会員掲示板へ※パスワードが必要です!会員掲示板へ※パスワードが必要です!原稿の投稿をするにはKJKネット利用方法事務局へ問合せ
 トップページ > 会員投稿ページ > 投稿
| 前ページに戻る | 会員投稿ページへ戻る | トップページへ戻る |
 
■二つのエネルギー権益問題の背景  最首公司 (2006.10)
1.イラン・アザデガン油田の減権でほっとする関係者
開発権益が75%から10%に
 10月初め、イラン政府はアザデガン油田開発の日本側当事者国際石油開発梶<Cンペックスに対して、同社の開発権益75%を10%に減率することを通告してきた。関係者が「残念!」というのは表向きの話で、内心はほっとしているのではないか・・・。
 アザデガン油田はイラク国境に隣接するフーゼスタン州にある。イラン・イラク戦争の主戦場になった地点だ。
 油田は1999年に発見された、ということになっているが、地下ではイラク・マジヌーン油田につながっていると噂され、油田の存在は早くから指摘されていた。それにしても、推定埋蔵量260億バレルという数字は、権益を失ったアラビア石油の6.5倍という巨大な規模である。
 インペックスは、油田が発見された翌年の2000年11月から交渉を開始し、02年2月に契約調印にこぎつけた。その契約は「バイバック方式」で、石油はあくまでイランの所有で、日本は生産量の75%を取得できることになっている。日本向け原油は契約4年4ヶ月後(06年6月)から日量15万バレルを、8年後(2010年)からは25万バレルが約束されている。日本側投資額は20億ドルと見積もられ、上記の原油引取りにより12年半で回収する見込みだった。


米国への気兼ねと自主開発比率向上の狭間で
 しかし、この間に起きたイラン核開発問題から日本側は米国の出方に神経を使い、現地の地雷撤去作業が遅れていることを理由に開発事業を見送ってきた。(もっとも、日本政府も当初は@日の丸原油が必要Aイランのウラン濃縮や再処理を禁止すると日本も六ヶ所村が機能しなくなる、との理由からイラン制裁論議に消極的だった)。
 イラン側は「地雷撤去は9割は済んだ」といって、何度か督促してきたが、日本側の腰は重かった。ここにきて、イラン側はついに減率という行動に出たわけである。
 もともと同油田開発は、2000年2月にアラビア石油の権益失効を招いた経済産業省の幹部官僚が、汚名挽回を期して強行したもので、肝心の買い手である石油精製会社などの意向は無視された形で進められた。精製会社は同油田の原油が重質油であり、市場性に乏しいと敬遠気味だった。
 それにもかかわらず交渉を続けてきたのは、同油田の輸入分が「自主開発原油」(別名「日の丸原油」)にカウントされていたからだ。政府は2030年の目標として、自主開発原油比率をいまの15%から40%に引き上げることを挙げている。アザデガン油田はこのうち6%を占める1油田としては最大の油田なのである。
 経産省は今回のイランの措置で面目を失ったが、関係者は政府も民間もほっとしているのが実情だ。アラビア石油の失権について誰も責任をとらなかった前例は、今回も「仕方なかった」で済まされることだろう。


2.サハリン2は“プーチン財団”建設の一里塚?
環境問題で突き上げ
 「サハリン2」はメジャーの一角ロイヤル・ダッチ・シェルと日本の三井、三菱の2大商社が権益を握る天然ガス開発プロジェクトである。このプロジェクトに対して、ロシア天然資源監督省が環境保護法に違反している、として操業停止を命じられた。このプロジェクトは「民営化」「自由化」を進めたエリツィン前政権時代に調印されたもので、当時から高級官僚買収の噂が内外でささやかれていた。
 一方、操業停止を命じられた外資側は、ロシア側が外資によるエネルギー資源開発を「国益を損なう」という理由でロシア資本を参加させたいのだろうと、推測している。「地下資源はその国の主権に属する」という国連資源決議は、途上国を中心に資源ナショナリズムの高揚した1970年代に採択されている。いまや100%外資による資源開発など時代遅れもはなはだしいが、それにしてもプーチン政権の“資源ナショナリズム”には裏がありそうだ。


外資企業を狙い撃ち
 サハリン2のあと、プーチン政権に狙われたのはロシア石油会社のルクオイルだからだ。同じロシア石油会社でも「ロスネフチ」や「タトネフチ」(ネフチはロシア語で石油の意味)の方は調査はしているが、操業はお構いなしのようだ。その違いはロシア政府の資本が過半数を占めているか、いないかにある。
 ルクオイルは、これまたエリツィン時代に民営化された元国営石油会社で、米国系石油会社のコノコ・フィリップスなど外資が過半数の株を所有している。
 同じく民営化で急成長し、一時はロシア最大の石油企業になったユーコス社は、こともあろうに同社社長ボゾルコフスキーがプーチンの対立候補として大統領選に出る勢いだったが、脱税の嫌疑がかけられて会社は解体、社長は逮捕、投獄された。
  プーチン大統領の任期は08年春である。「再選はない」と本人がいっている。これから問題になるのは、大統領退任後のプーチン処遇である。プーチンの後継者は、いまのところ下馬評に挙がっている人物はいずれもテクノクラートで、KGB出身の現大統領のような裏技はできそうにない。といって、プーチンに対抗するような候補者が現れることは、プーチン自身が許さないだろう。


親プーチンのメディア戦略

 プーチン直系の企業といわれる国営企業ガスプロムが、世界的なエネルギー価格高騰で得た膨大な利益を国家に還元するより先に「主要メディアの買収に使っている」(イラリオノフ前大統領顧問)のは、政権主導の世論づくりを狙っているからだ。ロシアのチェチェン政策の非を訴え、ロシア軍によるチェチェン人弾圧を指弾してきたロシア人女性ジャーナリスト、ポリトルスカヤさんが殺害された事件も、そうした政治的背景を考えないと単なる殺人事件で終わってしまう。


2008年退任後のプーチンの処遇
 プーチン大統領の再選がないとすれば、ソ連解体後、ロシアの威信と国力を高めた人物はなにをするのだろうか?
 プーチン氏の性格と事跡から観て、権力の座からそう易々と降りることは考えられない。引き続きロシアに君臨し、ヨーロッパや世界に影響力を駆使すると見るのが妥当だろう。とすれば、その地位とはなにか?
 これはまだモスクワっ子の噂の域を出ないが、退任後、国家慰労金を基金に財団をつくり、その長におさまる。その財団がガスプロム(天然ガスとパイプライン支配)をはじめ、ロスネフチ(石油)などの国営石油会社、アトムマッシュ(原子炉製造)、テネックス(核燃料製造・供給)など国営会社の株式を保有する、という構図が浮かび上がってくる。
 つまり、政府の指示、支配を受けずに、独自にロシア・エネルギーをコントロールすることによって、ロシアに君臨し、世界を動かそうというのである。
 仮に、もしそこにプーチンの狙いがあるとすれば、イランの核開発、わが国の核再処理や北方4島問題も違ったアプローチが有効になるかもしれない。その「有効なアプローチ」については、いずれ書く機会があると思う。(了)


 
→この投稿についての感想・ご意見は会員交流掲示板内ホームページ投稿原稿への感想」へ
 このページの上へ


Copyright(C)小島志ネットワーク All Rights Reserved.