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■GCC気まぐれニュース 2008年12月1日 最首公司 (2008.12)
GCC(湾岸協力会議)研究会の世話人をしている最首公司です。折にふれてGCCを中心に、日本のメディアでは伝えられない中東の出来事を発信しています。
あっという間に12月になってしまった・・・そんな感じの師走入り。早速ですが「GCC気まぐれニュ−ス」をお届けします。 GCC研究会世話人 最首公司編


1、 サウジアラビア国王「原油価格の適正価格は75j」
 サウジ・アブダッラー国王は11月29日付けクウェート紙のインタビューに答えて凡そ次のように語った(11月30日アラブ。ニュース)。
@ 原油価格は7月の1バレル147jから一挙に3分の1の価格に落ち込んだが、今後の石油供給安定のためには75jが適正な価格だろう。将来に対する不安感が世界中の消費を落ち込ませ、石油の価格も押し上げた。各国とも石油に代わるエネルギーを開発しているが、いまのところ満足するようなものは見つかっていない。石油はまだまだエネルギーの主力であり続けるだろう。
A 経済危機はこれまで何度も経験しているが、今回は通信やメディアの発達で、欧米の危機感が世界に瞬時に広まってしまった。例えば、アメリカで起きたことがサウジアラビアでも起きるような報道をする。欧米のメディアはいたずらに他国民の危機感や不安感をあおるような報道は控えるべきだ。
B サウジアラビア経済は強靭であり、依然、好調である。昨日は株価が9.51%も戻している。国の財政も石油の余剰収入を当てにしたものではない。総額2000億jの5カ年計画を変えるつもりはない。
C (G20金融サミットの際、アメリカが1200億jの支援を要求した、というクウェート紙の報道について)アメリカからそうのような要求をされたことはない。米欧やアジアの大国が直面している経済危機は巨大な経済機構の中で起こっているもので、われわれの助けを必要とするものではない。あの報道はまったくのでたらめだ。彼らの貿易量はとてつもなく大きい。その規模は1兆j単位で、われわれの数十億jといったものではない。彼らはいっさいわれわれ(GCC)の援助を必要とはしない。専門家は18ヶ月でこの危機は克服されるといっているではないか。
D (国王主導で開催された国連の異文明間対話会議について)こうした試みは継続して行われなければならない。宗教、宗派が違っていても、その目指すところは「平和」「安定」「安全」である。そこでは多くの点で一致し、見解が分かれたのはごく一部に過ぎなかった。私はそれぞれが宗派の壁を乗り越えて、お互いの相違点に耳を傾けようではないか、と呼び掛けた。
 編者注:サウジ国王が75jという具体的な数字を挙げたのは珍しい。OPECは12月総会で減産幅を決めるようだが、価格目標値は75jというアドバルーンを揚げることで産消双方のコンセンサスを得ておこうという狙いか?


2、「70j以下では投資できない」カタール副首相
  カイロで開催されたOPEC会議で、カタールのアティア副首相兼エネルギー相は「原油価格が70j以下では新規投資はできない。われわれはぎりぎり70jが必要だ」と語った(カタール紙)。


3、「欧米は自分たちの危機を他国にすり替えようとしている」イラン大統領
  カタール開かれていた国連開発援助会議で、アフマドネジャド・イラン大統領は11月29日、「西側のリーダーは自国が招いた経済危機を“グローバル危機“と称して他国に移し替えようとしている」と、次のような演説をした。
 先進国は自らの過ちで生じた損失を他国の犠牲によって補償しようとしている。彼らは原油高に寄って3000億jが米国から産油国、アラブ産油国に奪われた、といってきた。彼らが進めた経済は、人間性や正義を無視し、最大の利益を追求することが目的だとする資本主義であった。現下の経済危機は、いまや資本主義が基本的に限界にあることを示している。
 われわれは資本主義に対抗して、「最大利益を求めない、人道と正義に基づく新たな独立した金融・銀行システム」を構築しなければならない(テヘラン・タイムス、カタール紙ほか)。
 編者注:イラン大統領はアラブ産油国の本音を代弁しているのだろう。アラブ紙も好意的に取り上げている。


4、サウジ、仏で海賊対策強化
 カタールでの国連開発援助会議に出席した仏サルコジ大統領は、帰路、サウジアラビアに立ち寄り、アブダッラー国王と会談した。両首脳は現下の世界的な金融不安に対して共同で立ち向かうほか、ソマリア沖の海賊対策を強化することで一致した(カタール紙)。
 編者注:サルコジ大統領はまめな人である。こうしてちょくちょく産油国を回りながら原子力や武器などの商談の地ならしをしている。


5、23日にモスカワで産ガス国フォーラム
 ロシア・プーチン首相らが主導する「産ガス国フォーラム」(GECF)が、12月23日、モスクワで開かれる。
参加国はアルジェリア、イラン、ナイジェリア、UAE、カタール、ベネズエラ、リビア、インドネシアのOPEC加盟国はじめ、ボリビア、ブルネイ、エジプト、マレーシア、トリニダード・トバゴにロシア。ほかに赤道ギニア、とノルウェーがオブザーバーとして出席する。これら16カ国のガス埋蔵量は世界の73%、生産量は42%に達するので、影響力は大きい。
 牽引役のプーチン首相は「ガス輸入国は価格協定を結ぶのではないかと心配しているが、それは杞憂に過ぎない。われわれはカルテル組織をつくるわけではない。産消双方が情報を共有し、適正な市場をつくっていくのが、目的である」といっている。
すでに「規約案」は承認されているので、今回の「モスクワ・フォーラム」では具体的な組織づくりや事務局の構成などが話し合われるだろう。
 編者注:16カ国のうち、イラン、ナイジェリア、インドネシア、エジプト、マレーシアの5カ国は「D−8」(イスラーム開発途上国会議)の加盟国で、結束が固い。ロアイの強引さに対抗できるのはこのグループだろう。


6、イェメンLNG基地着工 来年6月に第1船
 11月29日サーレハ大統領が出席してイェメン初のLNG輸出基地建設式典が行われた。順調に工事が進めば09年6月に第1船が出航できるという。
 イェメンLNGプロジェクトは80年代から検討されてきたが、埋蔵量やインフラ整備上の問題点が指摘されて、なかなか具体化されなかった。05年8月にフランス資本との合弁で計画が具体化し、作業を進めてきた。
 計画ではSafar, Mareb両ガス田から322km離れたアラビア海Balhaf港までガス・パイプラインを建設、同港に液化工場がつくられ、今後20年間にわたり、年間670万dが輸出可能という。当面は北米、韓国に輸出する計画だが、新規需要があれば受け入れるそうだ。総工費は37億j。
 イェメンBalhaf港は他の中東LNG基地よりも「アジア市場にも欧米市場にも近く、経済的に有利であるだけでなく、安全保障上からも優位にある」と、イェメン政府はセールス・ポイントをアピールしている。
 編者注:イスラム経済研究会の調査団として、1996年にこの国を訪問した折、、当時のイリヤーニ副首相兼外相が私たちを迎えてくれた。先方の熱意にもかかわらず、このときは機が熟さなかったというか、カタールで手一杯だったせいか、イェメン・プロジェクトは実らなかった。アラビア半島唯一の非産油国で、他の国からは独特の目で見られていたが、これで”アラブのルーツ“イェメン人も経済的に豊かな国になることを祈りたい。


7、年初に「アラブ鉄道」入札
 ヨルダンの首都アンマンを基点にイラクーシリアーサウジアラビアを結ぶ「アラブ鉄道計画」の入札が来年1月12日にアンマンで行われる。この鉄道計画は「国連西アジア経済・社会開発会議」で承認されたもので、10~15年計画で実施される。
 「アラブ鉄道」の名の通り、サウジ石油や石油製品、ヨルダンのリン鉱石などのほか、貨物、乗客も輸送という多目的鉄道。
 建設予算は総額43億JD(ヨルダン・ディナール=約6450億円)で、うち28億JD(約4200億円)がレール購入など鉄道建設にかかわる費用、ヨルダン国内の鉄道距離は1086kmで、これに必要な用地買収はヨルダン政府の負担で確保しなければならない。その費用は3億5000万JD(約525億円)と見積もられている(11月30日ヨルダン・タイムス)。
 編者注:サウジアラビアは独自にマッカ(メッカ)−マディーナのイスラーム2大聖地とジェッダを結ぶ「巡礼鉄道」建設を始動させる。第1次大戦中、アラビアのロレンスに破壊された「巡礼鉄道」(ヒジャーズ鉄道)はマディーナからユネスコ遺産登録された古代遺跡マダイン・サーレを経てアンマンに連絡していた。
10年前、編者はバスで巡礼鉄道沿いにマダイン・サーレまで走ったが、随所に鉄道車両やレールの残骸が見受けられた。当時使われた機関車や駅舎が復元され、鉄道ファンには垂涎の観光資源だといたく感心したことがある。
巡礼鉄道の復旧は1970年代から話題になっていたが、いよいよ軌道に乗りそうだ。次は本物の鉄道に乗ってみたい!

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