★ 対岸の道

 マンパン砦を目指して上るザメンの山道。第四巻の冒険をはじめてからしばらく歩くうちに、崖の反対側にも道があることに気付くだろう。だが、あちらに渡ろうとしても罠のロープがあるだけで、実際に到達することはできない。この道はどこへ続いているのだろうか? 地形を考えると、登っていけば砦に着くであろうことはほぼ間違いあるまい。しかし下った場合はどうなるのか。ヴィシュラミ沼に出るのだろうか?
 我らがアナランダーがたまたま選んだ道が崖のこっち側だったという可能性は高い。つまりどうやらハズレを選んでしまったのではないかという考え方だが、これは十分ありえるだろう。もしも砦に至る道が一つしかないのだとしたら、せっかくの罠であるうめきの橋を台無しにすることになるまいか。砦から各地へ兵が派遣される際に誰かに見られていたら、本物の橋の存在が明るみにでてしまう。砦の連中もそんな愚は冒すまい。衛兵たちはあくまで防衛要員であり、侵略は鳥人まかせと考えることもできそうだが、残念ながらこれはバクランドのシャドラクの元へ派遣されたのが衛兵であったことから成り立たない。砦の兵がザメンを降るときに使う道が別にあるのはほぼ確実と見ていいだろう。
 もう一つ忘れてはいけないのは、衛兵たちの故郷であるティンパン川上流へつながる道はあるだろうということだ。ザメンの地形を見るに、崖の向こう側の道を降れば、山地をぐるりと回って北側へと降りることができるだろうと思われる。まさにそここそが、ティンパン川の流域なのである。おそらくは途中で道が分かれていて、左の方へと下っていけばヴィシュラミ沼に出れるのだろう。

 だがまあ、南ルートを選んだアナランド野郎が間抜けだったかというと、決してそうではない。特に戦士だった場合には女サチュロスの村で得られる瓶の魔人がいないとクリアは不可能だからだ。術師だったのなら……まあ、運が無かったねとしか言いようがない。一応、コレトゥスとの出会いがあるから、祝福の槍をゲットできるという利点もある。大丈夫、自信を持って登山に挑もうではないか!

(8/25/22)

★ 十字を切って

 クーガ神殿の作法について「十字を切る風習のない人」にはヒントがないという話も今は昔
 だが本当に「十字を切る」宗教観はカーカバードにとりこまれていないのだろうか? どうもどっかで見た覚えがあったので探してみた。


My dear, your fortune can be told
If you will cross my palm with gold.

If you'll toss one more coin to me
Two wishes will I grant for thee.

Thank you for tossing dawn your wealth
For one more coin I'll grant you health.

Pray throw me down another piece
And all your hurting soon will cease.

Just one more coin, that's all I ask
I'll give you help with any task.


 これはカレーの金貨をねだり続ける井戸の声なのだが、最初の段の二行目にはっきりと"cross"とある。金貨で十字を切ってくださいましと訴えてきているのだ。
 創土版では「わたしの、このてのひらに 金貨で十字を切っとくれ」と訳されているこの部分、創元版はかなり省略されていて「金貨を恵んでくだされば」となっている。件の碑文のみならず、こちらでも「十字」が消えてしまっているわけだ。

 さて……ここで、この井戸が配置されているのはクーガ神殿の手前、わりと近くであることに気づく。あらためて神殿の碑文のほうを見てみると……


on Courga's face you kiss across
and finish with the lips
for answers to your questions you
must err not else me spits


 ……と一捻りされていて、神像攻略の肝である"cross"は"across"の中に隠されている。つまり、井戸のところで先に"cross"を出しておくことにより、碑文のシーンで意識を「a_cross」に向けさせる、そんなある種のヒントになっているのではないかと思ったのだが、いかがであろう?

(9/4/22)

【追記】
 この風習に関しては、アブラハムの宗教からは切り離して考える必要がある。ここはタイタン世界であり、存在する宗教もタイタンの神々を崇拝するものだからだ。
『ソーサリー!』全四編を眺めまわしてみたが、十字が出てくるのは第二巻のみ。つまりこれは、カーカバードにおいてはカレー特融の風習であると考えてもよいように思える。海賊が集う港であるカレーは、カーカバードの中でも特に広い世界と通じる機会が多い場所だ。つまり、多くの文化が入り乱れる環境であり、十字に関してもその一つと言えないだろうか。

 ところで、こういった風習が定着するにはやはりそれなりの理由があると考えるべきだろう。十字にも何らかの目的があり、かつ効果が認められたということだ。そうでなければ、定着するはずもない。色々と探ってみたところ、これかなというものが見つかった。吸血鬼である。カレー第三の貴人は吸血鬼という噂があり、恐れられているわけだが……『モンスター事典』の該当項にはこうある。


十字架やニンニクを突きつけても数分間しか効果はない。

 残念ながら決定打ではないとはいえ、数分も持てば十分と考えることはできよう。ここカレーでは、誰もが皆勝手知ったる路地から離れようとはしない。つまり恐ろしい吸血鬼に出会ったとしても、数分もあれば罠に囲まれた安全な場所へ逃げ込むことは可能なのだ。こうしてみると、十字を切る風習が吸血鬼除けであることは十分あり得る話と思える。鞭叩きの料理小屋や「旅の宿り」亭の食事にはニンニクは含まれてなかったようだが、カレーにニンニク料理があることは確実であろう。

(4/30/23)

★ ディンテンタ

 広大なバクランドのいずこかに居を構える魔女ディンテンタ。この地方について書かれた『バクランドの秘密』という羊皮紙の巻物によれば、彼女はクラタ・バク平原に住んでいるとされている。
 彼女は「偽物」という異名を持つともされていて、実際に出会いのシーンでも、ディンテンタは姿を偽っていた。ノームのような醜い小人の姿というのが彼女のいで立ちであるが、見た目に反してものすごいスピードで移動することができる。本文中でも「大変な速さ」「信じ難い速さ」などと強調されていて、さては人馬のそれを超えているのではないだろうかと思いたくもなる。

 さて、そんな彼女であるが、日の入り前に家に帰りたいと言う。こんなスピードで移動しておきながら、日没までに帰宅できるかどうかという距離に住んでいるというわけだ。これはもしかしたら彼女の住まいを見つけることができるかもしれない。
 まずディンテンタがこの発言をどこでしたのか。それが全ての起点となる。この邂逅を超えるとスナタ森が近づいてきているという描写が出てくるので、すでにここがクラタ・バク平原なのだという推測が成り立つ。北東へ進路を取りながら前方を注視していた主人公が、地平線の近くを移動している彼女を見つけていることから、彼女は北方面からやってきたこともわかる。イラストからは彼女が道を辿って来ているように見えるし、別れのシーンでは「通り過ぎる」と書かれている。つまり彼女の家はここよりも手前、クラタ・バク平原の南部にあるに違いない。先の『バクランドの秘密』を読んだ時のシーンによれば、セスターキャラバンが留まっていた場所から見て北東と思しき区域に住んでいるようなので、これはだいぶ絞れてきたのではないだろうか。

 しかし問題が一つある。もちろんそれは彼女の移動速度だ。主人公がディンテンタと別れた後、その日の日没はスナタ森に着いた時点となるのだが、この間に食事の機会が二度ある。そんなに長い時間ディンテンタが南下するとなると……クラタ・バクどころかバドゥ・バク平原に到達し、下手をするとカレー近くまで行けてしまってもおかしくはない。彼女の魔力はかなり強力で、そうそう足止めを喰らうような事態も起きそうにはない。七大蛇に対抗できる蛇杖も持っているのだ。(もっとも「日の入り前に家に帰りたい」ことがわかる場合には、主人公に杖を譲渡してくれるのだが)

 こうなると考えられるのは以下の二つだ。彼女は他に何か用事を抱えていて、家に直接向かっているわけではないという可能性。そしてもう一つは、『バクランドの秘密』に書かれている情報が間違っているということだ。何しろディンテンタはシャム(偽物)だ。こんないかにもな巻物を書いた人物に尻尾を掴まれるという愚を犯すだろうか? 見事に偽物を掴ませてやったということもあるのではないか?
 彼女は友好的な場合でも「草原のディンテンタ」なんて名乗っているが、どうも常に何かしら偽ってしまう性分なのかもしれない。そう考えると、そもそも本当は日の入りまでに家に戻る必要すらないのではないかとも思えてきてしまう……これを言ってしまってはこれまで考えてきたこと全てが無意味になってしまうが、彼女ならばそれもまた良しと許してしまえる気がする。どうにも正体のつかめない魔女。虚実の入り混じる「偽物」。それが彼女なのだ。

(9/11/22)

メニューへ戻る

次へ進む

前へ戻る