タイトルイメージ
本文へジャンプ  

 


論 説






森林保全と環境税

 ーガソリン税を森林の回復にも!ー

     

    地球温暖化を防ぐ森林

これまでの私たちの生活を省みた時、子供の頃、あた
りまえであった美味しい空気、澄んだ水、緑の草木等
が影を潜め、二酸化炭素や窒素酸化物を含んだ空気、
生活廃水や産業排水によって汚染された海や河川、湖
沼、コンクリ−トのビルや巨大なダム、縦横にはりめ
ぐらされたアスファルトの道路に変わり、気がついて
みると何時の間にか、こういった環境に慣れてしまっ
ていた。

私たちが何か被害を受けていると意識しはじめたのは
前世紀末、1990年頃であった。最近では空気や水の汚
染は人が、地球温暖化の元凶である二酸化炭素による
汚染や自然環境の破壊は今も進行しているように見え
る。そして地球温暖化問題を含めて自然を守るには人
間の英知と行動に期待する以外ないのである。

森林は地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を吸収す
る作用をもち、地球温暖化防止の決め手の一つといわ
れ、さらに水資源の涵養など環境保全に大きな役割を
担っている。
  しかし、わが国の森林は荒廃している
といわれている。その原因を辿ると外国産の輸入木材
に国内産の木材がコスト的に太刀打ちできないため、
国内産は敬遠され、国内林業は廃業に追い込まれる。
廃業により森林の手入れはますます行届かなくなって
しまい、森林が荒廃していくという。しかも外国から
の大量の木材輸入は、輸入した国の森林の乱開発を招
き、その国の国土の荒廃を招くだけでなく、二酸化炭
素を吸収する機能を持つ森林を奪っている。

 このように木材の輸入が
80%以上にも達しているわ
が国は、森林を木材輸入国から奪うだけでなく、地球
温暖化にも二重に手を貸してしまっている。


 
  純粋公共財としての環境保全


市場で供給されないか、されたとしても不十分にしか
供給されない財は「純粋公共財」と呼ばれ、“環境”
も「純粋公共財」の定義からくる性質をもっている。
すなわち、「もう
1人追加的に“環境”という公共財
の便益を受けさせるためには全く費用がかからないこ
と」「“環境”を享受することから個人を排除するこ
とは一般的には困難であるか、または不可能なこと」
である。

環境汚染は公共財としての“環境”の便益を低下させ
るだけで、その修復費用である社会的費用を汚染者が
負担しないために生じる。すなわち“環境”は国防や
消防、警察等と同じく「純粋公共財」と呼ぶ。

この「純粋公共財」には料金の徴収といった市場メカ
ニズムを利用したシステムでは機能せず、政府が税の
徴収という形で、その「純粋公共財]」の供給費用を
一括して徴収している。従って、自然を守る費用も,
それが「純粋公共財」である以上政府が賄っているこ
とになっているが、現在までのところ,その費用の一
部を汚染者に対する環境税という形では徴収されてい
ない。

環境汚染物質を削減する方法としては規制による方法
もあるが、環境改善効果として、社会経済活動に起因
する“環境”への負荷に伴って生ずる社会的費用を
財・サ−ビスの価格に適切に反映させ、市場機能を生
かして環境保全を図るため税制を用いて市場に内部化
しようという方法、すなわち、市場メカニズムを通じ
て各主体が最も経済的な行動を選択することにより、
最も少ないコストで最適な資源配分される方法もある。


伝統的に税の役割は財政収入確保にあり、たとえば、
消費税が買い控えを起こしたりするように、税が人の
行動に変化を及ぼすのは望ましくないとされてきた。
ところが、環境税は逆に人の行動に変化を起こすこと
を目的にした税である。
しかも、環境税は経済を撹乱するものではなく、むし
ろ、市場の資源配分の失敗を是正することができる。
すなわち、環境汚染を「外部不経済」として把握する
ならば、環境税はその導入によって「外部不経済」の
内部化を図り、資源配分の効率性を回復する手段とな
る。

環境税は税収入を目的とした税である必要はない。あ
くまでも、環境保全や環境汚染物質削減のインセンテ
イブとなるものでなければならない。したがって、税
収は副次的なものである。


  
環境税としての炭素税

地球温暖化防止対策として炭素税の導入が検討されて
いるのは、地球温暖化の原因である温室効果ガス(二
酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、
HFCPFC SF6)の
うち、二酸化炭素の排出推定量は温室効果ガスの
90
以上を占め その大半が化石燃料によるエネルギ−に
起因しているため、二酸化炭素排出の直接的原因とな
る炭素含有化石燃料(石炭、石油、天然ガス等)の利
用抑制が、最大の課題とされている。

ところが、わが国の税制には前記炭素含有化石燃料を
課税対象とする石油諸税がある。これらは道路整備の
ための特定財源として位置づけられ、ガソリン等の石
油の消費者は道路の受益者として受益者負担が課せら
れている。

しかし、二酸化炭素との関連で見るならば、二酸化炭
素を大量に排出する車のための道路整備が現状のまま
でよい筈がない。汚染者負担の原則からも道路整備だ
けの 特定財源であってはならない。地球温暖化防止
の見地からも石油諸税の再吟味が必要であり、炭素税
が二酸化炭素、炭素を課税対象とする以上、当然のこ
とながら、
5兆円に上る税収がある揮発油税、道路税
など、炭素税と同じ課税対象になる化石燃料に対する
石油諸税との調整が必要となる。


  
むすび

二酸化炭素を吸収する効果を考えれば、地球温暖化防
止の見地から森林のもつ役割は重要である。

ところが、わが国は森林を護る人が少なく、森林も荒
廃し そのため輸入材が
80%以上を占めるだけでなく
、外国の森林を乱開発する手伝いをすることにもなっ
て、その結果、外国の二酸化炭素をも増加させてしま
っている。

そこで、提案したいことは、二酸化炭素の吸収機能を
もつ「純粋公共財」としての森林に要する費用を、化
石燃料を課税対象とする炭素税の一部を財源にする必
要があるということである。


                   戻る