恵比寿のウージ畑

山手線の窓から
ウージ畑が見えたよ
金色に輝く       クガニイロ
ウージ畑が見えたよ
コートの襟に首をすぼめる
そんな寒い朝だったよ

東風平あたりのウージか   コチンダ
糸満あたりのウージか   <イチマン>
大きく育ったウージが
太く育ったウージが
冬の日を受けて
大きくうねったり
小さくさざめいたりして
金色の波を作るのが     <クガニイロ>
山手線の窓から見えたよ

ウージ畑のむこうには
ピカピカ光る海
新北風をつばめが滑って行く先   ミーニシ>
慶良間がくっきりと見える   <ケラマ>
「晴れてるけど暑くない」
そう!こんな天気の日は
絶好のウージ倒し日和り
朝から家族総手でウージ倒しだよ

ウージの葉っぱ落としは女の仕事   イナグ
道まで運ぶのは男の仕事   イキガ
二十本くらいずつ背負って運ぶ
最初は軽いと思うけど
だんだん肩にくいこんできて
最後は肩の感覚がなくなるよ

「ハブに気をつけなさいね」と
おばさんが言う
ネズミがいるウージ畑には
ハブもいるんだそうだ
でもあんなにバタバタ倒すんじゃ
ハブも驚いて逃げるんじゃないかな

「トン当たり二万円余り
手間賃も出ないさ」と
おじさんは笑って言う
でも先祖代々のウージ畑
子供の時からのウージ畑
やめるつもりはないらしい

朝早くから始めたウージ倒し
昼にはおにぎりを食べて
三時にはサーターアンダアギーを食べた
倒したウージの下からは
もっこりとした赤土が出てくる
そこにウージの切れ端を入れれば
来年もウージの海原が生まれるんだ

そう
金色に輝くウージの海原が…

突然開いた山手線のドアから
ホームに押し出され
ウージ畑が遠くなるよ
人の波に押し流され
金色の波が遠くなるよ
『待ってくれ』
『たのむよ』

立ち止まり振り返る僕に
「まじゅん家帰いやー」   ヤーカイ
ウージ倒しのおじさんの声が聞こえた

■書始−91/03/21 ◇満員の山手線の車窓からのデイドリーム、ディジャブ。東風平(こちんだ)
のウージ畑、緑色の風を全身で受けながらバイクで走り抜ける自分が見えるのです。

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