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■今年の課題  山本 克郎 (2007.1)
 「いのちを大切に生きる」という事が生命体であるヒトのあるべき本来の生き方だと思います。健康第一です。今年私は79歳になりますが、これまで生き方や考え方の遍歴とその中で起こったいろいろな事柄を振り返ってみました。


 一昨年の5月に健診で「糖尿病」と宣告され、改めて病気と向き合う機会に恵まれました。糖尿病とは何か。なぜ、糖尿病になったのか。俄かに猛勉強をしました。必要に迫られてする勉強は実りの多いものでした。夏休みの時期を利用して入院すると、病院ではさらに脳梗塞・心筋梗塞と宣告されました。
 私はこの一連の病気が生活習慣病であり、エネルギーの代謝異常(摂取カロリーと消費カロリーとのアンバランス)を長期間継続した事によって、血管や神経がボロボロになって様々な障害を作り出した症状で、その回復のためには生活習慣の改善が不可欠だと考えました。
 長い時間をかけて引き起こした症状を、長い時間をかけて快方へ向けた暮らしへ変えること。「食・動・息・想」等の毎日の暮らし方、生き方を変えることだと気付きました。退院後は一切薬を使わないで、3ヶ月、半年、一年と時間をかけて改善してきました。このように、自分なりにどう生きるべきかを考えてこの1年半生きてくると大変学ぶところがありました。


 もう62年前になりますが、私は1944年16歳の時に陸軍士官学校を志願し、入校しました。間もなく、敗戦でその誤りに打ちのめされました。「本当のことを知る」、「正しいこととは何か」を学ぶことが戦後の課題でした。やがて、本当らしいこと、正しいことを求めて「唯物史観」に辿り着きました。しかし、これもまた、私は誤りではないかという事に気がついて、そこから、再び正しいと本当に思えるものを求めてきました。漸く「生命史観」とでも言うべき理念に辿り着いたように考えています。
 「経済学」はアダム・スミス以来、今日の社会経済システムを形成する上で理論的支柱の役割を担ってきましたが、この経済学の基調をなしているのは「功利主義」「市場経済理論」です。ここに問題があると思います。
 20世紀に社会経済は科学技術の発展に伴って著しい成長と発展を遂げました。しかし、それは同時に地球環境に多大な影響を与え、人間社会の秩序は深刻な混迷の中にあり、21世紀には、環境破壊や戦乱が止まるところを知らない状況に陥っています。それを批判して登場した筈の「唯物史観」「社会主義」も20世紀の終わりごろには自らその誤りを実証して退陣を余儀なくされました。


 この間、現在の矛盾を解決するべく、1970年代に、シューマッハーの「スモール・イズ・ビューティフル」や「ヒューマノミックス」が誕生しました。これらの経済の理論は一時注目されるかに見えましたが、功利主義、市場経済の理論の壁を突き破るパワーが十分でなく主流に登場出来ないままで21世紀を迎えました。
 20世紀には科学技術が著しい進歩を遂げてきたにも拘らず、事態を改善する道には至りませんでした。否むしろ科学技術の進歩の故に多くの問題を招来し、悲惨な現実に直面していると思う事も少なくありません。
 地球と人類社会が直面している現実を考えれば、自然環境の破壊は極限に来ており、すでに異常気象が多発し始めています。同時に、国際関係は戦乱が続き、対立が緩和する目途が立っていません。経済成長、経済発展を遂げていると言われながら、治安は悪化して、犯罪は凶悪化し、社会秩序やモラルは退廃の度を深めています。人々の暮らしの環境、人々の健康は、自ら創り出した「飽食と利便」に犯されて、広く深く生活習慣病が浸透し蔓延して、やがて多くの人々の健康を脅かし、暮らしを破壊すると危惧されます。
 年々歳々、社会の変化のスピードが速くなり、周囲の変化に鈍感になって、自分のことで精一杯、他人の事など構っていられない風潮が蔓延してきました。全体的に変化が速過ぎ、視野狭窄に陥って大局観が失われているように思います。ここで、私たちは立ち止まって、何処から来て、何処へ行こうとしているのかを考えてみる必要があります。


 今人類はこの現実を直視して、これまでの、ものの見方、考え方、感じ方を問い直し、生き方と価値観を問い直すところに来ているように思います。
 デカルト哲学を基礎にした近代科学は目覚しい発展を遂げたかのごとく信じられていますが、「科学の呪縛」に人々は捉われて真理や真実を見失っています。ルネッサンスが「神の呪縛から解放」だったとすれば、第二のルネッサンス、現代のルネッサンスとして「科学の呪縛からの解放」を求める時代です。
 真理や真実の拠って立つ基盤は宇宙とその誕生、地球とその誕生にあります。われわれ人間は地球に生命が誕生したことに由来しています。その延長線上にヒトがあり、人間はその制約やルールの上にこそよりよく生きられるのです。
 ヒト(人間)は生命の誕生に始まり、その後38億年の生命進化の道程を経てきました。生命進化の過程、生命史を究めれば、人類社会のあるべきシステムを見出し、創造するヒントが得られると思います。その掟、生命の進化のルールを知り、学ぶ事です。生命が自らを取り巻く環境と環境との適合やバランスを保つ事が重要です。生き物(生命体)がこれを無視したり、逸脱すれば、必ず衰亡を招くことはこれまでの生命史が示しています。人間も例外ではありえません。
 「生命史観」に立った「ヒューマノミックスの理論」の確立が求められているように思います。幸い1970年代頃から生命科学の目覚しい発展が多くの真理や真実を提示してくれています。生命科学、さらに中村桂子さんたちが提唱する生命誌の立場に立って、人類社会が拠って立つ社会システム、社会規範、モラルを構築していく必要があると考えます。
 その主要な理論的な柱は「ヒューマノミックス」「人間主義の経済学」と思います。それは日本の現実が、世界の現実が直面しえいる泥沼のような事態に行く手を示す光明をもたらし、人々に生きがいや生きる意味を共有し、様々な問題解決への手がかりを与えて、破綻への道から再生への道へ世界を救い出す「セオリー」になると思います。


 今年は、小島志ネットを通じてヒューマノミックスの議論を発展させたいと考えます。幸い小島先生が会長をされたヒューマノミックス研究会の後藤隆一先生からご協力のお手紙を頂きました。小島先生が目指しておられた「人間主義の経済」の集大成とその実現へ向けて歩み出す年にしたいと念願しています。小島志ネットの発展と活躍に期待を寄せています

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