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■このごろ都にはやるもの−29 核大国がほくそ笑む「核武装論」最首公司
米ロが仕掛けた罠
 アメリカとロシアが「核武装論」という罠を仕掛けたのは、今夏セントペテルブルグで行われた先進国サミットの直前、急遽仕立てられた米ロ首脳会談ではないか(詳しくは「財界」8月22日号114ページ)。
 日本国内に「核武装論」を起こさせよう。そうすれば、奴等がやろうとしている核燃料再処理を止めさせることができる。そううまくいくかナ。日本人は結構単純だから「ちょっと仕掛けりゃ乗ってくるよ」くらいに考えたかもしれない。なにしろプーチンという人は初対面のイスラエル首相との間でイスラエル大統領のセクハラの話がでると、「あの年でそんなにタフとは思わなかった」と冗談をとばす砕けたお人柄だし、ブッシュさんもかなり乗る方だ。
 ちょうどそこに北朝鮮の核実験! 案の定「北朝鮮にまでバカにされてたまるか」とばかり、核武装論が出てきた。閉じ込められていたものが、噴出したといっていい。これまでも中国による東シナ海での資源開発、韓国との竹島(独島)領有問題、ロシアとの北方領土問題などが起こるたびに、ひそかにではあるが核武装必要論が語られていた。今度はおおっぴらだ。アメリカに渡った政治家は「アメリカも理解を示した」と大見得を張ったが、当たり前だ。総理の了解があってのことだろう。アメリカでもとくにネオコンと呼ばれる伝統保守主義者は日本が罠にかかるのを待っていたのだから。


日本にその意志ありと誤解させる「核武装論議」

 ある国が核武装するか、しないかを国際的に判断する条件は三つある。@核武装する技術があるかA核武装する資金があるかB核武装する意志があるか、である。日本はこのうち@とAは十分持っている。問題はBだ。沖縄返還時に佐藤内閣が「核(兵器)を持たない」「核を作らない」「核を持ち込ませない」という「非核三原則」を表明して以来、国内での核武装論議は封印された。これを担保したのが憲法弟9条だった。
 日本が使用済み核燃料を再処理して、高純度プルトニウムを所有しても「非核3原則」と「平和憲法」がある限り「核兵器には転用しない」「発電という平和的利用に徹します」ということが、世界に向かって堂々といえた。
 ところが、核武装論は出てくるわ、憲法改正論が出てくるわ、防衛庁格上げ論が出てくるわで、世間の日本を見る目が変わってきている。「そーれ見たころか」と、日本のエネルギー自立を嫌うアメリカ、ロシア、EU諸国、そして日本の核武装を警戒する中国、韓国などが、これから始めようという青森県六ヶ所村の再処理施設にストップをかけるだろう。
 日本のエネルギー自給率はたったの4%だ。これを24時間の電気にたとえると、日本でできる電気はわずか58分、あとの23時間2分は外国からの電気ということになる。こんな国は先進国にはどこにもない。
 「いや、原子力をいれれば20%になる」という人がいるかもしれない。多分、いるだろう。だが、考えてもみなさい。その原子力発電用のウランは外国から輸入したものではありませんか?


日本のエネルギー自給率向上は核燃サイクル以外にない
 輸入ウランを軽水炉で使い、出てきた「使用済み核燃料」を日本原燃鰍フ再処理施設でプルトニウムを取り出し、これを加工して再度、原子炉用燃料にする。このシステムが完成すると「原子力の自給」ということになる。プルトニウム燃料の原子炉は高速増殖炉といって、「もんじゅ」のタイプだ。いまのところ「もんじゅ」の運転再開が延びそうなので、中間的な処理方法として、軽水炉で燃やそうというのが「プルサーマル」である。九州電力・玄海原発を筆頭に四国電力・伊方原発、中国電力・島根原発が実施に入る。これで少しだが、原子力によるエネルギー自給率が上がる。
 ところが、この「原子力の自給体制」を日本が手に入れては困る国がある。それぞれ思惑は違うが、アメリカ、ロシア、EU諸国などだ。アメリカは「日本がエネルギーと食料の自給率を高めたらわが国のいうことをきかなくなる」と、単純にいえばそういうこと。 
 ウラン燃料を日本に売り込もうしているロシアはもっと現実的だ。2年前、国営ウラン燃料供給会社テネックスの販売拠点としてテネックス・ジャパン社を東京に設けた。日本が再処理して、高速増殖炉を動かしだすと燃料市場が小さくなる。同じことは、いま日本に濃縮ウランを売り、使用済み燃料を再処理しているイギリスやフランスにもいえる。


 ちょうど3年前、IAEA(国際原子力機関)エルバラダイ事務局長が「核燃料国際管理案」を打ち出した。これを仕掛けたのはロシアである。このとき日本は反対した。六ヶ所村が動かなくなり、エネルギー自給率を高めようとする戦略が狂うからだ。そうしたらロシア・プーチン大統領は「国際核銀行」を提唱し、その事務局をロシアに置くことということをアメリカに承諾させてしまった。
 「銀行」がお金を貸し、一定期間経ったら利息をつけて返してもらうように、「核銀行」は兵水路用の低濃縮ウランを日本やイランなどに貸し、使い終わったら使用料をつけて返してもらう。「再処理する必要もありません」「日本がお困りの最終処分場をつくる必要もありません」ということなので。今春、SPサミットのシェルパ役として来日したプーチン大統領特使は日本政府に対してそういう趣旨の提案をしている。
 日本にとっては嬉しい話だが、それは「ロシアは信頼できる」という条件つきだ。2年前のグルジア、昨年のウクライナへの天然ガス停止事件をみても判るように、ロシアはエネルギーを21世紀外交の道具にしようとしているのだ。
 そのあと、つまりSPサミットの直前、今度はIAEAのメンバーであるイギリス、フランス、オランダなど6カ国が「再処理の実績のある国が核燃料を供給しよう」といい出した。これには仲間はずれされた日本、オーストラリア、ブラジルなど、将来、核燃料を有力輸出商品とみている国が猛反発した。


 それから間もないこの2月、ブッシュ大統領は突然、「核エネルギー・パートナーシップ構想」(GNEP)を打ち上げた。いま現在、核燃料をつくれる国だけを「核燃料提供パートナー」とし、「核燃料受容パートナー」に低濃縮ウラン燃料を提供しよう、という構想だ。さぁ日本はどっちの「パートナー」になるのか、慌ててアメリカに聞きにいった。
 SPサミットが開始される前夜、プーチン、ブッシュ両大統領は急遽会談、「米ロ原子力協力協定」を結んだ。伝えられた内容は「アメリカが供与した核燃料でもロシアが引き取ることができる」というものだが、この協定がいかに泥縄式であったかは、前文に「こんご詳細については交渉をするが・・・」とあることだ。なんでそうも慌てて協定を結んだのか、インド、パキスタンの核実験問題、イスラエル、イランの核武装問題、いろいろあったろうが、要は「国際管理」の名の下に米ロ両国で「核独占体制」を敷こうということなのだろう。
 だとすれば、日本は一日も早く六ヶ所村の再処理施設を本格稼動させ、「プルサーマル」を定着させて「もんじゅ」再開につなげ、最終処分場の位置決定をしなければならない。この「エネルギー自立コース」に乗り、国際的に日本の核は平和利用と評価が固まるまで「核武装論」は禁句なのである。
06年11月2日記


 
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