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■「戦後レジューム」ってなに? 磯浦 康二(2007.9)
 07年9月10日に第168回臨時国会が開会し、安倍総理の施政方針演説が行われました。「戦後レジュームからの脱却」と「美しい国」が安倍総理の二枚看板でしたが、今回の演説には「戦後レジューム」は、冒頭で1回だけ、「美しい国」は2回しか出て来ませんでした。参院選の結果と、内閣改造で「安倍色」を薄めたという印象は衆目の一致するところでしょう。


 ところで「レジューム」って、どういう意味かご存じですか? 私が友人たちに「レジュームの意味を知ってる?」と聞いたところ、ほとんどの人は答えられませんでした。若い人も年配の人も、数十人に聞いてみたのです。
 私も実は、始めはピンときませんでした。確か「アンシャン・レジューム」という言葉を歴史で習ったことがあるな・・・そのレジュームか?」と思って辞書を引いてみました。やはりそうでした「フランス語ではancien regime、英語はancient regime」で、「古い」「(政治)体制」ですから「旧体制、旧秩序」の意味になります。つまり「戦後レジューム」とは「戦後の体制」「戦後の秩序」という意味になります。


 言葉の意味が分からない人が多いということは、総理が言っている「戦後の体制からの脱却」の意味も具体的に何を指すのかわからない人が多いのではないでしょうか?
 わけのわからない「カタカナ語」を使って平気でいる総理もさることながら、これからの国の方針が変わるというのに、分からなくて平気でいる国民の意識も不思議ですね。

 平成12年1月に文化庁が行った「国語に関する世論調査」によれば、85%の人が「国語が乱れている」と回答しており、また「国語に関して困っていること」は何ですか?という問いに対して、最も多かったのは「外来語・外国語の意味がわからない」という答えで、45%でした。
 一国を代表する総理大臣が、多くの国民が分からず「困っている」外国語を平気で使い、分からない国民も、何となくわかったような気になっているのか? 初めから総理の言うことなんか問題にしていないのか? よくわかりませんが・・・? どなたかおわかりになりますか?


 では「戦後レジュームからの脱却」の意味するところは、本当は、なんなんでしょうか? 残念ながら総理からの明確な説明はないように思います。
 戦後になって、戦前と変わったことは沢山あります。一番大きく変わったのは「主権在民」となったことでしょう。それまでは「天皇主権」でしたので、それに戻そうというのでしょうか?
 「男女同権」も戦後(新憲法になって)の変化としては重要な事項です。これを戻そうというのでしょうか? また、戦後の大きな変革の一つは「農地解放」です。それまでの「地主」と「小作人」の関係が大きく変わりました。これを戻すのはちょっと大変でしょう。
 教育も変わりましたね。旧憲法下の「天皇のために死ね!」という「皇国民教育」から、新憲法になってから、教育基本法第1条(教育の目的)にあるように「人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」と変ったのです。
 そういえば「教育基本法」は昨年12月に改正されました。どこがどのように変わったか、いろいろありますが、まず「前文」では「真理と平和を希求する・・・」が「真理と正義を希求し・・・」と変わりました。教育の根本を定める法律の、しかも全体にかかる「前文」で、誰にでも共通の認識を持つ「平和」という言葉を、100人いれば100通りの意味になる「正義」という言葉に変えたのです。そういえば、「大東亜戦争」中も、その前の「支那事変」の時も「正義」という言葉がしきりと使われていました。
 また「公共の精神」とか「伝統を継承し」などの言葉も追加されました。そして、第5条(男女共学)「男女は、互いに敬重し、協力し合わなければならないものであって、教育上男女の共学は、認められなければならない」は、全部「削除」されました。
 また、それまで「国家権力」によって教育が「不当に支配されないように」という意味を持つ第16条を、「国」が「教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない」として、「国」が教育に対して直接関与することを積極的に行うという形に変えられました。
 また、何といっても「戦後レジューム」の最大のものは「憲法」です。安倍総理は「憲法改正を私の内閣でやる」といって「国民投票法」を通しました。


 では、どのように憲法を改正しようというのでしょうか? 自民党の「憲法草案」が安倍総理の目指す「新しい憲法」なのでしょう。長くなりましたから要点を見ることにします。
 前文に「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し・・・」という文言が入っています。
 また「9条」が話題になることが多いのですが、第1項の「平和主義」はそのままですが、第2項が「自衛軍」という項目になり「自衛軍を保持する」ということで、「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる」という文言が入っています。
 これで「海外派遣」や「治安出動」が堂々と行えるようになりますね。
 極めつけは第7章(司法)第76条のBに驚くべき項目が設けられています。
それは「軍事に関する裁判を行うため、法律の定めるところにより、下級裁判所として、軍事裁判所を設置する」というのです。
 「軍事裁判所」を設けることは「法の下の平等」という現在の司法制度を根底から覆すばかりでなく、全く戦前の「軍国主義国家」への回帰としか言いようがありません。
 なるほど分かりました、安倍総理の「戦後レジュームからの脱却」とは、「アンシャン・レジューム」(旧体制)へ復帰することだったんですね。皆さま、ご油断召さるな!


 ここまで書いて投稿しようとしたら、な、な、な、何と「ボクちゃんはやめる!」のだそうです。
「エッ!なんで?」と誰でも思ったに違いありませんね。テレビでみんなが言っていたことは、
「何でこのタイミングなの?」ということでした。参院選で大敗北をしても「ボクちゃんやめない!」といって内閣改造をして、臨時国会が開会して「施政方針演説」をして、いよいよ「代表質問」が始まる10分前、まさに「本会議開始」のベルが鳴り始める寸前に「ボクちゃんやめる・・・」というのですから、みんなびっくりですね。「体調が悪い」とか「カネの問題を週刊誌にすっぱ抜かれそうになった」とか、言われていますが、つまるところ、「総理の器でない人」が総理になってしまった、ということですね。
 「何という無責任な」と言っている自民党議員がいますが、そういう不適格な人を総裁に選んだ責任は「自民党議員」全員にありますね。これで、自民党はかなりガタガタになり、益々信用を落とす可能性がありますが、もしそうなれば「自民党をぶっ壊す」と言った小泉元総理の意向をくんで、本当に「自民党をぶっ壊した」小泉さんの良き後継者で功労者ということになります。(笑)
 いずれにせよ、「アンシャン・レジューム」(旧体制)への復活の野望は一旦潰えたわけですが、「憲法を改正して、戦争をやりたい」という勢力はまだまだ沢山いますから油断することはできません。
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