理想的な学習環境
子供たちに勉強を教え30年以上になります。その間、どうすれば子供たちの学力が向上するだろうかと、試行錯誤の繰り返しでした。教師として最も重要な「教え方の技術」は、才能のある人が10年も努力をすれば、かなりの水準にまで達します。やる気のある生徒が、こうした教師の指導を受ければ、おもしろいように成績は上がります。
しかし、生徒全員がやる気のある生徒とは限りません。むしろ実際は、勉強が嫌いであったり、悪い成績が続いて自分に自信をなくしている生徒であったり、そうした生徒の方が多いと言えます。こうした生徒に前向きな勉強姿勢を持続的にもたせることを、教師の力量だけに頼っているのでは限界があります。
では、どうすればいいのか。答えは学習環境にあります。少人数・習熟度クラスです。
生徒たちの意外な変化
少人数とは、10人前後です。少なければ少ないほどいいのかというと、そうではありません。
私が教師として駆け出しのころ(30年程前)、成績の芳しくない生徒を日曜日によんで、ごく少数(2,3人)の個別指導をしました。はじめはいい調子でしたが、1か月もすると思いもよらない生徒の変化に気が付きました。生徒の姿勢に緊張感がなくなってきたのです。普段の授業(10人程度の習熟度別クラス)では決して見せない生徒たちの姿でした。もちろん真面目にはやっています。しかし、いつもの緊張感がなくなっていったのです。マンネリ化といいますか、ピリッとしたものが消えてしまいました。わからなければ先生がすぐに教えてくれるという甘えも感じました。
緊張感の効果
子供を教えた経験のある方ならわかると思いますが、緊張感の有無は知識習得の結果において、決定的な差を生み出します。
10人程度の習熟度別クラスの場合、生徒は自分がクラスの他の子たちより、どの程度進んでいるか(または遅れているか)がけっこう分かっているし、気にもしているのです。隣の子が次の問題にかかると、その生徒は自分のピッチを上げていきます。そして、力がつけば上位のクラスに移動です。ここでその生徒は、やる気がリッセッションされます。また、上位クラスに元々いた生徒は、新しく来た生徒によって刺激されます。
こうしてお互いが高いモチベーションを持続していくのです。
ソフト(授業)とハード(環境)
成績の向上をはかるのは教師の力量だけではありません。生徒同士の間に自然に生まれる緊張感が、子供たちの力を伸ばしてくれます。こうした環境を整備するのが教師の重要な仕事といえます。
我々もまだまだ勉強不足、力不足のところが多々あります。正直、毎日が反省の日々でありますが、お預かりした生徒さんの将来に少しでもお役に立てるよう精一杯努力していこうという思いは強く持っています。卒業した生徒さんが将来成人し、「東進学教室に通っていてよかったな」と思ってくれるような塾にしていきたいと思います。