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■ このごろ都にはやるもの−26 水素と水で自動車を走らせる男(その2)(2006.10)
 鹿児島在住の渡邊賢弐さん(70)が、車検をとって公道を走らせているHAW(水素・空気・水)エンジン車は、日産の大型ワゴンを改造したものだ。3列ある座席の最後部を取り払って「水素タンク」(350気圧)を置いた。ここからエンジンに水素が送られる。
 ガソリンタンクには水を注入する。それもごく普通の水道水である。空気とともにシリンダーに送られた水素はプラグによって添加されると瞬時に爆発して高熱を発する。その熱で、別のノズルから噴射された水が蒸気になる。液体から気体に変化するときの膨張エネルギーでピストンを動かす仕組みは前回紹介した通り。


 「一度の水素充填でどのくらい走りますか?」「いまのところ150kmです。タンクを2本積めば300kmになる計算ですが、目標は1本で300kmです」
 渡邊さんが積む水素タンクの容量は約36uだから、1u当り4.2km走ることになる。「それも一概にいえません。坂道や積荷の重量、気象条件などによって変わりますから・・・」。それでも最新のFCV(燃料電池自動車)の1u当り3kmよりは効率はいい。
 問題はコストである。「エンジンを改良したり、水素タンクを装置したりで、改造費だけで1000万円かかります」と渡邊さん。いまのところ、知り合いの工場を借りて手造りだから1000万円もかかるが、量産化できれば安くなるだろう。水素はタンクごと購入しているが、これも水素ステーションが普及すれば安くなるはずだ。実は最初に渡邊さんに会った9月15日は、HAW車を説明し、東京で走らせるために有明の水素ステーションを使わせてほしいと、資源エネルギー庁に出向いた日だった。


 渡邊さんは「アインシュタインを尊敬している」という。アルバート・アインシュタインは高等教育を受けたわけでなく、独学でノーベル賞を受賞した物理学者だ。
 渡邊さんは幼児に両親を失い、祖父母に育てられた。高校を出て自衛隊に入り、そこで機械を学んだ。もともとラジオを組み立てたり、分解したり、機械が好きだった。
 自衛隊に勤務していたとき、オイルショックが起こった。「これからは石油でない、水素の時代だ」と思って除隊、HAWエンジンの開発にとりかかったという。
 「だからここまでくるのに43年かかりました」。白髪に覆われた渡邊さんは日焼けした丸顔をほころばせた。HAWエンジンが実用化されれば、自動車に限らず、船舶にも航空機にも使えるだろう。なぜこの技術が大手メーカーから無視されているのか、そこがよく判らない。(了)


 
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