三線の弾き方
このページでは、本などにはのっていない、三線教室で教えてもらうような実践的な事を書いてみました。
三線の良いところは、演奏するスタイルを自分で選べる所にあると思います。 たしかに、古典を弾く時の型というのもありますが、ある程度てーげー(沖縄方言でおおまか)な弾き方もあるところが、沖縄文化ならではでしょう。 それは古くから伝わる伝統を守りつつ、新しい形を許容して取り込んでいくところに、沖縄文化の根本があるのではないでしょうか? 中継貿易拠点として、「唐の世から、大和の世〜アメリカの世」と時代毎に新しい文化と触れつつ、それを取り込んできた伝統に由来するとおもいます。 沖縄では、新しいミュージシャンを輩出し、日本の歌謡曲を盛り上げる一方、沖縄の若者が伝統的な教訓歌である「てぃんさぐの花」をロック調で歌うなどはその例だと思います。 自由な発想を持ち、伝統にとらわれず新しい物を取り入れる一方で、昔から伝わる物をも大事にする姿勢が受け継がれているのです。 でもこれは逆に、琉球王朝時代から培われ伝えられてきた、型があるからなのかもしれません。 型があるからこそ、それを新しく変えていくような発想が生まれるという考え方もできるでしょう。 三線を弾くことで、そんな沖縄文化の一端を感じとることができると思います。 弾くスタイルや、曲にしばられない自由でのびのびとした雰囲気を、三線から味わってください。
もくじ
1.準備のポイント ○ウマの位置で個性を出そう! ○調弦は、あなたの声で決めよう! ○バチの選択は、あなた次第。
2.弾き方のポイント ○持ち方で三線っぽくできるか決まる! ○左手で、古典の唄者っぽく見せる! ○弦をはじく位置で、心を響かせる音をだす。
3.聴いてもらう時のポイント ★惹きつける ★飽きさせない ★締める
4乳離れしよう ○「九」の取り方
1.準備のポイント
何事も準備が大切です。では、三線にはどのような準備が必要なのでしょうか? といっても、具体的な容易の仕方は、よそのページを参考にしてください。 ここでは、それぞれの準備によって、どんなことができるようになるのか解説していきます。
○ウマの位置で個性を出そう!
ウマは胴の端から、指三本あけた位置に立てます。 あなたの指で計ることで、あなただけの音を作ることができるでしょう。
○調弦は、あなたの声で決めよう。
大勢で同時に演奏する場合は、弦の高さを合わせなければなりません。 しかし、一人で弾く時にはあなたの声の高さに合わせてください。 弦の音が相対的にド・ファ・ドになればいいのです。 自分の歌いやすい高さをみつけてください。
○バチの選択は、あなた次第。 弦をはじく方法は、三線専用のバチ、ギターで使うピック、自分の爪の三種類あります。
古典が好きな方は専用のバチを使われます。民謡が好きな方は、ピックや自分の爪で弾かれる場合が多いようです。
音の大きさで言うと、大きい方からバチ、ピック、爪となります。 テンポの速い曲には、ピックや爪がむいているでしょう。
あなたにピッタリ合った好きな弾き方を探してください。
*三線用ピックについてもっと知りたい方はこちら
2.弾き方のポイント
弾き方は大切です。なぜなら、弾き方ができているだけで、遠目に見ると上手に見えます。 逆に言うと、弾き方ができていなければ、パッとしないってことですね。
○持ち方で三線っぽくできるか決まる! ★左手の手のひらは、棹に付けない。
★三線の胴は、おなかから握り拳一つ分だけ離す。(座って弾く時だけ) ★棹の先は、肩の高さくらいまで上げる。 この3つのポイントで、三線らしくなります。 弾いてる格好がウクレレやギターみたいな感じの時は、この3つに注意してください。 もし、かつてギターやウクレレを弾いていた事がばれると、 「じゃあ三線で昔の曲を弾いてよー」
なんてことを言われかねません。自身のない人は要注意です!
○左手で、古典の唄者っぽく見せる! 演奏中は、親指は乳袋の角につけ、人差し指から小指はそろえて棹と垂直になるように意識すると、かっこよくなります。 古典を弾く人は、かつては琉球王朝の宮殿で演奏していたそうです。 そのなごりで、三線を弾く時は背筋をのばし、演奏中は何事があっても動じない堂々とした姿勢を保つことが重視されています。 つまり、背筋もピン!左手もピン!間違えても知らんふりする。これが大事です。
○弦をはじく位置で、心を響かせる音をだす。 胴の下から2/3の位置で弾きましょう。
ウマの近くで弾くより、三線特有の包み込むような柔らかい音が出ます。 慣用句に、「琴線に触れる」という言葉があります。その意味は、相手のじ〜んと心に触れるような事を言ったりしたりすることです。 たしかに相手の心の琴線を探すことが大事ですが、琴線とて触れる場所によっても感じる度合いが違うのではないでしょうか? たとえば、首筋あたりの肩が凝っている父さんがいたとします。 肩をもんであげれば、喜ばれるでしょう。 けれど、首筋あたりの方をもんであげると、いっそうよろこんでもらえ、もしかしたら小遣いがでてくるかもしれません。 要は、弦をはじくにもベストポイントがあるということですね。
●裏技 アロハシャツを着て歌う。
3.聴いてもらう時のポイント この章をを読んでおられる方は、お客さんがはるばるあなたの三線を聞きに来て、お金をおいていくような人物ではないと思います。 では、そんな私たちがどうしたら他人に、”三線楽しいんだストーリー”とか”努力の成果(唄三線)”を最後まで聴いてくれるでしょうか。 このポイントは次のことが考えられます。 ★惹きつける ★飽きさせない ★締め
まず第一に、耳を傾けてもらわなくてはなりません。 元からあなたに演奏を求めてこられる方もいるでしょう。 でも、聴衆の中には、様々なタイプの方がいるので、状況に応じた、選曲が必要です。 聴衆には、選曲やアプローチの仕方で最後まであなたの思いを伝えることができるかがかかっています。 それは、舞台でも、友人と集まった部屋の中でも、ストリートミュージシャンとして演奏する時でも同じです。 如何に、興味を引き出すかがポイントです。 では、状況別に見ていきましょう。 大きく分けて3つに分けられると思います。
○あなたに興味を持っている。(友人、親戚、恋人など。) ○特に興味はない。又は、ただの通りすがり。 ○沖縄音楽に興味を持っている。
さあ、それぞれの対応の仕方を考えていきましょう。
○観客が、あなたに興味を持っている時。 聴衆があなたや沖縄音楽に興味を持っていれば、あなたの三線を弾いている姿はに熱い視線が集まり、歌にも期待が寄せられるでしょう。 でも、あなたに興味を持っている場合は、三線を聞きたいわけでもなく、歌を聴きたいのでもないということを覚えておいてください。 始めににどんな曲を持ってくればいいのでしょうか? このとき、沖縄っぽい沖縄民謡を弾いてあげることがポイントです。 聴衆が、どこかで聴いたことあるような沖縄を感じられる曲です。たとえば、てぃんさぐの花であったり、安里屋ユンタなどでしょう。 そうすることにより、聴衆の興味は(あなた→三線、沖縄音楽)に移るはずです。 ここで、聴衆は、三線や沖縄音楽についてもっと知りたい!という思いが湧き起こっています。 それとなく、由来や特徴を教えてあげましょう。 彼らの気分は、もう沖縄通になっています。 心の中で次に出てくる曲をある程度、予測しています。 さあ、ここからが難しいところです。 聴衆は、どんな曲を予想しているでしょう?どう思いますか? かぎやで風、とぅばらーま、でんさー節などは、まず普通のないちゃー(日本本土に住まう人)は想像しません。 ここでは、ないちゃー的に沖縄の歌と思われている曲を弾いて期待に応えてあげるのがいいでしょう。 それは、歌謡曲として流れている、島唄、さとうきび畑、元ちとせの曲などでしょう。 彼らの気持ちは、自分の予想通りに進んできてもはや沖縄音楽について、説教できるくらいに思っているでしょう。 もはや、あなたの唄三線を聴くまでもないと思っているかもしれません。 では、ここで彼らの期待を裏切ってみましょう。
思いがけないアプローチをすることで、まだまだ興味を引立たせることができます。 それは、三線の特徴でもある、様々なジャンルに対する包容力を見せてあげることです。 沖縄と全く関係ない曲を弾いてあげましょう。 すると、聴衆は「え?そんな曲を弾くこともできるんだ。」と、思わぬ衝撃を受けることでしょう。 そのとき、ポップミュージックや童謡・唱歌を弾いてあげるのがいいでしょう。 ポップミュージックは、流行の曲ですから、彼等も話のネタにしやすいので、興味を持ってくれます。 しかし、年代が離れている時には、童謡や唱歌といった、皆で昔を懐かしめる曲を弾くことで、これからの話を盛り上げることができます。 さあ、ここぞとばかりに三線のおもしろい点を説明してください。 聴衆も話のネタを得んがため、何でも聴いてくれるでしょう。 あなたの「三線楽しいんだストーリー」を連ねてください。 これで、三線の魅力はかなり理解してもらえます。 とうとうこのときがやってきました。 最後の選曲です。 あなたの興奮も聴衆の沖縄気分も絶頂。 何事も”締め”が大切です。 というより、むしろこのために今まで聴衆を惹きつける様々な下準備をしてきたともいえるでしょう。 伝統音楽、古典や民謡を思いの限り弾いてください。 どんなに、難しい曲か、練習で苦労したか、あなたの苦労は量りしれません。 その努力が報われる時が来ました。 あなたの三線を、あなたの唄をじっと聴いてくれる人を得る事ができたのです!
完
おまけ: 最後の選曲の時、聴衆は古典・民謡を聴いても言葉の意味がさっぱりわかりません。 もしかすると、途中で眠くなってるかもしれません。 でも大丈夫。 それまで、沖縄音楽に興味を持ち、三線に惹かれてしまった手前、聴衆はもはや後には退けません。 トイレに立つことさえできないでしょう。 作戦通りです。 最後まで、じっと聴いてくれることでしょう。
○特に興味はない。観客は、ただの通りすがり。 観光施設の舞台で演奏する時、ストリートミュージシャンになる時、多くの場合聴衆となるのは、ただの通りすがりです。 三線や沖縄音楽に興味はほとんどありません。 ただいえるのは、私たちの音楽が、彼等の耳に入る運命の時が!チャンスが訪れたと言うことです! ここで、彼等の歩みを止め、こちらを向かせることが我々に科せられた第一の任務です。 話は変わりますが、現代人が求めているテーマは2つ。 ”流行”と”癒し”です。 現代人というのは、時代の波に乗り遅れないように、好き嫌いにかかわらず常に社会の情勢にアンテナを張っています。 世間の話題を先取りすることが、ビジネスマン、OL、女子学生、男子学生、奥様方の人間関係構築のために、強く求められています。 そのため、気苦労は計り知れず、現代人はストレスを抱えつつも、日々がんばっています。 そこで、”癒し”が求められるのです。 体は疲れていても、心の癒しがあれば、世知辛い社会も乗り越えることができるでしょう。 少しの間だけでも、昔の楽しかった事を思い起こせれば、張りつめた緊張も緩めることができるというものです。 そんな現代人にポップミュージックや童謡を聴かせてあげましょう。 流行に敏感な彼等は、とりあえず足を止め、曲を聴いてくれるでしょう。 ところが、普通の音色ではないことに気づくでしょう。 そこで最新の流行歌を三線で演奏することで、彼等にとって話題性は抜群です。 テレビで見て、コンビニで聞いて、お店で流れている曲をするどくキャッチして下さい。 また、小学生の頃や故郷での思い出を起こすような童謡を演奏してあげてください。 みんな癒されたいのです。 そのみんなの中にあなたの事でもあります。 童謡を歌う時、自ら幼少時代を回想することで、歌に心が宿るのです。 そこで、観衆に声をかけてあげてください。 「沖縄を感じますか?南国の沖縄から送られてきた、この音色が伝わりましたか?」と。 三線は、沖縄の風を伝えて、癒す力があるのです。 それをこんこんと説いてみましょう。 通りすがりの観衆は、あなたの演奏を待っている聴衆へと変わりました。 沖縄ミュージックを奏でるときがやってきました。 古典または、民謡を1曲まるままするのではなく、1番だけとか小出しにしていきましょう。 そして、歌の解説や三線の歴史など豆知識を織り交ぜていくことで、彼らの興味は津々となります。 少しずつ興味を引き出し、知識を広めることで、ただの野次馬も、明日になれば沖縄音楽を語っているかもしれません。 そのネタを提供する気持ちで演奏すると、自分の”三線ストーリー”にも磨きがかかるでしょう! もちろんフィニッシュは、あなたの十八番をフル演奏してくださいね。
○観客は、沖縄音楽に興味を持っている時。 制作中
4.乳離れしよう ○「九」の取り方
さて、皆さんの中には、「九」の音なんか取れないと思っている人がいるのではないでしょうか? その方は、まだまだ乳離れができていません。
今までは棹に印を付けてそれを見ている方は少なくないと思います。 「ポップさ工工四」の楽譜教本の中には、押さえ易いように指の位置記号を工夫してありますが、気づきましたか?
普段、棹のふくらんだ角に左手の親指を当てて、「合」〜「七」までの音を取ってますよね。そのふくらんだ部分を三線用語で、乳袋といいます。 「九」を取ろうと思うと、乳袋を離れなければなりません。 確かに乳袋から離れるのは不安一杯?ですが、人生、時には苦を克服しないといけません。 では、どうやって、九を取るかというと、次の3つのステップで簡単にできます。
1,「五」と「七」の間隔を覚えておきます。 2、「九」を取る前に小指で「七」の位置を確認します。 3,「七」の位置に、人差し指を持ってくると、小指は自然とだいたい「九」の位置に来ます。
これで、乳離れの苦が克服できるでしょう。
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