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■このごろ都にはやるもの−40「トイレをつくる人に感謝」最首公司 (2007.4)
便所掃除は一番偉い人
 今日はトイレの話をするぜ。トイレといやぁ思いだすのは戦時中の汲み取り式。あれには参った。便器も床も木製だったから2年もすると腐ってきた。間が悪いとおつりがはね返ってきた。最悪だったのは、汲み取りを頼んだ農家に不幸があって、便壺があふれてきたときだ。男どもはみんな近くの松林へいって用をたしたもんだ。
 戦後、町からバキュームカーが来るようになってほっとした。おふくろはよく作業員に心づけを渡していた。そういやー、おふくろは口癖のようにいっていた、便所を掃除する人が世の中で一番偉いんだから、ばかにしてはいけないよって・・・。
 ぼっとん式トイレもいいと思ったのはトルクメニスタンに行ったときだ。ソ連解体直後で、石油・ガス省へいったとき、トイレにトイレットペーパーがない。ソ連体制というのは、分業式でトルクメニスタンではトイレットペーパーをつくってなかった。体制崩壊で他国でつくられるペーパーがこないもんだから水洗トイレが使えなくなった。水洗トイレってのは不便だぜ、トイレットペーパー抜きでは成り立たねぇんだから。
 トイレの目の前に古雑誌が吊るされていて、これをちぎって使えというんだ。「使った後は必ず屑籠へ」とある。トルクメニスタンという国は乾燥したところだから悪臭はしなかったけど、先人がおいていった色つきの紙を見ていると、便意もとまってしまった。


「トイレのないマンション」
 よく原子力発電は「トイレのないマンション」といわれるが、うんちの処理場も処理方法もみつからない、ということだろう。石炭発電ならガスは炭酸ガスになって大空にばら撒かれるし、固形分の「灰」は埋立用や道路材に使われる。石油や天然ガス発電もガスは空気にまじって目につかずに消えていく。
 だけど原子力のうんちには強い放射能が入っているから石炭灰のようにはいかないってわけだ。まぁ、引き取り手がないのもよくわかるが、かなりの分が原子力発電所の中に溜まってるってぇ話だ。
 ところがヨ、いま原子力発電所に溜まってる放射性のうんちにはまだ有効な燃料分が残っているそうだ。このまんま捨てるのはもったいねーってんで、再処理してもう一度燃やそうということになった。青森県六ヶ所村につくった再処理工場がそいつだ。いってみりゃぁ核のし尿処理施設。わしは青森県さん、六ヶ所村さん、よくぞ施設を作ってくだすった、有難てぇことだと思っているよ。
 問題はサ、再処理する過程で出てくるうんちと、再処理した燃料を燃やした後で出てくるうんちの処理だ。まぁ、処理方法はガラス固化体に封じ込めて放射性物質が溶け出さないようにしてよ、数百メートルの地下に埋設することにしているが、その「場所」が見つからねぇって話。
 「原発はもうやめよう。その代わり電気は使わない」というなら、いま溜まっている放射性廃棄物もなんとかなるそうだ。たとえばよ、かなりのおあしを払ってロシアなんぞに引き取ってもらう手もあるってことだ。
 けどよ、政府は昨年10月に「2030年以降も発電電力量の30〜40%は原子力にする」って「原子力立国」を閣議決定したそうじゃねーか。だからまだまだ放射性廃棄物は出てくるぜ。
 これで核のうんちの処分場探しが一大事になった。まぁ、おあしもたくさんもらえるってんで、いくつかの自治体が名乗りを挙げようとしたそうだが、そのたんびに横やりが入ってなかなかうまくいかねぇ。そこで手を挙げたのが高知県東洋町だった。
 ところが、案の定、反対の動きが出てきた。橋本なんとかってぇ知事が、これはまア多選批判を封じるためのパフォーマンスだと思うが、上京して政府に反対を申し入れた。そうか、おめぇさんもテレビで見たかい、あの大げさな芝居を。地元でも町長リコールの動きが出てきたそうじゃねぇか。 


おれたちもマンションの住民
 なんだかんだというけどサ、おれたちだってトイレのないマンションに住んでいるんだ。だけどナ、本物のトイレと違って原発のトイレについちゃぁ誰もひと事と思っちゃいねぇか。でなければトイレをつくろうってぇ人を応援するならとも角、引き吊り下ろそうなんてするわけがねぇ。
 考えても見ねぇ、日本のエネルギー自給率はたったの4%だよ。おれは前にもいったことがあるが、4%という自給率は24時間の電気のうち自前の電気は58分しかないってぇこと。あとの23時間2分は外国から買っているわけよ。アメリカは自給率が66%だから16時間はてめぇの時間、イギリスは102%もあって余っているから原発はいらねぇが、温暖化防止に向けて原発は続けるといっている。ドイツは25%だから6時間が自前の電気だ。でもよぅ、ドイツもフランスもイタリーも高圧電線やガスパイプラインでつながっているから自給率を心配することはねぇってわけだ。自前の電気が1時間もねぇってのは日本だけ、寂しいもんだ。


マンションを出てから反対してよ
 もし、わしが処分場に反対してな、原発も反対するならばだヨ、住み慣れたマンションを出てってからやるぜ。1日に58分だけ電気を使わせていただく生活を選んでナ、そこで「処分場反対」「原発反対」ってやるよ。それが筋だろう。夏は涼しい、冬はあったけぇーマンションに住みながら、原子力で涼しくしたりあったかくするのは反対ってぇのは筋がとおらねぇ。いまの若けぇのはどうかしらんが、昔の人は筋をとおした。
 わしだったらそうするぜ。わしは学生時分に北海道の開拓地で電灯1個だけの入植者の家に世話になったことがある。ほぼ自給自足ってぇ生活だ。
 でも、もういけねぇ。還暦をとっくに過ぎて、冬は暖房、夏は冷房がいるし、テレビも観てえ。こうしてパソコンでフラストレーションを解消する癖も捨てられねぇ。だからオレはトイレを作ってもいいという東洋町のみなさんに感謝してるんだ。おめえさんもそうは思わねぇかい?
2007年4月17日記

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