★ 昼夜捻じ曲げ

「バクランドの昼と夜は太陽ではなく超自然的な力に支配されている」とは物見頭の言葉であるが、実際バクランドでは月の蛇によって一時的に夜が訪れるシーンがある。では、物見頭の忠告にある「超自然的な力」とは七大蛇のことなのだろうか? 七匹のうち、昼夜の運行に関連していそうなのは、月大蛇、日輪大蛇、そして時大蛇の三匹である。他の大蛇にはそういった力はなさそうだ。土大蛇が自転に影響を与えるかもしれないまでくると、ちょっとこじつけになるだろうし。
 実演してくれている月大蛇は要因の一つなのは間違いがない。対になる日輪大蛇にも同様の力があるだろう。時大蛇に関しては「対象の時間を遅らせる」という能力が判明しているが、これが天体の運行にまで影響をもたらすかどうかは不明だ。

 だが引っかかるのは「バクランドの~」という物見頭の言い方だ。七大蛇は確かにバクランドを行き来しているが、奴らはあくまで大魔法使いの伝令であり、その本拠地はマンパンである。カーカバード全域ではなくバクランドに限った言い方である以上、バクランド特有の理由があるのが自然ではないか? 『タイタン』によるカーカバード関連の記載を確認しても、そこが悪の巣窟であること、そして自然現象がねじ曲がっていることが記されているが、原因については触れられていない。その一方で煮立ったり凍ったりする小川の描写からは、火炎大蛇の力なのかもしれないと連想できる。やはり七大蛇のせいなのだろうか……?

 もしも本当に七大蛇のせいでバクランドの自然現象が滅茶苦茶になっているのであれば、全ては七匹が生み出された後の異変ということになるだろう。だがそれはせいぜい10数年程度昔のことなので、ではバクランドが以前は異常無き地だったのだろうか? かの地を旅すると、住民たちは七大蛇に対して恐れや恨みを抱いていることがわかる。しかしその苦情は主にフェネストラの父の殺害に代表される「連中が酷いことをしていく」ということであり、自然現象を狂わせていることではないようだ。バクランドの自然が狂っているのは遠くアナランドの物見頭が知っていることであり、バクランダーたちが知らぬわけがない。しかしディンティンタ、フェネストラ、シャドラクといった賢者たちも七匹が自然を狂わせているとは言わないのだ。

 個人的な考えだが、月大蛇と日輪大蛇がバクランドに混乱を起こしているのは事実だが、それ以前にバクランドそのものが何らかの要因で滅茶苦茶に乱れていたのではないだろうか。『タイタン』がいうように混沌が色濃く残る地なのかも知れない。たとえば善と悪との最初の戦いにおいて時間《クロナーダ》――マンパンでは時間の神とされる――が破裂し、世界に散ったその中心地であった……などの曰くある地だったとしたら、時間的な歪みが発生して未だ混乱が収まっていないのだとしても不思議ではあるまい。

(3/14/20)

★ かつての冒険者たち

 これは『ソーサリー・キャンペーン』での話になるのだが、カレーの実力者であるヴィクが大幅に降格されている。本編では四行詩こそ知らされてはいないものの、カレーで大きな影響力を持つ人物だったあのヴィクがだ。カーニバルに姿を現わせば人だかりができる人望者であり、赤目にも一目置かれる存在。一方でカレーの暗部にもコネクションを持ち、奴隷船や殺人鬼とも通じている。そんな彼が、『ソーサリー・キャンペーン』では奴隷船の船長という役柄を与えられているのだ。本編でも奴隷船の船長は存在するが、こちらではヴィクに命を助けられたことがある男で、ようするにヴィクに助けられたという男が、ヴィクになっているのである。プレーヤーが自在にNPCと交渉できるTRPGでは、港街の裏事情にも通じた顔役NPCの存在が扱いにくいということもあるのだろう。

 ではそのヴィク船長を助けたという、元々ヴィクのものだった役目を負っているのが誰かというと、これがなんとビリタンティで酒場を営むグランドラゴルなのである。本編ではグランドラゴルはヴィクの友であり、第一巻で次巻の手助けを得られる仕込みを担う人物である。
 さて、「酒場の親父」が「船長」をラムレ湖で楯乙女から守ったという。これはグランドラゴルが元冒険者であり、今は引退してビリタンティで酒場を開いているということではないか? グランドラゴルに冒険者としての経歴があるならば、酒場の親父と彼の斧の間に明確な繋がりがうまれる。あの使い込まれた斧は、彼が冒険を共にした得難い相棒なのだろう。如何なる経緯で失ったのかはわからないが、再び斧を手にした時に見せるあの喜び様にも納得がいくというものだ。
 グランドラゴルの斧には何やらルーンが彫り込まれており、魔法の力を持っているかのような描写がされている品である。そこでは持ち主である彼をして「国守」と称している。創元版および『ソーサリー・キャンペーン』では「守護者」と訳されるこの称号、原文では「Protecter」である。冒険者で、プロテクトする者と異名ととるとなれば、きっとグランドラゴルはパーティーの防御の要、いわゆるタンク職だったのではないかな……そうなると彼は一匹狼ではなくパーティーを組んでいたということになりそうだ。もちろん人里を外敵(ゴブリンは適役だろう!)から守りぬいた英雄に贈られた称号――つまり「国守」――という線も十分ありうる。

 同じく熟年層あるいは年老いたかつての冒険者たちが『ソーサリー!』に登場していると考えるとなかなかに面白い。コレトゥスが若き日にマンパンに戦いを挑んだ勇者だったことは『タイタン』に記されている。隠者シャドラク、魔女ガザ=ムーン、あるいは神官シャラなんかも冒険者だった頃があってもおかしくはない。アリアンナは昔から若々しいままだったかもしれない(肝を食っているかもしれないから)。サンサスはカレーの第一貴人であるが、今でもカレーを離れることがある。彼も冒険者上がりの可能性は充分にある。ジャヴィンヌやカートゥーム隊長もマンパンにたどり着く前にカーカバードを旅していたはずだ。もちろんマンパンの大魔法使いや、ZEDと共に消えたスローベンの魔術師も。『ソーサリー・ゼロ』的な発想だが、妄想が捗るね。

(3/20/20)

★ スカンク熊ハント

 クリスタタンティの宿では、金貨二枚でスカンク熊のシチューにありつくことができる。
 スカンク熊というのはカーカバードの山地に生息する生き物で、ゲーム中だと第一巻、および第四巻で遭遇することができる猛獣だ。シャムタンティの街道をふさぐ程度の体躯を持つなかなかの強敵で、技量は7、体力は5。冠奪還の任務を任されるアナランド最高峰の戦士が技量12~7であることを考えると、決して農村であるクリスタタンティの村人が気楽に倒せる相手ではない。旅人相手の格闘訓練を日常とする刺客フランカーの技量が8、体力が6なので、危険な目に会うことも多い旅人にとっても、遭遇する危険としては大きいほうだと思われる。ゲーム中にその存在は現れないが、きっと狩りに際しては狩猟を生業とする狩人たちが何人かでチームを組んで挑むのだろう。スカンク熊には奴ら独特の武器――例の臭気――があるので、スカンク熊専門の狩人がいるのかもしれない。

 例の臭気といえば、これがスカンク熊自身についてその上等な毛皮を台無しにしてしまうことがあると『モンスター事典』には書かれている。狩人が村に属しているのだとすれば、村にとって毛皮が収入源なのは間違いあるまい。クリスタタンティではない狩人の里がシャムタンティのどこかにあって、肉や毛皮を近隣の村々に卸しているという線もありうる。

 いずれにせよ例の臭気はかの獣が身を守る際に放つものなので、狩りには注意を要するはずだ。ちょいとミスをして、臭気がついてしまうことも度々あると思われる。その場合、匂いがついてしまった場合でも肉は食えるのだろうか? 多分だけど、匂いがつかないほうが肉としては上等な気がする。格安のシチューにはそうした肉が回されているのに違いない。

(3/28/20)

【追記】
 指摘を受けて再確認したのですが、『モンスター事典』には「上等な毛皮」という記載はありませんでした。一応「つややかな毛」とあるので、普通の毛皮程度の値打ちはあるかと思います。
 それに例の分泌液によって毛に匂いが染みつくとあるので、匂いが染みついてない毛皮は希少価値があると考えることもできそうです。だって産まれてから一回も分泌してないスカンクベアからしか採れないということですからね。

(9/22/20)

メニューへ戻る

次へ進む

前へ戻る