☆ スローベンを探せ!

 アナランドの禁魔法ZED。「魔法の呪文の書」ですら正体をあかされていないこの呪文の説明文には、「スローベンのネクロマンサー(★魔道師)だけがこれを唱えた」と書かれている。このスローベンとは一体何なのか。原文では「Necromancer from Throben」。fromということから、スローベンというのは地名だと考えるのが自然である。…だが、『ソーサリー!』についているカクハバード(★カーカバード)の地図はおろか、『タイタン』の世界全体を見ても該当する地名は見当たらないのだ。

 一体、スローベンは何処にあるのだろうか? 『ソーサリー!』ーの中に、その手がかりとなりそうな事象を見出すことができる。疑問の出発点となったZEDの呪文、そしてマンパン砦に設置された、その名もずばりなスローベン・ドアの二つである。
 まずはこれらを見てみよう。

1 ZEDの呪文

 スローベンのネクロマンサーが創り出したと言われているが、その実はマンパンの時間神クロナダを信奉する呪術師が創り出した「時間を超えて旅する」呪文。ミニマイトの手によってスローベンのネクロマンサーが知ることとなった。その後彼は「時間旅行」に出かけてしまい、以後姿を見たものは誰もいない。
 つまり時間を旅する力はスローベンのものではなかったわけだが、はっきり言って畑違いであるネクロマンサー(死霊術師)がそれを使いこなすのだから、スローベンの魔法文化のレベルの高さはかなりのものと想像される。

2 4つのスローベン・ドア

 マンパン砦に仕掛けられた4つのスローベン・ドア。マンパンに巣くう混沌から、大魔王(★大魔法使い)が自らを守るため設置したこれらの扉は、どれ一つとってもうかつに触れば致命傷をもたらすものばかりである。スローベン・ドアの名前が示すとおり、スローベンの技術によって作成されたと思われる。

 第一のドアの錠には巧妙な機械仕掛けがなされている。専用の鍵を使わないと、無数の毒針が飛び出ておろかな侵入者の命を奪うという代物だ。この扉には魔法が使われている形跡はない。スローベンには魔法以外にも、優れた技術があると言うことだ。

 第二のドアは合言葉を唱えてからノブを掴まないと、記憶を白紙にされてしまうというこれまた厄介な魔法がかけてある。第一のドアと違い、こちらは魔法であると明言されている。合言葉という形で描写されているが、番人がいるわけではない。キーワードで一時的に効果を消すことができる永続魔法である。

 第三のドアにはもっとわかりやすい魔法がかけられている。
 扉を開けると、一面に広がる炎の海が見えるだろう。実はこれは幻なのだが、 少しでも入るものが躊躇すると本物の炎に変わってしまうのだ。 幻術が精神感応の結果によって実体化する。かなり複雑な呪法だと言えよう。

 第四のドアはこれまでのドアとは違い、扉そのものは単に頑丈なだけである。専用の鍵でないと開かないが、不用意に触ったとしても何の害も無い。問題はその扉の前にある。扉のある部屋に配置された「眠れぬラム」と呼ばれる彫像こそが第四のスローベン・ドアの実体なのだ。
 「眠れぬラム」は一言で言えば、ゴーレムである。侵入者が鍵を持っていようがいまいがおかまいなしに攻撃してくる。その一撃は進入者の命をあっという間に奪い去るだろう。ラムの手から逃げる方法はただ一つ、殺される前に鍵を使って扉の奥へ進むしかない。

 4つのドアを見てわかることは、第一のドアをのぞき、魔法が関与していることだ。何者をも信用してない大魔王がドアにかけられた魔法の管理を部下に任せているということはありえない。それはすなわちドアにかけられた魔法は設置されて以来、ずっと効力を失わなかったということだ。もう一つ考えられる可能性がある。それは大魔王自身がドアに魔法を定期的にかけている可能性だ。こちらが真実だった場合は、大魔王自身がスローベンの出身ということになる。

 二つの手がかりから得られる情報はこれぐらいだ。わかったのはスローベンが魔法的に恐ろしく発達した地であるということと、それなりに高い機械技術があるということ。そして大魔王の出身地である可能性があることの三点である。特に大魔王との関わりの可能性は興味深い。なぜなら、『タイタン』においてもマンパンの大魔王の正体は不明としか書かれていないのだから。
 もう一つ推理できることがある。マンパンの秘術がミニマイトを通じてスローベンに伝わっていることから、かの地の位置は比較的マンパンと近い場所、おそらくは旧世界(カクハバードが存在する大陸名)の中にあるのではないだろうかということだ。少なくとも『タイタン』を見る限り、ミニマイトに関するエピソードは全て旧世界に集まっているのだ。

 旧世界の中で魔法文化が発達していそうなところ。しかも中途半端なレベルではなく、世界最高峰クラスの魔法の名所。そんな場所は一つしか思いつかない。かの冥府魔術師団が潜むという「北の国」しかないと私は思う。

 『タイタン』に書かれた冥府魔術師団というのは善悪に偏ることなく、世界のバランスをとるために暗躍するという正体不明の存在である。となると、マンパンの大魔王が起こした騒動はその活動の一環なのではあるまいか? 同じく『タイタン』によれば、そもそも王たちの冠(★諸王の冠)も冥府魔術師団の手によるマジックアイテムだという。

 もしかしたら、冠の魔力がフェンリー同盟を強くしすぎたのかもしれない。彼等は善にかたむいた天秤を正すべく、冠を取り上げ、カクハバードをフェンリー同盟の敵として仕立てているというのは間違った推理だろうか?
 ソーサリーで描かれている冒険は何か大きな思惑、そう神々の遊びみたいなものなのかも知れない。ということは、貴方はリーブラ側の駒の一つなのだろう。 

 しかし今回は『タイタン』によりかかりすぎたな。 

(11/3/03)

【追記】
 スローベンに関する情報がもう一つありました。ミュータントミートボールを作ったのが、スローベンの薬剤師で、ブライスの反逆王子がこれを利用してミュータントの軍勢を作ろうとしたというものです。ソーサリー本編で語られています。何故見落としていたんだか。

 突然変異を起こすミートボールを作り出す薬剤技術というのは、既に述べた魔法と機械技術に加え、スローベンが多方面に関して優れていたということを裏付ける材料であり、またブライスの反逆王子のエピソードは、やはりスローベンが旧世界に存在しているという説を裏付けるものであろう。

(1/29/05)

【追追記】
 AFF2用『ソーサリー・キャンペーン』の日本語版には、妖術スキルとしての『ソーサリー・スペルブック』が付随している。これはアナランドの魔法を技能体系としてルール化したものなのだが、これのこれまた付属的な説明部分に、アナランド以外の地における妖術の在り方を説明した部分がある。
 ここにはガランタリアやレンドルランドなどお馴染みの旧世界国家群が載っているわけだが、その中にモーリステシアの名が挙げられている。『タイタン』などの世界設定集においてもあまり触れられてこなかったこの場所は、その後FFシリーズが冊数を重ねるうちに舞台として整えられていったということもあり、近年におけるAFF2においては記載されるようになっているというわけだ。

 さて、件のモーリステシアについて何と書かれているか。そこにはこうある……「この山がちな国は、ヴァンパイア、ワーウルフ、ネクロマンサーといった不可思議で邪悪な存在に支配されています」と。
 ネクロマンサー! ついにそのものずばりなワードが出てきた。こうなると、現時点でスローベンの候補地はモーリステシアにあると考えることができるだろう。

(10/15/23)

★ 魔の罠の都

 12/24に、すわ発売日と某黄色潜水艦へ向う。だが、そっけなくまだ入荷していませんと言われる。むむ、何と使えない店だ。少し文句を言いながら創土社のホームページをチェック。おや? 発売日は26日ですと? ごめんね某黄色潜水艦。私の思い違いだったよ。

 12/26に、すわ発売日と某黄色潜水艦へ向う。だが、無い。今度は間違いないよ。やはり使えない店だ。此処以外で購入することを決意する。

 結局30日に某大型図書店にてゲット。海外ファンタジーに分類されていた。正しい。ゲーム攻略本の棚に並べられることも多いゲームブックとしては、まっとうな評価と言えるだろう。でも某年末イベントで忙しかったので、読んだのは新年あけて1/1であった。しかし某多いな。以後気をつけよう。

 今回も表紙は定石通り肥喰らいである。綺麗すぎるのか、某2chではあまり評判がよろしくないようだが、個人的には「潜っている」状態の肥喰らいというのが面白いと思う。本文で語られる下水道の汚水にしては、やはり綺麗すぎるとは思うが。

 浅羽訳によるカレーの描写は、なかなかどうして以前から持っていたこの町の印象から外れることがない。混沌として汚らしくて、住民はみんな自己中心的で、油断も隙もあったもんではない雰囲気がひしひしと伝わってくる。これはカレーですよ。間違いなく。シャムタンティの冒険のときよりも違和感がなかったかと。
 それはそうと、南カレーのカーニバルで開催されている闘技場で誤訳(パラグラフ82)を発見したですよ。ここの「鬼」は、「優勝者」とするほうが妥当と思うがどうか。ここが鬼だと、第一試合にて蛮人アンヴァーが鬼のカグー勝利した場合に矛盾が生じるのだ。ちなみに原文では該当部分は「彼」。旧訳版では「チャンピオン」である。

 細かい部分は多少アレですが、満足しております。1ファンとして、『ソーサリー!』を人に勧めるときに新訳版の出来に関する問題はまったく感じません。自信を持って勧めることができます。
 続く第三巻、四巻にも期待です。

(1/1/04)

【追記】
 先日更新された創土社の正誤表に、「鬼」「優勝者」の件がのっておりました。次版から修整されるようです。

(3/9/04)

☆★◆ 変化剣

 創元訳のころから一部で有名(?)な「購入前と購入後で変化してしまう剣」というのがある。店に並んでいる時は「両刃の剣」なのだが、購入したとたんに「広刃の剣」と表現がかわってしまうのだ。北カレーの市場にいけば、きっと君の目にとまるだろう。

 さて、私これはてっきり誤訳だと思っていたのです。しかし、創土訳でもこの変化がおきるではないですか。もしかして原文からして間違ってるのかもしれない…。そんなわけで原文をのぞいてみましょう。既に訳語対比に件の語を拾ってきてあったので確認。

 ははぁ。君が購入した「広刃の剣」は「broadsword 」ですな。一方、店に並んでいる「両刃の剣」の原文は「doubleedged broadsword 」。原文は間違っちゃいません。単語単位で見れば「両刃の剣」という訳で間違ってはいないのだが、文脈をみると「doubleedged broadswordを買いました。(パラグラフ移動)このbroadswordには●●の効果がある。」という形なのである。
 同一の物を示す二つの単語が、全く違う場所に表記されるパラグラフ形式というゲームブック故のミスなんでしょうか? それとも旧訳からの「お遊び」としてわざと残したとか?

(1/12/04)

【追記】
 ついに、この問題が整理されました! FFコレクション版では「両刃の【幅広の剣】」という形で矛盾なく対処されております。

(3/5/24)

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