一橋大、東大教授を歴任した野口さんは、東大工
学部から大蔵省(現財務省)に入省し、大蔵省から
エール大学に留学して経済学博士を取得した。帰
国後退官し、一橋大学に奉職するという異色のエ
コノミストである。野口さんは超整理法、超勉強
法、超英語法など専門以外の分野でも知られてい
る。英語は相変わらずモノにならなかったが、野
口さんの発音に関する説は実践的で 説得力があっ
た。
さて、今回紹介する超税金学は野口さんの専門の公
共経済学の租税論を具体的に平易に展開している。
特に私が関心を持っている消費税については細かい
数字を駆使して議論を展開している。
野口さんもこの制度の欠陥を「免税業者」と「簡易
課税」を「益税」との関連で捉え、仕入税額控除よ
りもインボイス方式が望ましいとしている。
日本の消費税は平成15年の基準年から、対象とする
課税事業者の売上高規模が3千万円 から1千万円
に引下げられ、課税事業者が大幅に増加したことは
周知のことである。同時に簡易課税の選択も2億円
以下から5千万円以下に引下げられ
本則課税は街の普通の事業主にも容易に適用される
ことになった。ところが、本則課税事業者は仕入控
除の適用を受けるためには帳簿の記帳と仕入取引の
年月日、取引数量、取引額取引先の名称を記載した
証票を7年間保存しておかなければならない。保存
する帳簿は正規の簿記の原則、即ち、複式簿記の方
法によって、取引の記録をしておくことが望ましい
が、5千万円を越える本則課税のみの適用事業者で
さえも、これら適用要件を100%満足している事業者
がどれだけいるのか心もとない次第である。
消費税をさらにわかりにくくしているのは非課税取
引、即ち非課税売上、非課税仕入である。非課税取
引は土地や利子等に係るものは「消費」でないとい
う認識に基づいており、これ以外の非課税取引は政
策配慮による措置である。野口さんは特に社会保険
医療の対価、お産費用、介護保険サービスの対価、
社会福祉事業サービスの対価等が非課 税取引にな
っていることに読者の注意を向けさせる。というの
も、消費税の納税では、医療は非課税なので、医療
機関は納税事務手続は行わない。従って、前段階の
仕入税額控除は受けられない。
もしも、医療を課税取引とすると、医療機関も、納
税手続を行うことができ、そうなれば仕入税額控除
も受けられる。その際例えば、医療の税率をゼロと
すれば、仮に社会保険医療以外の売上がないとすれ
ば、医療に必要なすべての仕入が税額控除され、医
療費は消費税導入以前の水準に留められ、医療機関
が税負担することもないと指摘している。ゼロ税率
を導入した場合、売上の大部分がゼロ税率である事
業者は消費税の納税額が減るだけでなく、還付を受
ける。そのため、仕入に含まれている税額は正確で
なければならない。帳簿記入と証票等の保存だけで
は不十分である。データ操作が可能であるからと、
野口さんは言う。
野口さんの言うインボイによる場合は、業者間の相
互チェックが働き、インボイスに記載されている仕
入税額は納付済ということが確実である。
消費税の税率が二桁になったとき、必ず複数税率の
議論が出てくるという。消費税の税収を高齢化社会
の本格的な財源と考えて高税率を目指すのであれば
、生活必需品への軽減措置は避けて通れない。その
時それを実現させるための基本手段はインボイスで
あるとしている。
以上、野口教授の消費税について紹介した。私は消
費税が税率を目指すならば、税収に占める所得税の
割合低くするべきであると考える。そして徴収方法
に問題があるといわれているものの、課税の公平、
税収の安定性、確実性の見地から、日本では専門家
の間でしか議論されていない「支出税」についても
検討する価値があるのではないかと考える。
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