★ デンマーク版のこと

 7/14/2023にFFコレクション第四弾、ジャクソン編についての公式発表があった。以前から新作『サラモニスの秘密』以外の四冊は『ソーサリー!』であろうことが予測されており、これがついに正式の情報となったわけだ。創元社、創土社に続き、日本語訳としては三度目となる。
 だが、これは単なる新訳ではない。第四巻の最終決戦回りが従来のものとは異なる新バージョンであると事前に明らかにされていたのだ。そんな別版が存在していたのかと驚いていたのだが、今回の発表ではこれがデンマーク訳の『ソーサリー!』で採用されていたバージョンであるということが告げられた。実に興味惹かれる内容である。楽しみは取っておきたいところではあるが、気になるのもまた事実。いったい、いつ頃このバージョンが生まれたのかが知りたくて、ちょっと調べてみた。

 件のデンマーク語版であるが、第一巻『Forbandelsens bjerge』は1988年に出ている。第二巻『Fældernes by』は1989年、そして第三巻である『De syv slanger』がちょっと飛んで1991年のようだ。翻訳者はThomas Bruunという方で、ほかにも多くのFFシリーズのデンマーク語訳を手掛けていらっしゃる様子。しかし、肝心の第四巻『Kongernes krone』が発行されたという記録を見つけることはできなかった。今回の調べ物でお世話になったのは「Demian's Gamebook Web Page」なのだが、第四巻に関しては”Unpublished”、つまり発行されていないとなっているのだ。画像検索もしてみたが、確かに三冊までは書影が見つかるも最終巻は発見できなかった。

  

 今回採用された最終幕が異なるというデンマーク版、FFコレクションの紹介記事によれば「現在はこちらが公式設定」であるという。これが未だ世に出ていないなんてことがあるだろうか? もしかしたらデンマーク語訳以降、どこかで発行されているかもしれない。そう、スコラスティック版の第四巻は2022年だ。Icon Books版だって2003年には出ている。先に述べた通り第三巻が1991年なのだから、これらの新しい版は終盤が改められているのでないか? ……まてまて。ちょっとまってくれ。自分はスコラスティック版は持っていないが、Icon Books版は当時入手して本棚に並んでいる……20年近くも目の前にありながら気づいていなかったとなれば、これはもう痛恨の極みといえよう。これを書いている現在、まだ確認はしていない。これからしてみようと思う……怖…

(7/15/23)

【追記】
 ということで、Icon Books版の第四巻を見てみました。まず項目数は従来と同じく800。正体を見破る流れから戦闘、倒して帰る手段を見つけて800へ……ううむ、Icon Books版は特に今までと変わらないですかね。こいつはスコラスティック版を買うべき理由が一つ増えてしまった……と思ったけど、Amazonのレビュー見る限りではスコラスティック版でも新展開は特に無さ気な感じですか。

 もしかして本当に、今回のFFコレクション版が初公開だったりするのかもしれませんね。

(7/15/23)

【追追記】
 日本語第三訳であるFFコレクション版の発売を控えた2024/2頭、デンマーク語訳版のボックス発売の報がありました。以前の調査のとおり、過去第四巻が刊行に至っていなかったのであれば、今回初めて四部作がそろうということになるのだと思います。FFコレクション版の邦訳にあたり、新バージョンの話がジャクソン氏から持ち掛けられたという話でしたが、今回の報とデンマーク版が新バージョンの原本ということからして、デンマーク版の企画が先行していたからこそだったのだと推測できます。

 こうなると気になるのは新バージョンの英語版ですね。個人的には英語と日本語の比較などもしてみたいですから、英語版の刊行も是非にお願いしたいと……こういう次第。

(2/3/24)

★ マンパン決戦妄想

 最終幕の展開が異なると予告されているFFコレクション版『ソーサリー!』。発売前の今しかできないことをしよう。そう、最終幕の展開予想(妄想)だ!

 どこから手を付けたらいいかという問題だが……「現在はこちらが公式設定となっている」というのは大きなヒントになりそうだ。考察の始点には良かろう。『ソーサリー!』第一巻が世に出てすでに40年。近年はAFF2が活発であり、関連資料も増えている。これらには、その「公式設定」が影響を与えている可能性があるのではないか?

 では、AFF2用シナリオとなった『ソーサリー・キャンペーン』から見ていこう。原本である英語版は2012年発行だ。従来のゲームブック版では、正体を見破られたファレンが机から諸王の冠を取り出し、それにアナランダーが気をとられた隙に変身が始まるのだが、『ソーサリー・キャンペーン』においては、冥府の魔王の頭に諸王の冠が乗っている。つまり、最終決戦においてアナランダーは冠の魔力とも戦わなければならないことになる。冠の力が具体的にどのようなものかはわからないが、少なくとも人心を集める魔力はあるはず。これが魅了の術に類するものであるのならば、冥府の魔王に服従したくなる精神的な試練があってもおかしくはない。
 次に『超・モンスター事典』を見てみよう。この本には冥府の魔王(ネザーワールド・デーモン)についての記載がある。これも英語原本は2013年の作だ。マンパンの大魔導がいかにしてデーモンに取り憑かれていったのかについて、二つの仮説が載っている。これも本編に取り入れられているかもしれない。コレトゥスやシャドラクの霊、あるいはリブラ様あたりなら断片的に語ってくれてもイメージは崩れない気がする。そして、パーティープレイを見越したTRPG向けに多少パンプアップされているためであろうが、能力値が高めに設定されている。技術点12に、体力点20というタフネスぶりだ。従来のラストバトルよりもサイコロ戦闘が苛酷になっている可能性も高いだろう……変身終了までに倒さないと一撃死が待っているという今の形は個人的には好みなのだが、この辺の塩梅は難しそうだ。
 ぱっと思いつくのはこのあたりだろうか。あとはそう、ios版とかはどうだろう。大分アレンジがされているが、制作にあたってはジャクソン氏とも十分話し合ったらしい。ただ、自分はプレイしてないので深く考察することはできない。

 以下は完全に妄想や趣味となってしまうが、牢獄塔で待ち受ける「影武者」についても何らかの掘り下げがあると嬉しいなとは考えている(最終戦というにはちょっと違うかもしれないが)。この男に関しては、『ソーサリー・キャンペーン』では”大魔導に仕える妖術師の一人”と説明されているが、『タイタン』などのイラストから、容姿がかつての大魔導その人と似ていることもわかっている。もっと何か深いつながりがありそうだというのは、これまで散々妄想し散らかしてきた通りだ。
 アーケード版『ドルアーガの塔』なんかにみられる手法だが、最終戦を複数段に構えるというのもある。『ソーサリー!』では変身というファクターを採用しているので、ファレン→冥府の魔王の間に仕込むことになろう。もちろん、旅の途中で対応するフラグを立てていれば回避できる、みたいな形がいい。さて、いかなる面子だと盛り上がるだろうか。候補となる存在を考えてみよう……まず先にも出した「影武者」は外せない。例の魔法合戦の結果によっては手傷を与えることができ、その場合は最終戦はスキップできるのだ。あとは第三巻にて出てきた「七つの魑魅」もいいかもしれない。アンデッド化したヒドラも個人的には好みに思えるが、神の頭を持つヒドラのインパクトには及ばないかな。
 変身段階を増やすという手法以外だと、ジャクソン氏と関連深いジョナサン・グリーン氏によるゲームブック『悪夢の国のアリス』の最終戦で採用された仕様も面白いかもしれない。旅の過程で得た仲間の数だけ、ボスの弱体化イベントが起きるというものだが、これならAFF2向けにパンプアップされた技術点と体力点にも対応できるだろう。

 いずれせよ、何らかの新しい展開は確約されている。世に出てくるまでの間、しばし楽しませてもらおう。

(7/18/23)

★ ラムの中には

 第四のスローベンドアとして砦の奥深くに配置され、サイコロはおろかシャムからもらった瓶ですらも大した効果が得られない強力無比な「眠れぬラム」。以前この怪物はゴーレムの一種ではないかと考察してみたが、今回はまた違った解釈を試みてみようと思う。
 この怪物もまた、『超・モンスター事典』に記載されているわけだが、そこにはこう書かれている。


大魔王がどのようにしてこれほど強力な手下を作り出せたのかは不明だが、一説によればスローベンの死霊術師(ネクロマンサー)ギルドから盗んだ禁断の魔術を使ったのだという。

 例によってスローベンのネクロマンサーである。『ソーサリー!』に登場するスローベンの秘術は4つのドアにせよZEDにせよ変異現象団子にせよ、実に死霊術っぽくない。もちろんゲーム関係の用語としては、Necromancerはゾンビマスターなどの死霊術師を指すことが多いのはおなじみの通りだ。だが言語としては死霊との交霊術を含む「邪悪な魔法使い」のことを指すわけで、それ以外の魔術もあっておかしくはないのだ。しかしせっかくネクロマンサーを自称しているのだから、一つぐらいは死霊術があってほしいのもまた事実。そう、大理石の身体の中に、何某かの霊を封じ込める形でラムが成立していればいいのである!
 ラムの行動は実に単純だ。「敵」を認知するまではじっとしており、一たび倒すべき相手を見つければひたすらに突進を繰り返す。知性は感じられない。中に封じられている霊が何者であれ、そこに存在しているのは標的を確実に仕留めんとする殺意だけだ。その性質の単純さから考えるに、おそらくだが邪悪な人間やデーモンではなく何かモンスターの類なのではなかろうか。獲物を嬲って遊ぶ様子もないので猫類でもあるまい。
 類感呪術の観点から考えると、ラム(雄羊)の姿をかたどっていることにも意味があるはずだ。だが雄羊に関係するモンスターとなると……なんかいたっけかな……? パッと出てこない。

 しかし羊というのはなかなかに不思議な存在だ。『タイタン』を見てみても、動物の王宮に名を連ねる神々の中に羊は見当たらない。馬や牛、鹿はいるにも関わらずである。実はタイタン世界においてはマイナーな生き物だったりするのだろうか?

(7/30/23)

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