DL7PE Micro Vert Antenna についての結論
今回DL7PE Micro Vert Antennaの動作解析を自作の垂直型21MHzExtended DL7PE
Micro Vert Antennaの給電点インピーダンス実測値とアンテナ解析ソフト「MMANA」及び「NEC2
for MMANA」によるインピーダンス計算値を比較することで行ってみました。
周波数21.2MHzでVSWR 1.01に調整した自作のExtended DL7PE Micro Vert Antennaの実測給電点インピーダンスデータは約50.0Ωですが、最良VSWR調整時の寸法データで偏給電・短縮型半波長ダイポールとしてアンテナ定義し、アンテナ解析ソフト「MMANA」では計算条件を完全導体グランド、測定時と同じ地上高7mでインピーダンスの計算を行い、また「NEC2
for MMANA」ではSommerfeld-Nortonグランドモデル、高さ7m、大地特性(Very poor)でインピーダンスの計算を行って、その結果と実測値との比較を行ってみました。
いずれの計算結果も私が予想した値より低く、その値が設定大地特性の問題を含めて計算誤差の範囲内なのかどうか残念ながらはっきりしませんでした。
Sommerfeld-Nortonグランドモデルの大地特性をもう少し変化させて「NEC2 for MMANA」で計算し、評価する必要があるのかもしれません。
アンテナ解析ソフト「MMANA」や「NEC2 for MMANA」に使用されているモーメント法の計算エンジン「MININEC」や「NEC2」による計算結果の中でも、Sommerfeld-Nortonグランドモデルによる「NEC2」の計算結果は実測結果によく合致すると言われていますが、アンテナの給電点インピーダンスは波長に対するアンテナエレメントの径によっても非常に影響を受けるようなので計算結果を評価する場合注意が必要なようです。
Extended DL7PE Micro Vert Antennaはラジエーターのアルミパイプの直径とカウンターポイズとDL7PEが呼んでいる同軸ケーブル部分の直径の比が私の製作例では5倍程あり、またそれらの長さも不均衡です。その上ラジエーターのみにローディングコイルが直列に接続されています。
そのような不均衡なデータでアンテナ定義を行った場合、モーメント法の「MMANA」や「NEC2
for MMANA」で計算した結果がどの程度の誤差を持つのか定かではありません。
また、そのように不均衡なアンテナをモーメント法で計算した例を見つけ出すことができませんでした。
「NEC2 for MMANA」によるSommerfeld-Nortonグランドモデルの計算結果が私の予想値より低かったため、Extended
DL7PE Micro Vert Antennaを偏給電・短縮型半波長ダイポールとアンテナ定義したことが間違っているかもしれないとも考えましたが、それはExtended
DL7PE Micro Vert Antennaを実際に測定した時と同じ地上高7mで、下記の図のような測定方法で給電点インピーダンスの測定を行って、その結果が実測値と同じ約50.0Ωになるかどうかで分かると思います。
Extended DL7PE Micro Vert Antennaは上下のエレメントが不均衡な構造をしているのでコモンモード電流が必ず発生します。
測定器側にコモンモード電流が流れ込まないようにして測定精度を上げるためにもCMF(コモンモードフィルター)を必ず挿入する必要があると思います。
また、アンテナの特性に影響しないよう測定用同軸ケーブルはアンテナに対して直角方向に引き回す必要があると思います。
最後にDL7PEのアンテナのテスト環境は文献にまったく書かれていませんが、文献のアンテナの写真や内容から推察するとカウンターポイズ部分の一部は非常に低い地上高の場合と思われ、アンテナの各定数を求める式もそのようなテスト環境の結果から求められたものと思われます。
なお、文献の中でDL7PEは短いモノポールアンテナの放射抵抗は約30Ωになると述べているのが特に注目されます。
この値に関してはリアルグランドで水平1/2λダイポールの地上高が非常に低い場合の放射抵抗が、MMANAの計算条件が「完全導体グランド」の計算結果値より高い約45Ω程度になるデータが参考になります。この場合の短いモノポールアンテナとは地上高が低いDL7PE
Micro Vert Antennaを指すと思われ、地上高がある程度低い場合は給電点インピーダンスの放射抵抗がほとんど一定値になるのではと思われます。
参考図書:
アンテナ解析ソフト「MMANA」 付属のMmana.Txt 及びAppend.Txt JE3HHT 森 誠 著
「電波・アンテナ工学入門」 工学博士 築地 武彦 著 総合電子出版社
「アンテナ解析ソフト MMANA」 大庭 信之 著 CQ出版社
「パソコンによるアンテナ設計」 小暮 裕明 編著 松田 幸雄・玉置 晴郎 著 CQ出版社
Ham Journal No.95 「特集:アンテナシミュレーションの理論と実際」 CQ出版社
「ham radioシリーズ ワイヤーアンテナ」 JA1EHA 片岡 基 他 著 CQ出版社
「THE ARRL ANTENNA BOOK」 The American Radio Relay League
「トロイダル・コア活用百科」 山村 英穂 著 CQ出版社