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■このごろ都にはやるもの−57 もう一つのノーベル賞クラスの技術開発 最首公司 (2007.12)
 京都大学の医学者がヒトの皮膚から「幹細胞」をつくりだす技術を開発して、はやくも「ノーベル賞もの」と話題になっている。ほぼ同時に同じような発表をしたアメリカに負けてはならないと、政府も多額の資金援助をすることになった。
 実はそれに匹敵するのではないかと独自に評価している技術がある。ときあたかもバリ島でCOP13の閣僚会議が始まったところだ。タイミングがいいので紹介しよう。


 (財)若狭湾エネルギー研究センターが「集光式太陽炉」を研究していることは前回(このごろ都にはやるものー56)で紹介したが、その新宮秀夫所長(はからずも京都大学名誉教授から連絡があって、「太陽炉の熱でCO2を分解し、カーボンにしてしまった」という。そのことを報じた11月21日付け朝日新聞福井版のコピーも見せられた。一読して「これは凄いことだ」と思った。なぜ、朝日たるもの、この大ニュースを福井県版で収めてしまったのだろう。私のセンスでいえば、全国版第一面のトップ記事だ。
 なにが凄いかというと、いまバリ島でもいわれている議論は「これからのCO2排出量をどう減らすか」というもので、直ちに排出削減しても全力疾走中の車がすぐには止まれないのと一緒で、地球温暖化をとめることはできない。温暖化を止めるには、いま大気中に溢れているCO2をどう短時日のうちに始末するかである。
 もちろん、その研究は進んでいる。その一つが数日前、NHKが紹介したものだが、CO2を超臨界状態(自己流に解釈すると、気体液体の分かれ目状態)にして、地中に埋設しようという技術だ。大勢はCO2を固体のドライアイスにして地中、あるいは海中に埋設する構想だが、これだと再び気化してCO2となり、地上に戻ってくる可能性もある。
 新宮方式は、同じ固体でも鉛筆の芯や電極のような、カーボンにしてしまおうというのである。それもただのような「太陽炉」の熱を使ってだ。
 原理はこうである。まず、鉄鉱石(FeO1.5)を太陽炉(2000℃)で熱して酸素(O)を追い出す。実験ではO1.5がO1.13に変化して、Oが0.02減っている。空気を遮断した容器に入れ、CO2を吹き込むと、鉄鉱石は減った分だけCO2から酸素を奪ってしまう。酸素を奪われたCO2はC,つまり炭素となって鉄鉱石に付着する。
 鉄の酸化・還元現象は高温を使えばできることは判っているが、高温のエネルギー源に石炭を使えば逆にCO2を増やしかねないし、電気を使えばコストが合わなくなる。だから比較的簡単にできるドライアイス処分が大勢を占めるようになったのだが、ただ同然の太陽熱を利用したところが、新宮方式の特徴であり、ユニークなところだ。


 数年前、ある研究会で初めて新宮氏に会って名刺を交換したとき、氏の名刺が薄いので裏をひっくり返したらカレンダーの厚手の紙を再利用されていたので、びっくりしたことがある。「節約こそ最大の省エネ」という氏の哲学は新技術開発にも「なるべくコストがかからぬように」生かされている。
 「幹細胞」の研究が実用かされるにはまだまだ開発しなければならないように、「CO2炭素化技術」も実用化までには難問を解決しなければならない。しかし、安全に処理できる目処がついた意義は大きい。
 もし、「幹細胞」のように研究費が助成され、問題解決が一挙に進めば、石炭火力発電所は、この「CO2炭素化プラント」を併設することで運転でき、これだけでも石油価格の値上がりを押さえ込むことができるだろう。炭素排出権取り引きが活発になれば、プラントの付加価値は一段と高くなる。他の追従を振り切るにはいまこの技術を確立することだろう。
 さて、来年は「アフリカ・サミット」が横浜で、「エネルギー・サミット」が青森で、そしてハイライトの「環境サミット」が北海道で開かれる。「アフリカ・サミット」では「太陽鍋」を寄付したいし、「環境サミット」では「CO2炭素化技術」をアピールしたい。これはこれは、忙しくなってくるなぁ。 2007年12月12日記

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