2日目
プラハ−カルルシュテイン
郊外のカルルシュテルン城に向かう。
駅で前日見かけた日本人の女の子を見つけた(前頁の豪快娘とは別)。
声をかけてみようか少し迷った。彼女はあまり旅の道連れを欲しがっていないように見えたからだった。
とりあえず少しだけ話そうと、電車の向かい合わせの席にあつかましく座った。行先は同じだった。
彼女、Kさんも長い旅をしてる娘だった。色々話している中で、Kさんがふと「この娘大丈夫かな。」と思った
日本人旅行者の事を話題に出した。・・・ひょっとして、南方面の地球の●き方持ってるか聞かれた?
彼女はKさんにも地球の歩き●を持っているか尋ねていた。そんなにどうしてもないと困るのか?
Kさんと話をしながら城までたどり着くと、余裕で冬季休業だった。
教訓:冬の中欧では見学できる城はほぼないと考えていい。
プラハに戻ってきた後、Kさんとプラハの街をまわった。Kさんの中で、俺が危険な人物ではないという
判断が下されたらしい。嬉しいがそれでいいのかという若干の悔しさも残る。
毎時人形がちゃんちゃかちゃんちゃか踊る時計台を観光した。外から見るとイマイチ殺伐とした感じに
見えたのだが、中に入って内部の装置を見学すると人形達は必死に動いていた。
ぱっと見ただけでは本質までわからん事が人生にはたくさんある。
夕食も付き合ってもらった。ヨーロッパという地域は数少ない経験上ではあるが、夕食に1人でレストランへ
行くというのがとてもしづらい地域だ。
なので、連れがいるのはとても嬉しい。
旅に行く時は1人で行く事がほとんどで、それが好きで
そうしているのだが、
帰りの飛行機の中と夕食にマクドナルド以外のものを食べたい時は誰かいればいいと思う。
3日目
プラハ−チェスケー・ブディヨビッツェ−チェスキークルムロフ
とうとう世界遺産チェスキー・クルムロフへ向かう。思い返すとプラハの街も世界遺産だが、
何故かその事は頭になかった。世界遺産、漠然としていて、それでいてえらく規模のでかいその言葉の正体を
見極めてやる。という使命感?があった。今から考えるとあまり意味はなかった。
プラハからはチェスケー・ブディヨビッツェという町で電車からバスへの乗り換えになるので、少し寄り道をした。
この街の名前をドイツ語綴りにして、その上英語読みにすると、バドワイザーになるという。
最初はへー。と思ったが、よく考えると何がへー、の基準かわからん。ビールで有名な町らしいが、
バドワイザー発祥の地とかではない。そして町中にも特に見所はないように見受けられた。
バスに乗ってほどなくチェスキー・クルムロフに着いた。
ぱっと見た時は、日本の城のように町の周りに濠があるかのように見えた。それはひどくカーブする川に三方を囲まれて
いただけだった。しかも城自体はその地域の外にあった。バスから降りて歩いていくと段々と町が見えて来た。
中世にタイムスリップしたかのような景色(これもガイド風)がもうそこまで、という所で、不意に雪がちらつき始めた。
風流。と思った瞬間、ホワイトアウト。
「生きて絶対ダムまで辿り着く!」織田裕二(わかるでしょうか、ホワイトアウト。)。
なんていうつまらん発想も当時は影も形もなく、一寸先も見えない吹雪なんて初めての経験に
1人でパニックを起こしていた。
ホワイトアウト前に見た記憶を頼りに命からがら、一番近くにあった店に避難した。
ここで車が通ったら思いっきり轢かれていた。
この旅最強の吹雪。まさかこんな所で来ようとは・・・。
遠くから景色を見て、歩くのを楽しみにしていただけに、一気に感情が黒い方向に向かう。
吹雪は収まったが雪は止まず、美しい街を悪態つきながら歩き始める。悪態の内容は今でもとてもここには書けない。
この悪態で町が穢れなかったかどうか大変心配をしている。
しかし、持続力がないのと頭が悪いのがあり、この雪のせいで、辺りに人が全くいない状況が段々楽しくなってきた(あほ)。
もう俺1人の世界。誰も歩いていない入り組んだ小経を1人楽しげに歩いていく。
その後もしばらくの間、鼻歌まじりで観光してたがまた容態が急変する出来事が発生する。
この趣ある街角に、突然「HOTSPAR」の看板が出現したのだ。彼らに恨みは全くないが、
近くにバールか何かがあったら絶対に壊していた。他にそういう現世を思い出すものは一切ない街に何故存在する?
ホットスパー。しかもプラハでも見なかったっちゅうのに、こんな辺鄙な街に出店か?(よく考えたら冬はシーズンオフなだけで、実は大観光地のはずなので、辺鄙ではないと思われる。)あれ?ちなみにホットスパーは日本にもあるが、大本はどこの国の
会社だったか?謎は解けなかったが、ただ、それですっかり気力をなくしたので町歩きを終了し、城に向かう。
城を歩いていても、もう俺の心に情熱の火は灯る事はなかった(そんな火、灯った事ないという噂もあるが。)。
雪が降っていなければ、絶対にもっと歩き回れたと思う。ひょっとしたらこの町でホテルを探して
2日目に突入したかもしれん。それ位いい場所だった。
・・・また雪が強くなってきた。城の中に入ってやり過ごす事にする。
城の中で雪やどりをしていても人の声もなく、聞こえてくるのは風の音と雪の音だけ。
ここでは静かに1人の時間を楽しんだ。不思議と心が穏やかになってきて、このまま何時間かこうしていても
いいかと思った。
気分はここで完全に落ち着いた。
が、腹が減ってきたので帰る事にする。後ろ髪を引かれながら、この町を後にした。
この町には、「雪が好き。全ての汚いものを隠してくれるから。」っていう位、雪が好きな人じゃない
かぎり、春から秋に来る事を勧める。
ただ、思いっきりオフシーズンではあったが、静かなこの町を楽しむのには冬でよかったのかと、後になって思った。
気候のいい時期は観光客が多くて、ゆっくりとそして静かに観光する事はできないだろう。
だが訪れた日に雪が降っていなければの話。