ランニング研究:その20 2008ベルリンマラソンでの ハイレ・ゲブレシラシエの初の3分台・世界記録達成 |
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2008年9月28日に、エチオピアのハイレ・ゲブレシラシエ選手が、ベルリンマラソンで世界で始めて2時間3分台という驚異的な世界記録を達成しましたね。彼は昨年も同マラソン大会で世界記録を作っています。昨年の記録も凄いと思いましたが、二年連続で凄い記録を作ったものです。昨年より27秒短縮したわけですが、昨年とどう違ったのか、レースの経緯を示すラップタイムから見てみました。 今回のラップタイムは下記の通りです。昨年のラップタイムは「ランニング研究:その10」に示すように、3kmごとという変則的な区間割りでしたが、今年の記録と同じグラフ上に重ねてみましたら、下図のようになりました。 2008年ベルリンマラソン ハイレ・ゲブレシラシエ選手の記録(ベルリンマラソンのサイトから)
下のグラフの、青い点線が2007年の世界記録達成時、ピンクのラインが2008年世界記録のラップデータである。 |
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このレースは30km過ぎまでペースメーカーが先導してペースを安定させている。2007年は、ペースメーカーが居なくなったその反動か、いきなりペースが2:53/kmにまでに上がり、そして上げすぎたと感じたのか一旦ペースは7秒/kmほど落ちるが、また復活して最速ペースでゴールしている。この33kmから36kmのペースダウンが無ければ、単純計算では21秒ほど短縮されるので、3分切りは難しいとしても今年に匹敵する2時間4分5秒ほどのタイムになる。しかし、33kmからゴールまでのラスト9kmを2:53/km台で通すのは至難の業でもあろう。2:53/kmとは5kmで14分25秒(10kmで28分台)というレベルなのだから。 2007年と2008年の大きな違いはやはり、スピードの変化の差(振れ)であろう。明らかに2008年の方がスピードに変化が少ない。最速と最遅の差は5秒/km(5kmで25秒の差)である。ちなみにグラフから2007年は8秒差。これも少ないと思うのだが、2008年はさらに短縮された。凄いものだ。ほとんどスピードに変化がないといっていい。ちなみに、前半のハーフと後半のハーフを2ヵ年で比較すると、
となり、ほとんど差がないといっても良いくらいなのだが、しいて言えば、後半ハーフはほとんど同タイムで、前半ハーフの差がそのまま全体の差となっているようだ。しかしよく考えると前半はペースメーカーがいるので、その影響が大きいのではないか。ただ、もしもハイレ・ゲブレシラシエ選手自身が敢てペースメーカーに従わずに自分でペースを作っていくとすると、それがかえってストレスになってマイナスとなることも考えられる。このあたりはペースメーカーの存在の功罪であろう。前半が後半より遅いということは前半が抑え気味であることも示している。 ゲブレシラシエ選手は2時間3分30秒も夢ではないと言っているが、もしこれをイーブンで行くなら、ペースは2:55.6/kmとなる。これは5kmで14分38秒である。2008年で言えば、15〜20kmあたりと25kmの二つの山をもう少し低くしてもらえば可能だ。 2009年に、2時間3分30秒あたりのさらなる驚異的な世界記録をまた期待するなら、ペースメーカーの設定ペースは5kmあたり14分38秒が目標となるのか。 今後がますます楽しみである。 |
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