がビデオをまわして、ツアー客を撮っている。それはそんなに珍しい光景ではない
のだが。ビデオカメラが普通じゃない。
この人達はおそらく一般人、なのにビデオカメラはテレビ局のカメラマンがロケで
使うようなバカでかい本格派。・・・。ちょっと韓国人がわからなくなった。
あー、ここでずっと暮らして行きたいなー。どっかに日本人の人材募集ポスターでも
貼ってねーかなー。遊歩道を歩いて、周囲を滝から流れ出す川に囲まれた島にも
行ってみた。そこへはボートを使って行く。ここがおそらく公園内で一番低い場所。
滝を見上げる。でかい。その迫力は上から見下ろすのと違う迫力がある。
そうそう。ここを1人で訪れている人間が珍しいのか、俺の善良さがにじみ出ちゃって
いるのか、この遊歩道を歩いている最中に「シャッターを押してくれ。」という依頼を
10回近く受けた。当然、快くそしてセンスある(会社の前の上司にはセンスないと
言われるが、)写真を撮ってやった。
一通り遊歩道を歩いてホテル近くまで戻って来た俺は、昼食を食っていなかった事に
ここで初めて気付いた。我を忘れていた。
公園の地図を見ると、公園の入口近くにレストラン街と土産物屋街があるという事
だったので、入口に向かう。
そこには結構よさげなレストランがいっぱいあったが、1人で入るには敷居が高そう
だったので、一番気軽に入れそうなピザ屋を選んだ。
これは正解だった。
唐突だがアルゼンチンの女の子はかわいい。
中南米だと美人の国はチリ・コロンビア・コスタリカと相場は決まっているらしいが、
俺はコスタリカよりもアルゼンチンの女の子の方がかわいいと思った。
黒目・黒髪・小柄と日本人に親しみやすい容貌かもしれない。そして歳をとってくると
あっという間に肝っ玉母さんになるのかもしれん。でも今がよければそれでいいのだ。
何故突然こんな話になったかというと、ピザ屋の女の子がかわいかったから。
しかも応対もよかった。
肝心の食事だが、ビールはやはり?暑い場所のビールなので味は軽め、ピザは最初は
しけたピザだな。と思っていたが、シンプルに美味かった。ポテトも俺の好きなカリカリ
具合で満足だった。かなり空腹だったという加点要素はあるが。
食事の後は土産物屋へ。ここの女の子達も感じがよかった。
ここではTシャツを買おうと思っていた。んー・・・。どうだろう?
イマイチ感がどっぷり漂う中から、一番無難そうな製品を選択した。
そして買い物後に、彼女達に少しだけ日本語のあいさつを教えてからその場を去った。
アホ日本人観光客ではないので、いらん日本語ではなく、ちゃんと接客に必要な言葉
を教えた。
ホテルに戻って休憩した後、待望の満月ツアー開始。
公園の入口から列車に乗って悪魔の喉笛を目指す。
満月ツアーって言ったって、ライトアップはそこそこされていて満月の時は滝との
画が美しいから満月の時だけツアーがあるのだろうと思っていた。
ところが、列車はひた走るが周りに全く灯りがない。もしかして満月の時じゃないと
灯りが足りなくて行けないのか?と思う位暗い。
俺は朝一度行ってっから大体どういう道かわかっているが、初めて行った人は結構
怖いんちゃうかな。水音がごーごーいってるし、足元はそこそこ流れの早い川。
そして誰か落ちてもおそらく助けられなさそーな感じ。
そういう意味もあって、悪魔の喉笛以外は連れてってくれんのだろう。
心がはやる。夜、満月に照らされる月。ろまーんてっく。
そしてとうとう展望台にたどり着いた。遠くの方にホテルの灯りが見える以外は
満月とそれが水に反射している光だけ。そしてその滝の美しさは・・・。
すみません、あおるだけあおっといて写真がありません。フラッシュ無しで何枚か
撮ったが、やっぱし何にも写ってなかった。フラッシュを焚いて撮ってもみたが、
至近距離にある水が浮かび上がるだけで肝心の滝が写らん。
この時ほど高性能カメラを持って行かなかった自分を悔いた事はない。でもあの
時の美しい滝の姿は俺の心の印画紙に焼き付いている。
3日目
イグアス−ブエノスアイレス−コモドーロリバダビア
俺は迷っていた。確かに滝は一通り見た。しかしプエルトイグアスという近郊の町
も行ってないし、ブラジル側にも行ってない。
だがプエルトイグアスの町には何があるという訳でもない。そしてブラジル入国には
ビザがいるが今日は日曜日、ビザが取れるかどうかが怪しい。プラス今日の午後には
ここを経って、次の目的地にコモドーロリバダビアに向かう事になっている。
迷った。迷った。いっか。迷ったが滝を見ながらのんびりする事にした。
遅めの朝食を摂り、出発。
左の木はホテルの出口を出てすぐの場所にある。何かの果物なのだろうか?
ぱっと見は柿に近い印象を受けたのだが、柿の実はこんな幹に実を付けたりはせん
だろうし、こんなに取りやすい場所に、はい、どうぞ。ってな感じでも実は付いて
いない。何の木だ、これ?・・・きしょ。
ちょいグロテスクな感じがするので写真を1枚撮っただけで顔を背けて去る。
そして真っ先に向かったのはまた悪魔の喉笛。
ここに来ると水量も水音もすごいけど、何か落ち着く。しばらくまたびしゃびしゃに
なったり乾いたり、びしゃびしゃになったり乾いたり、喫煙したりしながらしばらく
ぼーっとしてた。
これが滝のマイナスイオン効果か?この勢いの滝だとマイナスイオンを浴びるという
よりも、マイナスイオンでいっぱいの水槽に漬けられているような感じなんかも
しれんな。
人間、ぼーっとしてると色んな事を考えるもんだね。
あー、ここから飛び降りても水の勢いがあるから、絶対死体は浮かび上がらんよなー。
えーと、自殺志願者ではありません。でもここに来るとみんな一度は
そういう事思うだろ、きっと。
でも日本の事は思い出さない。ここでも12時間の時差ってのがよかったのだと思う。
俺が起きる頃には日本では1日がほぼ終わっている。俺が1日の終わりを噛み締めて
いる頃、日本では皆起き始める。
しばらく悪魔の喉笛と共に過ごした後、後ろ髪を引かれながら後にする。
友人達に絵葉書を書いた後、昼食を摂る事にした。
公園入口にレストラン街はあるのだが、そこに行ってホテルに戻って空港に向かう
のが面倒くさいので、ホテルで食う事にする。
日本を発ってからずっと肉類ばっかしだったような気がしたので、こんな熱帯雨林の
ど真ん中で「海老のスパゲティ」を注文した。
いつもなら絶対ハズレに終わるのだが、今回は違ったよ。
まず海老の背わたがちゃんと取られている。ラテン系のくせに細かいマネを。
と差別発言も出ながら、俺も細かい指摘をしながら食す。
あー、これは美味い。美味い。このHPを読んで頂いた方々にはお分かりの通り、
俺は全くグルマンではないのだが、ここのスパゲティには感動した。
これは俺が今までに食ったスパゲティの中で一番と言えるかもしれん。
さすがシェラトン。
そして空港に到着。
タバコを1本吸った後、航空会社のカウンターに向かう。
少しおかしいと思った。そこそこいい時間なのに人が並んでいなかった。
みんなツアー客だから、いっぺんにみんな現れるのかと思いながら、係員の元に
行き、航空券を出す。
・・・。その後の事は<旅の出来事>に書く事にする。
無事に次の目的地、中部パタゴニアのコモドーロリバダビアの町には到着したのだが、疲れた・・・。