★ 英国復刻版4冊買った

 現在シリーズ20周年を記念して、英国でFFシリーズが復刻されている。その中に『ソーサリー!』も含まれていたので、前々から欲しかったのだ。だが私は決して金が余って余ってしょうがない人間ではないので、送料を一括にしたいがためだけに4冊そろうまで待っていたのだ。でもボックスは待たない当たりが自分らしい。
 それはともかく、今目の前に原本(20年前の物と、復刻版とで内容に差があるかどうかは判らないが)が4冊並んでいる。今まで第一巻の原本しか持ってなかった自分としては、資料が3冊増えたというのは嬉しい。もちろん純粋に原文に触れられるというのが最も大きな収穫であることは言うまでもない。

 読む前に表紙を見ていて気が付いたことが二つある。まずは全てのイラストが書き下ろしだということ。第二は創土版『シャムタンティの丘を越えて』の表紙にもあったファイティングファンタジーのエンブレムらしきマークが全ての巻の表紙に付いていることである。これは旧版には無かった。
 第一巻の表紙を飾るのは定番のマンティコア。静かなイメージであった創土版とは異なり、暗がりの中、死体をむさぼるマンティコアである。お国柄なのだろうか?
 第二巻は旧版と同じく肥食らいである。…まぁリアル。旧版においても4冊中最も気持ち悪い絵ではあったが、おそらく今回も断然トップだろう(笑
 第三巻は旧版でのフェネストラではなく、七匹の大蛇が描かれている。
 第四巻の表紙を飾るのは従来通り、マンパンの大魔法使い(影武者)その人と、諸王の冠である。両手から稲妻を走らせるその姿は、旧版のイラストよりも魔法使いらしい。

 さて、中身を見てみよう。まだざっとしか見ていないのが、それでもいくつか気が付いた点があった。既に過去の雑記であつかった内容のものに関していくつか列挙してみよう。それぞれの項に追記の形で書いておいたので、興味がある方はどうぞ。

(9/12/03)

 ・「主人公の性別」に関して →「男か女か?
 ・「小さなマイト」に関して →「新訳(創土社版)ソーサリー発売直前
 ・「物見」に関して →「物見

★ Vanti-Bak Wastes

 訳語対比にピックアップさせていただいたが、Vanti-Bak Wastesという語がある。これは原本のマップには記されているが、過去『ソーサリー!』の訳本では登場していない地名なのだ。創元版に収録されているカーカバード地図では、この地名自体が削除されている。そして、創土版の地図にはその巻で移動する範囲(第一巻の時点では)の地名しか訳されていない。

 問題の地名が指す場所はバグ地方の東、カーカバード海までの間に広がる一帯である。『ソーサリー!』の冒険中には立ち入ることのない場所だ。ということは、創土版の地図上では訳される可能性は今のところ低いと言えるだろう。

 だが安心したまえ。この地名が訳されていないのはあくまで『ソーサリー!』に限った話なのである。Vanti-Bak Wastesの訳語は既に存在している。「ヴァンティ・バグ荒地」。それがこの土地の名だ。『モンスター事典』に納められているカーカバードの地図で見ることが出来る。

(9/24/03)

【追記】
 創土版の第三巻に収録されているカーカバード地図に載っていました。「ヴァンティ・バク荒地」です。

 しかし…社会思想社(『タイタン』や『モンスター事典』)では何故か「バグ」なんですよね。クラタ・バクやバドゥ・バクも同様なので、理由があってのことだとは思うのですが…。

(8/1/04)

【追追記】
『タイタン』及び『モンスター事典』では「バク」でした。ごめんなさい。 ヴァンティ・バク。ヴァンティ・バク荒地ですよ。
 それどころか旧訳でも「バク」じゃないですか(汗
「バグ」は私の頭の中にだけ存在していたようです。…私の頭と記憶力及び認識力はバグバグです(鬱
昔シャムタンティをシャムスタンティだと思い込んでいたあの頃を思い出しましたよ(前科ありでした

 関係者の皆様にはこの場にてお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした。

(8/12/04)

☆★◆ 北門の呪文


奥に隠れた掛け金ふたつ
ゴーレム皮の鍵ひとつ
クーガの慈悲とフォーガの誇り
お前に命ずる北門よ大きく開け

 例の北門を開くための呪文。これは創元訳であるが、原文を見て見よう。


So tumblers two sealed deep inside.
One lock made out of Golem's hide.
By Courga's grace, and Fourga's pride.
I bid you, open wide.

 おお、ちゃんと韻を踏んでいる。
 これは浅羽訳が楽しみです。

 しかし、順番のヒントって結局ないのですな。少なくともこの呪文の中には無い。個人的には数字とは関係ない4行目に順番のヒントがあったらよいなと思っていたのだが。

 1行目の提供者:長老ロータグ
 2行目の提供者:シンバ卿の死霊
 3行目の提供者:盲目の乞食
 4行目の提供者:スランの聖人

 彼ら呪文の提供者に出会う順番は1、4、2、3の順である。4行目には数字は含まれていないので、これをぬかすと呪文の入手順に唱えれば正解ということになっている。

 第二巻の全項目数が511。
 つまり、124、142、214、241、412、421と六通りの詠唱が考えられ、正解は1/6の確率となるわけである。(正解は214)この六通りのパターンの中には511を越えるものは無く、あらゆる詠唱パターンが考えられる作りになっている。

 呪文の入手順番は完全固定であり、この他にはどうあがいてもならないようにゲームが組み上げられている。普通にメモしながら遊んでいれば、正しい詠唱順番になるのだが、わざわざ詠唱順番を考えさせるように仕向けられるあたり、難易度をあげる作りといえるだろう。作者のちょっとした意地悪さが見える気がするw

 ちなみに呪文の順番を間違えた時のペナルティは、サルファゴーストによる一撃死という非常に厳しい物である。結果、第二巻はシリーズ中第四巻に続く高難易度であるとの評価に繋がっているのかもしれない。私も異存は無い。 

(10/13/03)

【追記】
 創土訳ではこうなりました。


封印されたる二本の軸よ
ゴーレム皮なる一つの錠よ
クアガの鷹揚、フォーガの矜持
かけて命じる、いざ開門

(1/4/04)

【追追記】
 この呪文の各行の並びに関して、重大な事実が判明した。
 先日手に入れたAFF2『ソーサリー!キャンペーン』シナリオにおいて、なんと従来考えられていた三行目と四行目が入れ替わって記載されているのである。


So tumblers two sealed deep inside.
One lock made out of Golem's Hide.
I bid you, open wide.
By Courga's grace, and Fourga's pride.

 こういうことである。これはなかなかに妙な気がする。擦り込みのなせる業か。
 確かに、『ソーサリー!』本文においてこの四行が続けて記述されていたわけではない。四行詩に隠されている数字は三桁であり、従来の四行目には数字は含まれていなかったのだ。これはすなわち、この行がどこに挟まっていても北門のリドルには影響が無いということである。 open wide. を最後に持ってこなければならないという約束はどこにもない。

 ちなみに Titannica - the Fighting Fantasy Wiki を見ると、従来考えられていた並びで四行詩は記載されている。これはどういうことだろう? AFF2版が単に誤植という場合と、本来ジャクソンが考えていたのが今回新たに浮上してきた並びであるという二つの可能性が考えられる。

 原文の韻をよく見てみると、-ide で統一されている(aaaa)だけではなく、実は -ide と -'s xxide があることに気づく。英詩は全く不得手なもので、こういう韻が形式としてあるのかどうかはわからないが、この違いを踏まえた上で四行を並べてみると、従来は(abba)であるのに対し、新解釈では(abab)となるのである。一応四行連句について簡単に調べてみると、(abba)も(abab)も基本形式として存在するので、どちらの解釈でも詩としてはおかしくないということが判った。

 個人的な意見になるが、クアガとフォーガの行の冒頭にある By を考えると、この行が四行目でも別段おかしくは無いのではないだろうか。創土訳では開門の行の頭を「かけて命じる」と訳することで、従来の並びでおかしくない形にしてあったが、これは四行を従来の並びにするという制約があったのかもしれないとかなんとか。

 そういえば、d20版ではこの四行詩どうなっているんだろう……?

(9/7/12)

【追追追記】
 先日発売されたAFF2『ソーサリー・キャンペーン』の日本語訳では以下の通りになっている。


深く封じるふたつの掛金
ゴーレムの皮から作られしひとつの鍵よ
コーガの優雅とフォーガの誇り
我は命ず、大きく開け

 三行目と四行目は再び入れ替わっている。創元、創土ともにこの並びだったのでこのほうがしっくりきますね。

 新たな訳となっているわけですが、個人的にはものすごく好きです。一行目と二行目から、これから解錠すべき「施錠の術」の存在を感じられるように思うのです。

(6/23/19)

【追追追追記】
 FFコレクション版での訳になります。


深く封じる二つの掛金
ゴーレムの皮から、一つの鍵よ
コーガの優雅と、フォーガの誇り
我は命ず、大きく開け

 同じグループSNEが手掛ける『ソーサリー・キャンペーン』と比べ、二行目がより簡素になっております。あくまで個人的にはですが、呪文としてはこのぐらいの粒度のほうがそれらしく感じますし、他の行との統一感もアップしているのではないかと。

(3/5/24)

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