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■このごろ都にはやるもの−43「平岩さん逝く」など3編 最首公司(2007.5)
◎平岩さん逝く
  東京電力竃シ誉会長の平岩外四さんが22日亡くなられた。昨年11月20日電気新聞記念シンポジウムでは、車椅子に乗ったままだったが元気そうだった。記念講演の塩野七海さんが「私が一人でお話しするよりは、会場の皆さんからのご質問に答えた方が・・・」といいながら会場を見渡し、最前列にいた平岩さんを指して「会長さん、なにかご質問は?」と問いかけた。すると平岩さんは「ローマ人の物語」最終編の読後感と合わせて、ローマ文明衰退の原因について質問された。
 5月15日にある電力界首脳と会った際、平岩さんが入院され、重篤だということを聞いたが、それにしてもこんなに早く逝かれるとは思わなかった。

 2度目のオイルショックでエネルギー業界が混乱していた1981年、私は当時東京電力社長の平岩さん、東京ガス社長の村上武雄さん、それに通産省企画室長山田勝久さんと相談して「イスラム経済研究会」を立ち上げた。座長に上智大学の緒田原涓一教授にお願いした。通産省傘下の「現代研究会」(嘉治元郎氏)の分科会という位置づけで、年一度の総会では、合宿しながら各分科会が調査・研究報告を行う習いで、私にとっては大変、勉強になった。
 この研究会が最初に現地調査を行ったのが1982年のイランだった。このときは帰国後、平岩、村上両社長に直接報告した。以後、中東、ソ連、中央アジア、パレスチナ、スーダンなどにイスラム経済研究会の「現地視察団」は、他に先駆けてエネルギー現場を調査することになる。
 ところが、その後平岩さんに会うといつも「このごろ海中の方はどうですか?」と声をかけられる。1987年に私たち海仲間が集まって滑C中居住研究所を設立、平岩さんに個人株主として出資を仰いだ。
「海中居住」という途方もない夢を、平岩さんも共有してくれたのだ。その前兆はあった。愛媛県宇和島出身の田中和栄氏がつくった「海底ハウス 歩号1世」を西伊豆三津浜の沖に沈設するとき、海中での電気工事を渋る関東電工鰹タ津支店に、当時の押本関電工社長(東京電力出身)に声を掛けてくれたのが平岩さんだった。因みにこの「歩号1世」はいま、お台場の「船の科学館」に展示されている。
 平岩さんの名声と信用は、当時の電力、都市ガス業界の首脳をも株主に誘引する力をもっていた。関西電力・小林庄一郎、中部電力・松永亀三郎、中国電力・多田公煕ら9電力会社の社長と、東京ガス・安西邦夫、大阪ガス・大西正文の両都市ガス会社の社長さんらが株主名簿に名を連ねてくれたのである。
 この会社に寄せられた夢は、数年前、関係者の奮闘も及ばず「見果てぬ夢」で果てた。そのことを平岩さんには直接説明する機会がなかった。「海の方はどうですか?」平岩さんの声がいまも聞こえるような気がして、私は身がすくむ思いである。


◎米国のイラン攻撃が秒読み?
 米国のジミー・カーター元大統領が5月19日、アーカンソー州地方紙のインタビューで「ブッシュ大統領は史上最悪の大統領」とこき下ろした。さすがノーベル平和賞のカーターさん、いうべきことをいったねと思ったら、21日には全国ネットのテレビ放送で「撤回」とまではいかないまでも、「私の発言は注意不足で、誤解を招いたかもしれない」と、苦しい弁解をするようになった。
 その翌日の22日、カーター大統領の出身母体である米民主党が、あれほどこだわっていた「イラク撤兵期限付き」の予算案を、突然、撤回し、条件を削除してしまった。
 なにかおかしい、と思っていたら同じ日の米テレビABCは「特ダネ」として、ブッシュ大統領がCIAに対し、「イランに対する限定的攻撃を許可した」というニュースを流した。なーんだ、これが妥協の産物か・・・。
 民主党は共和党以上にイスラエル贔屓が多い。ヒラリー女史も無論のこと、もう一人の次期大統領の有力候補、オバマ上院議員も、イスラーム名をもちながら親イスラエルである。イスラエルにとって、最大の脅威だったイラク・フセイン政権はすでにない。残るは核開発を進めるイランだ。同じ「イスラームの核」でも、パキスタンの核兵器はいまのところイスラエルにとっては脅威ではない。パキスタンはイスラエルから遠いせいもあるが、ムシャラフ大統領は親米路線をとっており、それが政権の生存条件でもあるからだ。
 イランのアフマドネジャド大統領は公然とイスラエル抹殺を唱えている。そんなイランが核の平和利用に徹するとは、米国もイスラエルも信じてはいない。米国の与党共和党と野党民主党が一致できる政策は、当面、イラン攻撃しかない。それが武力攻撃になるのか、北朝鮮のように金融封鎖になるのか、あるいは要人殺害になるのかは判らない。
 米国との融和路線をとるイラク・イスラーム政権の実力者、イラク・イスラーム最高評議会議長アブドルアジーズ・ハキーム師が、4月に米国テキサス州の病院で検査を受けた後、かつての亡命先イランに戻って入院した。ガンの疑いがもたれている。師は滞在中の米国で得た米政府の意向をイラン首脳部に伝えた、と思うのが自然だろう。
 そのイランでは最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長が最高指導者ハメネイ師に辞表を提出した(21日付けアラブ紙)という。現状では「イランの安全が保障できない」ということだろうか。動物的なカンを働かせば、米国のイラン攻撃は秒読みに入った、という気がする。そうならなければいいがと祈るけど・・・。


◎いよいよあの男の出番?
  5月22日のウォールストリート・ジャーナル(WJ)は、米国アルコアから敵対的買収提案を受けていたカナダのアルミ大手アルキャン社が、提案を拒否することになった、と伝えた。
 アルコアは長い間、世界最大のアルミ会社として、国際アルミ市場に君臨してきた。それが、世界第2位に落ちたのは、昨年8月、ロシアン・アルミ(ルスアル)社が同じロシアのアルミ・メーカー、スアル・グループを買収したからだ。この時点で、年間生産量355万トンのアルコアは、同371万トンのルスアルに追い抜かれたのである。スアルの買収額は33億ドルといわれたが、これを即金で支払ったのがオレグ・デリパスカ氏である。同氏の資産は推定78億ドルといわれる。
 WJによると、「アルキャン側はあらゆる手段を講じてアルコアに対抗する。アルキャンがアルコアを買収する逆提案もありうる」と報じている。となると、いよいよデリパスカ氏の出番かもしれない。
 私が彼を注目するのは、常に表に出ず、蔭でロシア政府要人や経済界の大物を操っているように見えるからだ。氏の素性、経歴についてはいずれこのエッセーで書くことがあるかもしれないが、いま、日本のエネルギー業界が注意しなければならないのは、原子力発電に関係する企業の買収を目論んでいると思えるからだ。
 4月の原産協会総会でキリエンコ原子力相が明らかにしたロシア沿海州での原子力発電所建設計画は、実はデリパスカ氏のアイデアである。アジアのアルミ市場は今後、急成長する、とデリパスカ氏はみている。アルミ精錬には周知の通り安価な電気が大量に必要だが、水力発電は立地地点が少なく、原子力発電に頼らざるを得ない。ところが、ロシアはチェルノブイリ事故以来、発電用大型炉を建設していない。日本の三菱重工、東芝、日立、石播、日本製鋼所といった有力メーカーの協力が不可欠である。
 「必要なら買収する」というデリパスカ氏は、友好的か敵対的か判らないが、日本のエネルギー関係企業に接近してくることは間違いない。東芝は昨年、58億ドルでウェスティングハウス社を買収したが、アルミと原子力の相性の良さを考えると、38歳という若さを誇るデリパスカ氏が大きな手を打つことが予想される。プーチン大統領とは極めて緊密といわれるだけに、当分、彼から目が話せない。 
 デリパスカ氏については「このごろ都―39」でも触れています。
関心のある方はhttp://homepage2.nifty.com/saishu/ をご覧下さい。(5月23日記)

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