史ちゃんのわらべうた

真玉橋を行く軽便鉄道から   <マダンバシ>
「こーじゃ馬小」の歌が聞こえる   <ウマグァ>
リボンをつけた史ちゃんが
窓にもたれて歌っているんだ
なぜ史ちゃんがこんなにゴキゲンかって?
糸満のおばさんに会えるし   <イチマン>
軽便鉄道には乗れるしで   <けいびんてつどう>
朝からもう歌いっぱなしだよ
―歌は「花ぬ風車」に変わった   <ハナヌカジマヤ>

南風原のウージ畑に入り   <フェーバル>
すかさず手袋を用意する史ちゃん
窓から「チャービラサイ」する
ウージの葉を手でよけるんだ
なぜ手袋をするかって?
ウージの葉は素手でさわると
切れるからだよ
ウージの葉をパッパパッパとよけながら
歌いつづける史ちゃん
―歌は「小録豊見城」に変わった   <ウルクテゥミグシク>

見渡すかぎりのウージ畑を
シッタンガラガラと軽便鉄道は行くよ
青く透きとおる海が見えれば
「波々わんわちゃくり」を歌い
メェーとヒージャーが鳴けば
「ベーベーぬ草」を歌い
サッと太陽雨が過ぎてゆけば   <ティーダアミ>
「雨どーい」を歌う
史ちゃんの目に見えるもの
すべてが史ちゃんの友達で
すべてが史ちゃんの歌になる

「赤田首里殿内」は   <アカタスンドゥンチ>
道に迷った史ちゃんを
家まで無事に
連れて帰ってくれた歌
「てぃんさぐの花」は   <ティンサグヌハナ>
悪い事をした史ちゃんに
涙を流しながら
おかあさんが歌ってくれた歌
「月ぬ美しゃ」は   <ツクヌカイシャ>
史ちゃんの一番お気に入り
満天の月に歌えば
涙が出てくるような歌だよ

史ちゃんの目に見えるもの
すべてが史ちゃんの友達で
すべてが史ちゃんの歌になる

史ちゃんのわらべうた
すべてが史ちゃんの友達で
すべてが史ちゃんの歌になる

■書始−91/05/04 ◇沖縄のわらべうたの素晴らしさと豊富さは、群を抜いていると
思います。仲吉史子さんは大正生まれで「沖縄わらべ唄普及会」の会長さんです。

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