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■「血の月曜日」からの湾岸産油国  最首公司 (2008.10)

「なぜNYより悪いのだ」
イスラーム世界が5日間の「断食明け休暇」を終え、仕事に就いた10月6日(月)、
湾岸産油国の証券市場は激震に見舞われた。カタールとドバイ(UAE=アラブ首長国連邦)の両証券市場は約7%、クウェートが3.6%の下落し、サウジ市場は9.81%も暴落した。
震源の米ニューヨーク(NY)市場が7%下落して、NYタイムス紙はこの日を「暗黒の月曜日」と呼んだが、サウジ紙は「なんでサウジ市場がNYより悪いのだ」と、この日を「血の月曜日」と名付けた。
アブダビでは「2大銀行が資金難から合併するのではないか」といった噂が飛び、クウェートでは大損した投資家や証券会社が政府に補償を求めてデモ行進を行った。


政府が銀行と預金を保証
 しかし、さすがオイルマネー潤沢の産油国、金融機関救済の措置は早やかった。カタール政府は国富ファンドから53億ドルを用意して、流動性が悪化した銀行の株式20%を購入すると公表し、UAE政府は「政府資金250億ディルハム(約6兆8000億円)を金融機関に注入する」と決定した。
サウジ政府は国王自ら「サウジ資本の銀行はすべて保障し、その預金者を完全に保護する」と声明を発した。さらに100億リヤル(約3000億円)を用意して、月収7000リヤル(約21万円)以下の低所得層や寡婦、子どもを抱えた離婚女性らに月額15万〜135万円を今後9ヵ月間支給すると発表して、国民の不安を消し去った。


湾岸諸国は元気だ!?
「株価暴落で5年間続いた不動産ブームを終焉した」(サウジ・ガゼット紙)という見方がある一方で、カタール製鉄会社は14億ドルを投じてバハレーン製鉄所の増設を決め、ドバイの開発会社はシリアにショッピングモールと高層住宅建設に10億ドルを投資すると発表した。
ドバイの政府系開発会社ナキール社は「高さ1000メートル以上、世界一のタワーを中心とする新市街を建設する」と語り、その総予算は「380億ドル」と明かす。
ドバイでは別の政府系デベロッパーが「ドルジュ・ドバイタワー」を建設中(9月現在160階、688メートル)で、最終的な高さは明らかにされていないが、それより高いタワーを10年かけて建てるというのだ。湾岸産油国は一見、元気そうに見える。


原油価格の目標80〜100ドル?
 年初から棒上げしていた原油価格は、7月中旬1バレル150ドル台に迫ったのをピークに、一転して石段を転げ落ちるように急落、「血の月曜日」のあとは半値の70ドル以下に落ち込んだ。
 OPEC(石油輸出国機構)は12月の総会を待たずに、油価対策の緊急総会を10月24日に開き、11月生産分から日量150万バレル、5.2%の減産を決定した。しかし、その後も油価反転の兆しは見えない。強硬派のイランやベネズエラはさらなる減産を主張しており、今冬の気象予報が「暖冬」となれば、12月総会でもう一段の減産があるだろう。
いまや自国会社の株価が油価に連動することが明らかになり、これまで油価引き上げに慎重だったサウジ、UAEなども証券市場の動静をみながら80〜100ドル台で落ち着くまで協調減産するかもしれない。


イスラーム経済の構築を

 イスラーム法は存在しない物の取引きや仕事を伴わない利得(賭博や金利)を禁じている。NY市場を舞台にした今回の油価急騰落騒動は、「実需を伴わない投機によるもの」と、サウジなどイスラーム産油国は先進国に対して投機的取引の禁止・規制を呼び掛けてきた。
エジプト生まれの指導的イスラーム法学者カラダウィ師は、自身で番組を持つアル・ジャジーラ放送で「欧米資本主義は破綻した。いまこそイスラーム経済の構築を!」と檄(げき)を飛ばしている。
折しも「イスラーム開発銀行」と「イスラーム諸国会議」首脳の緊急合同会議が、サウジの商都ジェッダで開催される。会議の結果を踏まえて、サウジ・アブダラー国王が11月15日ワシントンでの緊急金融サミットで独自の改善策を提案するだろう。(08年10月29日 電気新聞掲載)


P.S.ニュースのおまけ
イランとベトナムが石油と米の物々交換
イランとベトナムが石油と米のバーター貿易が交渉されている、とオマーンの新聞が伝えた。量は不明だが、価格はトン当たり400ドル(1キログラム40円)といわれている。
東南ア最大の産米国タイはこれに刺激されて、商業省は近々、幹部をイランに派遣して、両政府間の直接取引による「コメと石油の物々交換」を申し入れる。イランはアメリカの経済制裁を受けて、石油決済にドルを使っていないため(日本との決済は円貨)、ドルを介さない「物々交換」を歓迎している。タイのとっても問題点は、ベトナムが設定した価格で、タイ米の基準価格はトン当たり630ドル(1キロ当たり63円)と、バトナムの売却価格に対して5割高という点にあるという。


中国がロシア石油を直接購入
 モスクワでの「ロシア・中国経済フォーラム」に出席したロ・中首脳は、「中国はロシアに石油開発資金として200〜250億ドルの借款を与え、その返済は石油によって行う」と約束した(モスクワ・タイムス10月28日)。ロシアはこのうち、ロスネフチに6割、トランスネフチが4割を配分するという。(詳細は省略)


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