島の風土が織り上げた宮古上布

どこまでも青い空、心まで洗われそうな美しい海。宮古島の風土と織人たちの根気と技にはぐくまれ、宮古上布は生まれます。

◆宮古上布を生み出すもの
宮古上布は、手績みされた極細の苧麻糸で織り上げ、仕上げに砧打ちという布を2万回以上もたたく工程で光沢が生まれる麻織物。薄く光沢のある地風で高級感が漂います。北の越後上布と並ぶ、重要無形文化財指定の織物の最高峰です。
宮古上布の原料は、いらくさ科の多年生低木である苧麻(ちょま)。表皮を剥ぎ取り、表皮の内側にアワビの貝殻を当て裏側からそぎ取って、繊維を取り出します。さらに指や爪を使って、経糸用は髪の毛ほどに極細く裂き、緯糸用は、それより太めに裂いていきます。約50cmの細長い繊維を結び目を作らずに指で撚り繋いで糸にします。経糸は2本どり、緯糸は1本どりで、約87,000本以上の繊維をつないでようやく一反分の糸が出来上がります。
◆宮古上布の藍
宮古上布の美しい藍色。この藍染の原料は、琉球藍にスクモ、泡盛、黒砂糖、苛性ソーダを入れ発酵させたものを使用します。
専用の染料甕で手でよく揉んで染色し、一度取り出してよく絞り強く引き伸ばして天日に4時間ほど干した後、再び染料につけ染色します。この工程を約20回行ない、手間ひまかけて何度も染め重ねる為、黒に最も近い藍色となり何度水洗いをしても色あせる事が無く、かえって藍色が冴え、一層の涼感を感じさせる仕上がりとなります。そのため宮古上布は親子三代物とも言われています。
◆宮古上布の絣
宮古上布の美しい絣は、織人の繊細な技によって生み出されます。絣の模様が損なわれないよう、経絣に緯絣が十字に重なるように1本1本、糸の位置を揃えながら手機(てばた)で織り上げていきます。糸の位置を少しでも間違うとすべてが狂ってしまい模様が損なわれる為、緻密な技が要求され熟練した織子でも1反を織り上げるのに3ヶ月は要すると言われています。
◆砧打ち
織り上がった反物を沸騰したお湯に入れ、糊や油分や汚れを落としていきます。そのあと、芋くずの糊で糊付けをし乾燥させた後に布巾を整え、アカギの台板の上で、イスノキで作った3kg〜5kgの砧でまんべんなく打ちます。一定のリズム、角度で打たなければ、布を傷つけてしまうため、高度な技術が必要です。この砧打ちにより、ケバが折れて落ちる為、まるでロウを塗ったような艶としなやかさが出ます。1反を仕上げるのに、延べ3〜4時間かけ2万〜2万5千回叩きます。

こうして織り上げられる宮古上布は、通気性に富み、丈夫で軽く、さらりとした着心地に仕上がります。一反織り上げられるのに大変な手間と時間を要する為、稀少価値が高く着物好きな方なら誰もが一着は欲しいと思う最高級の夏のきものです。重要無形文化財に指定されて以降、生産量も少なく、市場にもなかなか出まわりません。上の2点は当店の先代が求めたもので未仕立て、反物の状態で保管してあるものです。
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