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「食の安心安全は食料自給をめざす農業の再生が基本」 山本克郎 (2008.4)

 食の安全 昨年、食の偽造や偽装に関する事件の報道が相次ぎ、今年は年初から中国産の餃子事件等が大々的に報道されて輸入食料の安全性が俄にクローズアップされました。
昨年、これまでにない急激な原油高が起こり、それを理由に石油元売各社の大幅な値上げが相次いでガソリンや軽油の値上げとなりました。それに影響されて、今年はすべての原材料、燃料の値上げを理由にした消費物価、各種サービス料金の値上げが国民経済に波及し、庶民の暮しに影を落としています。
なぜ原油の値上げが行われたか、その理由をマスコミは、「中東の緊張が高まったから」と伝えていました。原油を値上げしなければならない特段事情(掘削の経費とか人件費の高騰など)があったのではなく、原油を値上げ出来る状態だったから値上げをしたのです。OPECは原油の必要量はあり、増産しても価格は下がらない。投機資金としてオイルマネーが原油市場に流入したからで、当面増産する考えはない。取るべき選択肢は減産か、現状維持としています。原油高はその後も上がりを続けて下落する目途は立っていません。


 1973年の第1次石油ショックの時は3ドル/バーレルだった原油価格が12ドル/バーレルに4倍に跳ね上がって世界経済に衝撃を与えました。1978年第2次石油ショックでは、さらに32ドル/バーレルへ跳ね上がりました。しかし、その後原油価格は下がり「原油価格は一時的には上がっても、基本的には1バレル=15〜20ドルに落ち着いている」という考えが前提になっていたようです。冷戦が終わり、国際関係の枠組みが変わってきました。
21世紀になるとそれが崩れ、原油価格は長期的には上がっていくだろうという見方が圧倒的になりました。中東の緊張激化に伴って原油高が進み、アフガン戦争に続く、イラク戦争の泥沼化する中で原油の急激な値上りしていきます。50ドル、60ドルから80ドル90ドル、更に100ドルと止まるところを知らない上昇になり、今では110ドルを超え、値下がりする気配がありません。
これによって世界にはいろいろな影響が出ています。当然、私たちの身近な暮らしにも大きな影響や変化が出てきました。が、日本政府は「慎重に見守る」と言うだけで、具体的で有効な対策が示されていません。何ら打つ手なしなのでしょうか、それでは、私たち個人としても、何とかこれに対応する方策を考えなければなりません。それはガソリンの値上げに止まらず、一斉に他の生活物価の値上げが進んできます。価格だけではありません。食の安全・安心が揺らいできました。潜在化してきた「食の安全保障」の問題がクローズアップされてきました。


 一番気懸かりなことは、ブッシュ大統領が打ち出した、玉蜀黍からエタノールを造るというバイオエネルギー政策です。これによって、飼料用の玉蜀黍が燃料用に回されて値上がりし、大豆、小麦の生産から玉蜀黍へ転作がされ、そのために大豆、小麦が値上がりしたばかりか、今度は玉蜀黍も更に値上がりするなど、食料が投機の対象となってきました。
穀物価格の高騰によって、穀物需給に新たな異変が起きてきました。このために、アフリカの難民に向けた国連の救援活動が提供する食料を半減せざるを得なくなり、重大な危機に見舞われていると伝えています。価格の高騰だけでなく、豪州に見られる大干魃など異常気象による作柄の低下や不安定、中国、インドの新興工業国家の急速な経済発展がもたらす食料需要が穀物需給に大きな変化を与えています。
今年1月スイスのダボスで開かれた経済会議で提起されたレポート「グローバル・リスク2008」は「食料安全保障が世界的な重要課題となる」という警告が発せられています。


 日本は「食料自給率が僅か39%」、「人口が1億2千万人」という世界で類例を見ない国です。毎年3兆円を超える農林水産省予算が使われて、農業振興をやってきたのに、年々自給率が低下の一途を辿ってきました。戦後経済復興・経済成長の中で一貫して過疎過密の流れが農山漁村から人口を収奪し続けました。この間過疎対策法が何度も制定されて、過去に70兆円に上る過疎対策費が消費されたといいますが、過疎は止まず、いまや至るところにみられる「限界集落」が消滅寸前になっています。
北海道は戦後北海道開発法が作られて、今日まで膨大な開発投資が行なわれてきました。しかし、北海道は札幌市周辺とそのほかのごく一部の地域以外はすべて過疎地域です。
北海道は、戦後の食糧危機の時代に食糧基地として高く評価されたこともありましたが、自然に恵まれた広い北海道も今は、農業人口は減少の一途を辿って、農業者の高齢化は目を覆うものがあり、後継者難が深刻です。耕作放棄地も年々増加し、農家戸数は激減してきました。これでは、自給率が低下するのは当然です。
 戦後63年の経過を振り返って、何故、食料自給率が低下してきたか、どうすれば、食料自給率を回復させられるか。これは、現下、日本の安全保障にとって最も本質的な問題だと考えます。最も本質的なこの問題に、日本の政治・社会・経済・産業・教育・福祉・医療などの問題解決の手がかりがあると思います。人々の暮しの安心安全をどう実現するか、そうした社会のあり方を実現する政治の目指す方向と新しい道を探求することが望まれていると考えます。


 小島志塾札幌例会では「食料自給率は何故下がり続けたのか、どうすればあげられるのか」というテーマで5月17日に行ないます。KJKネットの会員の皆様からご意見をお寄せ頂きたいと思います。


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