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カンボジア・農業支援プロジェクト(2008.5) 小林会員
  今年の1月に、カンボジアの農業視察に行ってまいりましたので、報告させていただきたいと思います。
 カンボジアと聞いて大勢の日本人は、壮大なアンコールワットや、クメール・ルージュの圧政、内戦の悲惨さなどを思い浮かべるであろうか。
 カンボジア料理、あるいはクメール料理という評判はあまり耳にしない。同じインドシナにある国では、たとえばスパイシーでたっぷりハーブの健康食というイメージのタイ料理、中国とフランスの両方の影響を受けたヴィエトナム料理が有名である。しかし、世界の3大スープとして有名なタイのトムヤムクンはカンボジアのソムロームチューユオンという料理が原型になっているといわれる。
 インドシナにはタイ・カンボジア・ヴィエトナム・ラオス・ミャンマー・中国の一部雲南省、またマレー半島にはマレーシア・シンガポール・インドネシアがあり、それぞれ独自の言語、文化、宗教があり食文化もそれぞれ異なったものがある。しかし、数多くあるエスニック料理の中に、同じような調理法のものが時々見受けられる。インドシナのそれらは、多くがカンボジア起源であるといわれている(しかしカンボジア人が言ってたので、真偽のほどはちょっとマユツバもある)。カンボジアは近年の悲惨な歴史の割には、思いのほか食文化が発達した国である。


 カンボジアは、インドシナ半島の南部に位置する国で、シャム湾(タイ湾)に面していて、海産物の消費も多い。東南アジア最大の大河、メコン川が国土を貫いて流れ下ることから、川の恵みもきわめて多い。数少ないカンボジアからの輸出品のひとつが、このメコン川で取れる淡水魚である。国土はメコン川が運んだ大量の土砂が堆積してできたもので大部分が平原である。バングラデシュのように沖積平野でないので、国中が水浸しになるような洪水は少ないものの、大平原であり、雨季には激しい降雨があることから治水は難しいとされる。そして、非常に暑い。カンボジアの暑気は4月のクメール正月にピークがあるが、40℃を軽く超える。雨季に入って雨が降り出すと少し気温が落ち着くものの、それまでは野菜の生産が難しいほどである。
 カンボジアはこのように気温と雨が多いにもかかわらず、治水が難しいことから灌漑が発達していない。したがって稲作は年に1度である。灌漑が発達していない理由は他にもある。カンボジアは組合活動ができない国といわれている。クメール・ルージュの圧政の元、民衆は密告主義によって厳しく取り締まられていた。その影響で、同じ地域のもの同士でも信用できないらしく、共同で仕事をするということができないということになっている。しかし、クメールルージュの影響の少なかった地域でも、やはり共同事業が難しいということで民族性ではないかという意見もあるが、そのような民族が、アンコール遺跡を作れるのかという大きな疑問が残る。
 そういうわけで、米の作は1回であるが人口密度がそれほど多くなく、水田面積も多いことから、米は大きな不作がない限りは量的には不足はないようである。しかし精米機の性能がよくないようで、破米のように精米してしまっている。レストランではいい米を出していたが、農家の家で出てきた米は食感に問題があった。しかし味はなかなかおいしい。


 そろそろ本題に入るが、これほどの食文化がありながら、野菜はほとんど生産されていない。カンボジア国内で消費される、ほとんどの野菜は隣国のヴィエトナム、タイからの輸入品である。肉類も牛肉以外の畜肉、鶏肉、アヒル肉、卵も輸入品が多い。農村部での視察も行ったが、庭先のちょっとした空き地に、キュウリやナスくらい植えておけばいいと思うが、めったに目にしない。ラオスの山奥の村でも鶏が走り回り、ローカル品種の豚がノシノシと歩く姿は当たり前のように目にするが、カンボジアではそれがない。灌漑がないことから、年に1回の稲作しかできないことが幸いし、田んぼが空く時期が多いことから、ウシの放牧は盛んである。そこで牛肉は輸出することができる。こんなことから、地方都市に行くと農家の日常の食事には野菜はほとんど出てこない。でてくるのは大量のご飯と、非常に塩辛い魚の干物、水草のような植物、食べられる木の葉などが添え物としてでる程度である。これで栄養状態が悪くないのであれば特に問題としないのかもしれないが、およそ半数の子どもの栄養状態は悪いあるいはほとんど飢餓とされる。これではいけない。


 カンボジアは世界的に見ても貧しい国で、そのような貧国が、経済的に非常な伸びを見せる、タイやヴィエトナムから食料を輸入することは正しい選択ではない。また、近年、バイオ燃料の流行で、キャッサバなどの栽培が非常に増えている。米のように大量の水、肥料は必要とせず、栽培初期には収穫も多い。乾燥地帯で、米がロクに取れない地域にあっても、キャッサバは栽培できる。しかも米よりずっと価格が高いことから、非常に栽培が増えている。しかしご存知通り、キャッサバは土地を非常に荒らす作物であり、輸出先である、タイのキャッサバ畑は既に、いい芋が取れなくなってしまっている。そこで、新しい栽培地をカンボジアに求めたことになる。
 タイやヴィエトナムなどは農業のきわめて発達した国で、さまざまな農作物を世界中に輸出するほどの力のある国である。こういう国がキャッサバなどバイオ燃料となる作物を植えても、それはそれほど大きな問題とはいえない。しかし、国民が十分に食物を食べられないようなカンボジアでバイオ燃料を栽培するのは、とても危険な感じがする。キャッサバが栽培できなくなり、土地があれて野菜の栽培も難しく、高価な化学肥料を輸入することもできず、高い野菜を輸入し続けることが国民の生活をより苦しめてしまうことは間違いない。


 そこで、今回、カンボジアにアルNGOグループ、カンボジア・フェデラル・ファーマーズ・オーガニゼーションと共同で、野菜栽培プロジェクトを開始することになった。まずは農家が十分に食べられるように、協力農家を募り、自家用の家庭菜園を充実させる。次に得意産物をいくつか作って、少量でも販売できる規模の作付けを行う。しかしここで水利の問題が出てくるので、ポンプくらいは支給しないといけない。
 同時に、販売先の確保であるが、野菜の輸入品が多いカンボジアにあって、カンボジア国内産の野菜の需要は少なくないことが調査でわかった。特に、高級レストランやホテルなどではカンボジア産の野菜を使いたがっている。またヴィエトナムとカンボジアは昔から仲が悪く、反ヴィエトナム思想から、カンボジア産の野菜を食べたい人も少なくない。
 ただ、共産主義のヴィエトナムと価格競争をしても負けてしまう。価格が低く抑えることが難しいというのがもっとも大きな問題であるが、もっとも大きな目的が、農家の自家消費用野菜のバリエーションを増やすというところにおいておけば、販売量がそれほど伸びなくても、細く長く続けることができよう。そのうち、うまく経営するものがでてきてくれればありがたい。一応はマーケット志向に計画を立てておくことは重要であると思われる。


小林 勉 瀬戸内KJK,アジア農村協力ネットワーク岡山代表

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