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■「地球を救うために」(「財界」新年特大号掲載原稿) 最首公司 (2008.12)

世界同時不況のなかで地球を救うために
軍事費が増えるほど環境がよくなる仕組みを創ろう         
エネルギー・環境ジャーナリスト 最首公司


 米国発の金融危機が国際的な広がりをみせ、世界に不景気風が吹きまくると「地球環境問題」は片隅に追いやられ、「温暖化対策」よりも「不況対策」に関心が集まる。20世紀の歴史は2度の「大戦」がいずれも経済恐慌に誘発されたことを教えている。このままでは各国とも内向きになり、市場確保や自衛のための軍事費が増え、環境対策はおろそかになるだろう。そこで、軍事費が増えれば環境対策も進むという仕組みを考えた。
 「環境問題」は、これまで「経済成長」との対比で語られてきた。温暖化ガス(代表例がCO2)の排出量を減らすことは、すなわち経済成長を減速、鈍化させる、という図式である。「京都議定書」で先進国が温室効果ガス削減を約束し、開発途上国が外されたのは、「経済成長が阻害される」という理由からだった。だが、「地球環境」にとっても「生物」にとっても「経済成長」よりも、もっと深刻な問題は「戦争」である。

 
地球環境にとって最大の敵は戦争である
 このことを最も早く指摘したのは、スウェーデン首相だった故パレメ氏だろう。同氏はイラン・イラク戦争の調停に取り組んでいた1986年2月、両国との武器取引を進める国の諜報機関によって暗殺された。氏はかねがね「環境にとって最大の敵は戦争である」と主張し、それを実践しようとイ・イ戦争の和平国策に当たっていた。その試みは押し潰され、「戦争」は「地球環境問題」から切り離された。
以来22年、世界は第1次湾岸戦争(1990年イラク軍がクウェート侵入)、第2次湾岸戦争(1991年多国籍軍によるイラク進攻)、ロシア軍のチェチェン軍事作戦(1994年)、フランス、中国の核実験(1996年)、インド、パキスタンの核実験(1998年)、米英主導国連軍によるアフガニスタン戦争(1991年)、米英軍のイラク戦争(2003年)など、地球と生物を破壊する戦争や核実験が頻発した。
しかも、戦争の主力を担ったのは「京都議定書」で温暖化ガスの排出削減を約束した先進国(米国は途中で離脱)であり、核実験した中国、インドといった国々はCO2排出量で先進国に迫ろうとしている。石油、石炭、天然ガスなどCO2の発生源とされる化石燃料の消費や森林破壊、砂漠化などは問題視されるのに、戦争や核実験による温暖化の影響は無視されている。


増え続ける軍事費を利用する
 ストックホルム国際平和研究所によると、2002年の世界の軍事費は7940億ドルに跳ね上がった。それまで年率2〜3%の上昇だったが、前年の米国同時多発テロを受けて米英軍がアフガニスタンに侵攻、米軍事費が前年比10%増になったのが主因だ。
04年は史上初めて1兆ドルの大台に乗り、1兆400億ドル(うち米国は4550億ドルで世界の12%)、07年には1兆3390億ドル(133兆9000億円)で、うち米国は史上最高の5468億ドルで世界の45%を占めるに至った。 
パルメ首相が暗殺される前年、1985年のCO2排出量は世界で182億dだった。その5年後の1990年は201億dに増え、2000年には226億d、05年は266億dと増え続けている。排出量の主役は米国、中国、ロシアの3国が常に上位3位を占め、インドがこれに迫っている。いずれも核保有国であるのが目につく。
これらの数字は、軍事費が増えるとCO2排出量も増え、軍事費の多い国、核実験をした国ほどCO2排出量が多いことが示している。そこで考えられるのは、軍事費の多い国ほど地球環境資金を多く負担する、という仕組みだ。


軍事費を増すほど環境に貢献できる仕組み

 軍事費の一定割合を国際的な環境予算、例えば「地球環境基金」に拠出してもらう。軍事費を増やせば増やすほど、「基金」を通じて地球環境改善に“貢献”することになる。ポスト京都議定書の一つに「軍事費の一定割合を『基金』に拠出する」を加え、すべての国連加盟国が約束するのだ。
 仮に世界の2007年の軍事費1兆3390億ドルの1%が2009年の「基金」に拠出されたとしよう。基金の総額は133億ドル(1兆3300億円)になる。世界中の砂漠化防止にかかる費用87億ドル(国連砂漠化防止条約)に充当して十分だし、その残金で、「安全な飲料水と下水処理を必要とする人への施設」(90億ドル=ワールド・ウォッチ研究所)の半分の人たちに施設が提供できる。たった1%でこれだけのことができるのだ。
初年度は1%だが、これを毎年1%づつ増やしていく。いつか人々は軍事費に税金をつぎ込むくらいなら、地球環境基金やテロの温床とされる貧困撲滅のための投入しようと、考えを変えるだろう。この運動は納税者自身が立ち上がらなければならない。


「平和」に環境価値あり
 「環境」と「平和」を考えるとき、もう一つ見落としてならないのは、「平和の環境価値」である。「環境」を説きながら「戦争」をする。そういう欺瞞に満ちた政策を暴くためにも、「平和」が地球環境にとって大いなる価値をもつことを認識しなければならない
日本は第2次大戦後、高度経済成長の過程で温暖化ガスを噴出し、森林、水田を放棄、荒廃させてはきたが、「地球環境最大の敵」である戦争はしなかった。原子力発電を進めたが、核兵器はつくらず、核実験もしなかった。
 戦後60余年、戦争せずに平和を守ってきたことは、地球環境悪化を防いだという点で評価されなければならない。「平和」に「環境価値」の得点を与え、「戦争」に「環境破壊」の減点を課さなければ「右手で環境を説き、左手で戦争する」という「エセ環境論」をこれからも許すことになる。
日本と同様、この60余年間、戦争をしなかった国は北欧を始めたくさんあるし、憲法を改正して軍隊を解散し、軍事予算をもたないコスタリカなどは「平和の環境価値」を積極的に認めるに違いない。
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