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■このごろ都にはやるもの−52 原子力発電と地震2話 最首公司 (2007.10)
 1973年10月、田中角栄元首相がソ連を訪問、ブレジネフ書記長との日ソ首脳会談で数々の協定が結ばれた。この協定に基づいて1976年8月、土光敏夫経団連会長を団長とする「土光ミッション」がモスクワを訪問して、日ソ経済関係は一挙に盛り上がった。
 1979年7月、有沢広巳原子力委員会委員長を団長とする「有沢ミッション」が訪ソした。このとき「原子力の現場を見たい」という日本側の要請に、ソ連は当時建設中だったアルメニアの原子力発電所を案内した。原子炉はソ連標準型のVVBR400(PWR=出力40万KW)だった。
 日本側は耐震設計について質問したが、ソ連側は「通常の耐震構造で、とくに地域的な条件を勘案した設計はしていない」ということだった。日本側のアドバイスで、その後、ソ連から研究者や技術者チームが日本を訪れ、懇切丁寧な説明と必要な情報、技術資料を得てアルメニア原発に適用したそうである。
 それから9年後の1989年12月、アルメニアは大地震に襲われた。高層建造物はほとんどが倒壊し、2万5000人が犠牲になった。2基の原発はびくともせず、緊急停止装置が働いて運転は止まったが、所定の点検のあと、再稼動した。
 「ソ連側は日本の耐震技術は凄いと、日本を賛美した」と、日本駐在が30余年に及ぶ元駐日ロシア大使館経済担当公使で、現在、日本原子力産業協会顧問ボリソフ氏が語ったのは、新潟県中越沖地震の後だった。
 「サイシュさん、あの地震で東京電力の柏崎原発は無事でした。想定以上の地震だったにもかかわらず、原発が無事だったということに、ロシアは改めて日本の耐震設計に感心しています」と、ボリソフ氏は続けた。
 ロシアはプーチン大統領のトップセールスで、イラン、インド、サウジアラビアなどに対し、原子力による発電、海水淡水化を勧めている。石油精製と天然ガス開発で共同事業に乗り出すサウジアラビアとは、今年初めにプーチン大統領とアブダッラー国王との間で「原子力開発協力協定」が結ばれている。
 ロシア原子力勢が想定する最強のライバルは仏のアレバ社で、同社と対抗するには日本と組むしかない、というのがロシアの秘策のようだ。日本の技術力と製造力で原子力発電所をつくり、かつ運転を任せ、ロシアが燃料供給(この場合はリース方式になるだろう)を担当する、という日ロ共同事業を考えている。
 ロ・サ原子力協定が結ばれた直後の2月、ロシアから数人の原子力関係者が日本を訪れ、室蘭の日本製鋼所と柏崎原発を見学した。その一行にかのデリパスカ氏がいた。世界最大のアルミ会社を経営し、ロシア第3の石油会社ロスネフチを手に入れ、ロシア沿海州にアジア市場を狙ったアルミ工場と、その電源として原発を建設し、余剰の電気を北朝鮮に輸出しようしている人物である。
 日本製鋼所見学の後、「あの会社を買収できないだろうか」といったそうである。柏崎原発では東電の運転管理にいたく感心していたという。今度の地震で柏崎原発が健在であったことを、誰よりも評価しているのはこの人物かもしれない。
 日本が海外に原子力発電を輸出する場合、最大の問題はウラン燃料の供給保証と事後処理だろう。それをアメリカが果たせるとは思えない。原子力発電が他の火力発電と違うのは、使用した燃料の後始末をきちんとしなければならないことだ。ロシアは再処理施設があり(バイカル湖近くのアンガルクスに大工場を建設中)、再処理したプルトニウム燃料を燃やせる高速増殖炉があり、そのあとに出てくる、どうしようもない放射性廃棄物の最終処分場も用意できる。これがロシア原子力発電売り込みの最強の武器である。
 ロシアが中東産油国の電力・淡水不足を原発で補う前に、日本が先行して現地に原発の受け皿を用意しておく。これをいまからやらねばならない、というのが私の考えだ。
 「原子力発電と地震2話」といいながら、ロシアの話が長くなってしまった。もう1話は手短にしよう。
 福岡市に本社をベンチャー企業の青年社長が訪ねてきて、雑談した折り、たまたま地震の話になった。「あるデパートの社長さんに当社で販売している地震予知システムの導入を提案したら、30秒後にくる地震を知らされても、なにもできないじゃないか、といわれました」という。
 「ところが、NHKが10月から予知放送を始めるようになったら、百貨店協会が採用することになり、その社長さんの予知能力が試されるようになりました」と、落ちがついた。
 九州の電力会社が、原発に設置するそうである。大地震が来て原発が止まり、予備の電源も動かなくなったとき、いちばん困るのは発電所出入り口の門が開かなくなることだそうだ。消防車も救急車も出入りできなくなってしまう。そこで、大地震の襲来を予知したら直ちに門を開ける、というシステムを取り入れるそうだ。これなら30秒前の予知でも十分役に立つ。30秒という時間でなにができるか、週末、散歩しながらでも考えてみよう。(10月26日記)

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