5日目
ヴィントフック−エロンゴウィルダネスロッジ
この日から4日間は、現地ツアーに参加する。のだが、何か嫌な予感はしていた。
ひょっとしたらツアーという名目で、俺とガイド1対1ではないのか。という疑念。
・・・当たっていた。
ホテルをチェックアウトしてロビーで迎えを待っていた俺の元に、10分遅れで
やって来たのはがっちりした黒人のおっさんだった。
名前はオルランド、ネルソンとは違い、制服と思われる服を着た太っていない男。
正直に言うと、最初は全くオルランドの事を信用していなかった。ネルソンと同じように
オプションを持ちかけてふっかけられるのだろう。と覚悟していた。もうオプションは
選択しまいと思っていた。
だが、オルランドは違っていた。
それは追々書いていくが、まずオルランドが話し始めたのが、最近日本人のガイドを務めた
という話だった。しかも普通の観光ではなく、映画の撮影だったという。
題名?忘れた。ただオルランドから主演俳優の名前は聞いた。だがその今年公開されるらしい
映画についてはよくわからん。それが何故かは<旅の出来事>へ。
オルランドに連れられ、ホテルの外に出て車に乗り込む。ランドクルーザーというトヨタ車。
(車に詳しくない俺の精一杯の詳しい説明。)
エアコンが付いていた。これでもう窓を開けて強風で髪がばっさばさになる事はない。
そしてホテルを出てすぐに日程の説明があった。初日はエロンゴウィルダネスロッジという所に
宿泊し、宿が所有する土地の中でアクティビティを楽しむ。そして2日目と3日目は、俺の
今回の旅の主目的となるオコンジマゲストファームに宿泊する。
そして4日目に空港まで行ってナミビアを発つ。オルランドはちゃんと説明してくれた。
町を出て約5分、まだ舗装された幹線道路を走っているその時、道路の中央分離帯に複数の
茶色い物体を発見した。バブーン。
オルランドは、写真を撮りたい所があれば遠慮なく言ってくれ。と言っていたが、さすがに
ここでは止まれない。写真は諦めてそのまま先に進む。だが都市から何kmと離れていない所で
見たバブーンの群れは非常に驚いた。
近郊の町を抜けていく途中、オルランドは色々と説明をしてくれた。俺も色々と質問をした。
例えば幹線道路沿いに点々とフェンスが張られているのだが、フェンスには2種類あって、低い一重の
フェンスは牧場で飼育されている動物達や、大きな草食動物が出てきて車にぶつかるのを防ぐ為。
もう1種類の、二重になっていて電気も通っていると思われるフェンスは、保護区等から肉食獣が
抜け出してきて、人間に害が及ぶのを防ぐ為。大雑把な説明ではあったが、ナミビアでは人間と動物が
とても近い場所で生きている事はよくわかった。
ガイドはこうじゃなきゃな。と思ったが、話をしている途中でにわかに話題がおかしくなり始めた。
俺がカバンの中に入れていた携帯を見て、日本に帰ったら日本製の携帯電話を1つ送ってくれないか。
と言い出した。・・・え?
外国で使える機種もあるが、日本製の携帯電話を送ってもナミビアでは使えないだろ?と聞くと、
使えるようにする事ができると言う。
何で?と理由を聞くと、日本製なら品質には間違いないし、デザインもしゃれているから、ナミビアで
売ったらとても売れると思うよ。そんなビジネスしないか?という返事が返ってきた。
今ナミビアで売られている携帯電話はデザインもよくないし、すぐ壊れるらしい。そしてそれらは
ほとんどがヨーロッパの国々から入ってきているらしい。お下がりか?
俺が日本製の携帯を送って、オルランドがナミビアで改造して売る。これは違法か?違法か?非常に
違法的な匂いがするのだが。
俺達金持ちになれるよ。とオルランドは言うのだが、まろやかに断った。
そして一瞬、オルランドに対してうさんくさい印象が漂った。
もう1つオルランドに対して疑問が湧くところがあった。
それはオルランドが誰に対してもすれ違った人には必ずあいさつする事。幹線道路の脇に点々と
存在する休憩所の掃除をしている人達を何人も見たのだが、その全員に必ず窓を開けて挨拶をする。
礼儀正しいのか?それだけなのか?ちとおかしいような気がした。
昼を過ぎた頃、目指すエロンゴの敷地内に入った。敷地の入口には門があり、ここでロッジの事務所に
客の到着を連絡してくれるらしい。こいつら、それ以外の時間は何をして毎日を送っているんだ?
そして敷地に入るには入ったが、目指すロッジの建物は全然見えてこない。出てくるのはロッジの方向を
示す看板ばかり。
30分近く走り続けると小高い丘が見えてきた。非常に印象的な大きな岩がごろごろとした丘で、
別の星に迷い込んでしまったかの印象だった。非常に胸躍っていた。踊るよ、そりゃ。オルランドも
結構長い間ガイドをやっているが、ここに泊まるのは初めてだ。という。じゃ何で君のとこの旅行
会社はこのロッジを計画に組み込んだ?
疑問はさておき、丘の間を縫うようにして走っていき、やっとロッジの入口という場所までやって来た。
但しまだ建物は見えない。
入口には歩いて上るのも厳しいような岩の坂道があり、その手前に駐車場があったのだが、オルランドは
果敢に車で上っていく。
おー、すげー。4WDっつーのはこういう所の為にあるんだよなー。
だけど、オルランドー、車の横っちょで何かがりがりっと音してるんだがー。
細かい事を気にしないオルランドが無理くり坂道を駆け抜けて、ようやく建物が見えてきた。
このエロンゴは、客室が全てコテージらしい。岩山の麓から中腹辺りまで点々とコテージが
建っている。おー、いー感じじゃーん。
車が到着するとホテルのスタッフが出迎えてくれた。全員黒人。
・・・何かおかしい。
スタッフは確かに俺にも笑顔で歓迎の言葉をかけてくれるのだが、間違いなくオルランドの方が
歓待されている様子なのだった。
ひょっとしてまた差別ですか?
ま、いっか。慣れてっし。
まずはロッジの入口近くにあるさびれた土産物屋に案内された。そこにはオーナーの奥さんがいた。
白人。ドイツ人?シュテフィ・グラフ似なのできっとドイツ人。
今昼食の準備をしているので、少し待ってね。とウェルカムドリンクを出してくれた。
ウェルカムドリンクはレモネード、但し、何故かきゅうりのみじん切りが浮いている。
きうり?
俺が訝しげな顔をしているのを察知され、奥さんが、これがナミビアの伝統的な飲み方なのよ。
と言う。それは鉄板で違うだろ。あんた達欧米人が押し付けた事なんじゃねーの?
奥ゆかしい日本人は口に出しては言わずに、きゅうり入りのレモネードを飲んでみた。
レモン味のジュースにきゅうりが入ったような味だった。悪くはない。
昼食前に部屋に荷物を置きに行く事にする。従業員の姉ちゃんに案内され、岩山に作られた
木の通路をとんとんと歩いて、俺に与えられたコテージへ向かった。
うわー、通路の造りがめっちゃ複雑。しっかり覚えとかんと完璧に迷う。
そして着いたのは、敷地の一番端っこのコテージ。・・・差別?
ま、いいや。一番端は結構落ち着くしな。
おー、こうなってんのか。
コテージは屋根と枠組みと床が木製で、その中に蚊帳の役割だろうか、大きな軍用めのテントが
すっぽり入っている造りだった。コテージの入口イコールテントの入口になっていて、ジッパーで
開けて入る。
これで虫の侵入を防ぐのか。ま、どうしたって虫は入ってくるだろうが、結構防げるかも
しれんな。・・・だがこの認識は少し甘かった。それは夜になるとわかる。
そしてコテージの外にはいすが置いてあり、そこからは岩山の荒々しい雰囲気が眺められた。
おー、すげー。室内禁煙の為、ここに座ってタバコを吸いながら、視界に人工的なものが
ほとんどない素晴らしい景色と、鳥の声しか聞こえない素晴らしい静寂を楽しむ。
喫煙した後は、部屋に入ってみる。
おー、何やろ。思ったより広い。天井も高い。いい感じや。めっちゃいい感じ。これ以外に
言葉が見付からない。
ただ、その意外な豪華感に若干違和感はあった。
もっとシンプルっつーか、質素なイメージだったのだが。テントだという事を除けば、町の
ビジネスホテルより豪華な感じさえするぞ。
テントなのに床は木床てちと不思議な感じやな。ベッドの位置が地面から近いのが虫的にはちょい
気になるが、ダブルサイズやし、横になるとちょうどいい堅さ。
そして入口と反対側の部屋の奥には、そっちもジッパーで区切られたテントの向こうに洗面台が
見えていた。こんな隔離された乾いた岩山の大地だが、水はちゃんと出る。この水どっから来とんねん?
トイレ・洗面台・シャワースペースは、屋根の下にあって周囲にはレンガ造りの壁があるものの、
半分外みたいな空間になっていた。これは、夜は使えんな、きっと。
何か足りないものがあっても買えないせいか、石鹸やらボディソープやらシャンプーやら、
何とかオイルやら、かんとかオイルやら、人体向けの液体が異様に充実していた。
昼食の準備ができたという連絡があり、レストランに向かう。
木の通路をとんとんと歩いてコテージ区域を抜け、反対側の岩山を上がって教えてもらった
レストランに向かう。・・・何だ、この生物は?・・・とかげっすか?
こういう鉛筆あったよな。片方が赤鉛筆で反対側が青鉛筆ってやつ。それを思い出した。
レストランの手前にはプール。・・・またプール。ここ、水が豊富な土地では間違いなく
ないですよね?リゾートなのか、ここは。
このレストランでここまでに抱いていた小さな謎が解けた。
入口でばったり会ったオルランドと2人でレストランに入っていくと、1人の黒人ウェイトレスが
出迎えてくれた。
そしてナミビアの民族の話をしていたのだが、オルランドとこの女性が知り合いなのではないか?
という疑惑が湧いた。それは何故か。オルランドが名乗っていないのに、この女性がオルランドと
名前で呼びかけたのだ。
・・・知り合いなら何故隠す?ひょっとして共謀して俺を殺す計画か?
たたたた、たたたた、
たーたー。
動機ねーよ。
オルランドにあの女の人知ってんの?と聞いたら、知らないよ。と言う。
隠すなよー。オルランドに聞いてもらちが明かないので、思い切って女性の方にオルランドを
知っているのか聞いてみた。
「知ってるわよー、有名人だもん。ナミビアの人は皆知ってるわよ。」
「え?それは名物ガイドって事ですか?」
「彼は有名なサッカー選手だったのよ。」
へー。・・・あ。そういえば車の中で話してる時、昔サッカー選手だったって言ってたな、オルランド。
全くもって興味なかったから、うっかり聞き流してた。
再度オルランドにサッカーやってたんだよね?と聞いてみると、
実はサッカーナミビア代表チームの元キャプテン。しかも歴代最長期間キャプテンを務めた・・・。
・・・あ、そう。っつー事は日本でいうところのカズ的ポジションだったって事ですか?
ピンと来ないところに変わりはないが、ナミビア人達のオルランドに対するフレンドリーな態度の
理由と、オルランドが誰に対してもフレンドリーな理由はわかった。
といっても俺のオルランドを見る目が変わった訳ではない。
そしてひとしきり話した後、昼食。何を飲みますか?と聞かれた。オルランドが、僕は酒飲まないから
グレープタイザーで。っつーんで、俺は酒飲むんで白ワイン。っつー事で乾杯。
どんな食事が出るんだ?ボンガワンガな感じか、ンジャべな感じか、とにかく初めてアフリカンな
食事が食えると思っていた。シェフはナミビア人だと聞いたので期待していた。
ところが出て来たのは、パン・チーズがかかったサラダ・トマトソースのマカロニ・チキンソテー。
欧米か。
美味かったのだが、イタリアン。オーナー夫人はドイツ系だったのに(決めつけ)、イタリアン。
ナミビアなのに、イタリアン。
イマイチ納得いかーん。でも美味かったので残さず全部食った。そしてデザートのケーキまで食った。
お茶も飲んだ。ドイツ人のくせに(まだ決めつけ)、紅茶のティーバッグの品揃えが充実していた。
だが俺が選んだのは、レモン緑茶。
グリーンティーと書いたティーバッグがこれしかなかったから。レモン味はしっかり付いていたが、
しっかり緑茶だったので、ほっと一息。
するとオルランドが、日本人はグリーンティーを飲むんだよね。と言う。何で知ってんだ?と聞くと、
映画の撮影隊が緑茶を持って来ていたらしい。オルランド、記憶力いーね。
このレストランは岩山の中腹にあるので、窓(ガラスは入っていない)からは非常に遠くまで見渡せた。
俺達が黙っていれば、聞こえるのは鳥の声と風の音だけ。
あー、めっちゃ気持ちいーー。
ロッジ主宰のアクティビティは夕方という事で、若干時間があったので、ここでしばしくつろぐ。
人工的だが、水場が2ヶ所ほど作られていて、その内の鳥用に入れ替わり立ち替わり、色んな色の動物園でしか
見た事ない鳥達が山盛り群がる。
ふとオルランドが向かいの山の上にバブーンがいるよ。と言う。え?向かいの山って非常に遠いんですが。
しかもそのバブーンとやら、俺には黒い点にしか見えない。動いたので動物という事はわかった。
オルランド、視力いくつだ?
・・・ん?
景色に見とれていて気付かなかったが、ふと俺の足元を見ると犬がいた。
犬?しかも種類の違うのが3頭。どこから来たんだ、お前達?犬達は俺がいる事など全然気に留めず、
うろうろしていた。
ウェルカム。
ハイジのじじいを一回り若くしたようなおっさんに声を掛けられた。どうやらオーナーらしい。
やはりここの宿はドイツ系(決定)。
夕方のアクティビティの用意をする為に、自分の部屋に戻る事にした。
オフィスに向かうオーナーと一緒に岩山に作られた階段を下っていく。犬達も一緒だが、俺は
どうやら障害物にしか思われていないらしい。そしてこの3頭はオーナーが大好きらしく、
彼以外のものには全く興味を示さず歩いていく。俺は歩きづれー。
夕方のアクティビティは、昔、この土地に住んでいた部族の人達が書いた岩画を見に行く事。
但し、雨期に入った為、雨が降り出したらそこで終わるという。
確かに雲が増えてきたな。
ホテル専属ガイドのジョン(ジャックだっけ?)が敷地内を車で案内してくれる。
彼の口から最初に出た言葉、それは、
「ここは景色と岩画がウリで、動物はあまり見られないよ。」
・・・え?
一緒に車に乗っていた南アフリカから来た白人夫婦と思わず顔を見合わせる。それはありか?
どおりで宿泊客が少ないはずだ。ナミビアのロッジは敷地内で動物を見られる事が存在理由では
ないのか?少し疑問は湧いたが、俺はこの後チーターを見られる事がわかっていたので、
素晴らしい景色が見られればいい。楽しむ事にした。
だが、オルランドの旅行会社は何故俺の日程にここを組み入れた?
あまり見られないとはいっても、ここはナミビア。車が走り出して10分も経たない内に、ジョンが
小高い丘の頂上を指差した。そこには大きなハムスターのような動物が座っていた。
ハイラックスだよ。
はいらっくす?床用の洗剤?
わからん。ジョンが言うには、見た目は大きなハムスターだが、生物学的に一番近い仲間は
象らしい。
へー。
車で敷地内を30分位か、走った後、岩画のある場所までは歩く。
藪の中の植物についてジョン又はジャックに色々と説明をしてもらいながら、てくてく歩いていく。
この雨期初めての雨が既に降ったらしく、藪の中の植物は葉を付け、花が咲いている植物もいくつか
あった。不思議だ。何回聞いても不思議だ。こんなに乾いているのに植物があって、一発雨が降った
だけで花が咲くんだよな。
藪を抜けていくと、小高い岩山が姿を現した。目指す岩画はこの丘の中腹にある洞窟の中にあるらしい。
岩山だから当然岩なのだが、これ上がるの?と質問したくなる位には傾斜がきつい。
しかもこの岩山はこのロッジに泊まった人だけしか足を踏み入れられないので、観光地によくある、
「人がいっぱい上ってて歩きやすくなっている道」、なんつーものはない。
結構トゥルトゥルいきそうな滑らかめな岩肌を恐る恐る登っていく。上りはいいが、下りは大丈夫
なのか、この道は。
岩画のある洞窟に向かう前に、注意しておかなければならない事がある。
ジョンが突然言い出した。何だ?触るな。とかフラッシュ焚くなとかか?
確かにそれも入っていた。わかってるよ。ガキじゃねーから大丈夫。
それと、洞窟の中に蜂の巣があって、大声を出したり、蜂の巣を明かりで照らしたりすると危険だから
気を付けて。
なるほど。それは気を付けねばならんな。
・・・って。
こんなでかい巣だとは思わねー。
洞窟に近付くにつれて、奥に何かの工場があるのかと思う位に大きなモーター音が聞こえてくる。
こ、怖いよー。
そして洞窟に到着した。その入口近くに、浅草寺の提灯よりでかいだろうなという蜂の巣が天井から
釣り下がっていた。奥はのぞく勇気もなかったが、絶対にこの規模の巣がいくつかある様子。
俺達の周りをウンウンいいながら蜂が飛んでいる。
岩画があの奥にあるっつーなら、帰るぞ、ジャック。
幸いな事に、岩画は全て洞窟の入口の左右の壁に描かれていた。
おー、ウーン。すげーなー、ウーン。これは何百年か前に、ウーン、描かれた絵らしい。ウーン。
人が訪れる事が少ない為、ウーン、保存状態がいい。ウーン。
・・・うっとおしーわっ!!!
頭の中で蜂の巣を燃やしている画が思い浮かぶが、この状況でそんなまねをしたら、全身100箇所を
下らん位には刺されると思うので、実際は極力身体を動かさないように、呼吸すら我慢気味で
ジョンの説明を聞いていた。
説明が終わって洞窟を出た。
岩肌の一番緩やかそうな場所を選んで、何ていうんだ、夕日に乾杯?サンセットドリンク。
欧米か。
俺はアップルタイザー。酒を飲んでるのは南アフリカ人夫婦だけ。オルランドは一切酒を飲まない。
健康上の問題というよりは、宗教上の問題のような気がしたのでそこには触れずにいた。
オルランドもイスラム教徒なのか、それともナミビア土着の宗教は飲酒が禁止なのか。
日が沈むと一気に危険度合いが増すので、急いでロッジに引き返した。
そして若干の休憩を挟んで夕食。夕食はフレンチのフルコース・・・。
欧・・・、言い飽きた。
前日までとうって変わって非常に食生活が豪華。まあ、それなりの金は払っているのだが。
食事を終えた後は、特に何もする事がない。当然テレビもないし、オルランドは酒呑まんから飲み会
っつー訳にもいかん。という事でまっすぐ部屋に戻る事にした。
ぽつんぽつんとある灯りを頼りに通路を歩いていくのだが、あ、灯りの周りは、あか、灯りの周りには
種類はわからんが昼間はどこにいた?と疑問に思うほど、いっぱいの虫がびっちりこと張り付いていた。
この灯りに触れるという勇気のある人がいたら、レポート求む。きっと手が見えなくなる位に虫にたかられる
事だろう。電球にもびっちこ虫がついていた。イメージで言うと、苺かキウイの断面。
そして細心の注意を払って、コテージの入口を開けて中に入った。
シャワーは・・・、朝にすっか。浴室の電気付けてシャワー浴びたらきっと虫にたかられるよな。
寝るか。
とベッドに横たわったが、周りが静か過ぎる為、小さな物音でも非常によく聞こえる。
@ 得体の知れない獣の鳴き声
A テントの壁を何かが這い回っているらしい、かさかさ音
B 同じくテントの壁に何かがぶつかるぱしぱし音
C 俺の周りを羽を持った虫が飛んでいる羽音
他は確かめるのが怖いので、Cだけを排除しようと、蚊取り線香をおもいっきし焚いて寝た。