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■「死海」発電・淡水化構想(06-10-4電気新聞 ワールドレポート 中東)
  最首公司 (2006.10)
 レバノン、シリア国境の山岳地帯を発したヨルダン川は、新約聖書で知られるガリラヤ(ティベリアス)湖を経て「死海」に至る。地図で辿るとその先は紅海につながるが、海面下400メートル、世界で最も低い「死海」から川水は逃れず、滞留して水分が蒸発、身体が浮くほどに塩分が濃くなった。特殊な海藻を除くと、魚貝藻類も棲めず、人呼んで「死海」(Dead Sea)。
 この落差400メートルを利用した水力発電構想は新しいものではない。しかし、イスラエルとパレスチナの将来像として、リビア・カダフィ議長が「イスラティナ共和国」を提唱し、また政治的にも軍事的にも行き詰まったまま周辺3カ国(イスラエル、ヨルダン、パレスチナ)のエネルギーと水不足が深刻になるにつれ、現実味を帯びてきた。加えて世界銀行が米、仏、日本などの資金協力で、近く1500万ドルを投じて事業化調査を行うという。世銀ウォルツヴィッツ総裁は米ネオコンの代表格で、ブッシュ政権に近く、イスラエル政府にも影響力を持つ。


地中海から約100キロ
 「死海」は地中海岸のガザから直線距離にして約100キロメートル、紅海エイラトからは同180キロメートル。地中海(世銀は紅海るーとに関心)から「死海」まで水路を設け、400メートルの落差を利用して水力発電する。水路の半分、平坦地の50キロメートルを開削して運河を造り、発電・淡水化用資材を輸送した後は商業、観光用に利用すればトンネル部分は50キロメートルになる。これは青函トンネル(54キロメートル)より短く、英仏海峡のユーロトンネルと同じ距離だ。技術的にも資金的にも難しい事業ではない。
 落差400メートルを利用して1万KWの水力発電をする場合、必要な水量は毎秒3uだから1日に約26万u、50万KWとすると1日当り約1300万uの海水が「死海」に放流される。


発電後の海水を淡水化
 大量の海水が死海に流入すれば、周辺の自然環境を破壊し、死海名物の浮遊浴もできなくなる。そこで流入する海水を蒸留して「淡水化」を行う。流入量のほぼ1割が蒸発したとしても1日1200万u近くの淡水が得られることになる。
 「死海」を取り巻くイスラエル、ヨルダン、パレスチナ3カ国の人口は約1600万人。1人1日0.75uの水が供給可能となる。東京都の人口1200万人が使う水道水は1日約620万u(1人0.5u)だから、この3カ国が日本より乾燥地帯だとしても十分な給水量といえる。
 熱源は豊富な太陽エネルギー 
 問題は塩水淡水化用のエネルギー源だ。中東のエネルギー資源は石油や天然ガスだけではない。最大のエネルギー資源は太陽である。実は中東の太陽エネルギーを利用して発電・淡水化を大規模に進めようという計画はドイツを中心とするEU(ヨーロッパ連合)がすでに構想している。
 ドイツ政府気候変動諮問委員会がまとめた報告書によると、モロッコ、アルジェリア、リビア、エジプト、トルコ、イスラエル、そしてアラビア半島を含む環地中海地域での2050年での年間電力需要は現在の1・5兆kw時から約3倍の4・1兆kw時(現在EU全体で3・5兆kw時)に、水需要は3000億uから5000億uに増えるという。
 これを化石燃料や原子力で賄うと、地中海が温暖化し、CO2排出量も増加、欧州大陸に気象異変をもたらす。石油やウラン価格が上昇するだろう。「2025年以降は再生可能エネルギー電力の方が化石エネルギー電力よりも安価になる」と報告書はいう。そこで太陽エネルギーに恵まれたこの地域で「集光式太陽炉」を熱源とする大規模発電・海水淡水化事業を推進しようというのである。


いよいよ日本の出番
 日本では1980年代初め、政府の委託を受けた電源開発鰍ェ香川県仁尾町で「集光式太陽炉」(1000kw2基)で連続発電した実績がある。その後の原油価格急落で実用化は見送られたが、報告書は「日本には適地237ヵ所、570万kw(原発5基分)発電が可能」と指摘した。
 EUが構想する太陽炉も、電発が使用したガラス製大型凸レンズと反射鏡を使うようだが、より簡便で安価なものに日本製のプラスティック製フレネル(Fresnel)レンズがある。ガラス製に比べて軽量で、型押しするだけだから量産でき、価格もはるかに安い。海水発電も電発は沖縄での「海水揚水発電」で実証済みだ。
 現存の資源を各国が独自に確保しようとすれば奪い合いになるが、互いに協力して未来に創りだす資源は平和的に分かち合える。9月15日にはイスラエル、ヨルダン、パレスチナ大使が首相官邸を訪れた。アラブ、イスラエル双方の大使が同席するのは異例なことだ。中東和平に向けた一大プロジェクトで、いよいよ日本に出番が回ってきたようである。


「死海」周辺国の人口
・イスラエル  627万人
・ヨルダン   576万人
・パレスチナ  378万人
・合 計     1581万人


 
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