<耳を疑う日>


結婚はやはり一生に一度のとても大事なイベントなのかもしれない。
マレーシアで披露宴に出た俺が改めてそう思ったのは、精神的なものではなかった。
日本でも色んな人の披露宴に出たし、その時も人生の一大イベントだなとは 思ったが、ちょっと種類が違った。

初めてそれを見たのは、披露宴の途中でトイレに出て、ついでに喫煙していた 会場の外の、受付のテーブルの上だった。
そこには1冊のアルバムがあり、中には新郎新婦の結婚記念写真が貼られて いた。
それはありえる事なのかもしれないけど、その量が半端じゃなかった。

新郎新婦・新婦・新郎・新婦・新婦・新郎新婦と、場所を替え、衣装を替え、 ポーズを替え、考えられる限りの結婚記念写真の見本帳のような状態でそこに あった。
話を聞くと、この写真はのべ3日間かけて撮られたという事で、マレーシア女性 はこの結婚記念写真にある意味生きていくうえで最大のエネルギーを費やす のだそうである。

すごい、すごすぎる。

新婦だけじゃなくて、新郎も何着衣装替えてんだ?というか、これ、軍服? 何故?あれ?この服はさっきの服とは・・・、違うのか。 新郎はうんざりしながら撮ったという事だったが、これだけで俺はマレーシア 女性とは結婚できないなと思った。
マレーシア女性の方で写真を撮らない男などお断りという説や結婚自体できない だろうお前は、というツッコミは禁止させてもらう。
一通り見せてもらって、そろそろ披露宴会場に戻らなきゃなと、会場のドアを 開けた。

会場は新郎新婦の今までの歩みスライドショーが始まっていて、会場を暗くして いたので、最初は早くドアを閉めないとという意識が働いた。
閉めて落ち着いて席に戻ろうとすると、耳にBGMが入って来た。

「さーよならー、大好きな人ー」

ん?・・・え、えーー!?

そう。かかっていたのは、「花*○」の「さよなら大好きな人」だったのである。
後に新郎は、大好きな家族と別れて2人で歩き出すという意味に解釈してくれと 言っていたが、どうだろう?

会場の7割方は日本語自体を理解しない人達なので、特に何も変わった様子が なかったが、日本で披露宴中にこの曲がかかったら、ちょっと会場の空気が 変わるような気がする。
新郎の言い分はわかったけど、この曲を披露宴で聞くのはこれが最初で最後と なるであろう。

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世界の親父から2.5
頼んではいけない