★ 言語キメラ

 眠れぬラムといえば、そもそも何故ゆえに羊なのか。作中での行動にも表れているように、実際に羊は頭突きとかガンガンやるような連中ではあるが……ファンタジー世界で突進特化モンスターの第一人者と言われればそんなことはあるまい。牛や馬、あるいは象やサイなどのほうが適任であったようにも思える。しかしまあ、これはほぼ確実に言葉遊びから生まれたモンスターであろう。ご存じの通り、ラム(Ram)という言葉は雄の羊を指す言葉ではあるが、同時に”衝突する”という意味もあるので、これはいかにもぴったりな選択ではないか。

 さらにもう一つ。眠れぬが故、ということもあるように思える。よく寝付けない時に頭の中で「羊が一匹、羊が二匹……」とやるとよいなどと言われるが、あれ元々は英語圏での話が日本に紹介されたもの。羊は英語で Sheep、要するに眠り(Sleep)と似ているということで、頭の中で何度も唱えるうちに Sheep が Sleep になっていって寝てしまうと、そういう話なのである。つまり、眠れぬラム(Sleepless Ram)とは「羊のくせに眠れない」という存在なわけだ。Ram(雄Sheep)のくせに Sleepless という……
 余談ながら、こういうわけなので同じロジックでは日本語で「羊が一匹」とやっても眠りにたどり着けない。この話を「刷り込まれた」上で、始めて効果を発揮することだろう。

(8/5/23)

★ 『真・モンスター事典』へ想いを馳せる

 グループSNEから9月発行予定の『真・モンスター事典』。『モンスター事典』『超・モンスター事典』と合わせると、初期FFシリーズに登場するモンスターを網羅するボリュームとのこと。初期FFといっても、本国版66冊を意味するのでこれは相当なボリュームだ。既刊の2冊にも『ソーサリー!』のモンスターが載っていたことだし、『ソーサリー!』がハブられているということは万が一にもあるまい。ちょっと前に触れたマンパンの衛兵についても記載されているらしいので、ついに全ての敵性存在がデータ化されるのではないかと期待している。

 そう、実は未だ辞典に載っていない存在は多いのだ。マンパンの衛兵として働いている種族だけではない。ZEDによって飛んだ別時代で現れたアンティーロセット(創元訳では「始祖鳥」とされているが、あきらかに意訳)、一撃君ことニブダム、「トゲトゲした奴ら」こと大山嵐、そして第二のスローベンドアの前に居た、疑惑の黒い肌の生き物……
 第一巻で食料を食い荒らしていったリスみたいな生き物や、シャムタンティの空を飛ぶ森カモメ(創元訳ではカタカナ化で「ウッドガル」とされている)はどうだ? どっちもモンスターというには危険度が低すぎるかもしれない。魔導書に描かれた連中は載っているだろうか? 魔法のゴブリンと巨人についても1項目割り当てられていたりするのだろうか?

 しかし……第三訳『ソーサリー!』といい、今年は楽しみが多すぎますね……

(8/14/23)

【追記】  
 ざっと目を通してみたところ(何しろすごいボリュームなのだ)、アンティーロセット、大山嵐、マンパン砦の衛兵ことビーストマン、ウッドガルについては記載があった。また、第一弾『モンスター事典』の人オークの項で触れられていたスヴィンが、個別の項を得ている。
 また、KINのイラストがトゥルパなる名で紹介されている。こいつは鏡から現れるモンスターとして、拡張された存在となった。これによるとトゥルパはスローベンの死霊術士ギルドによって生み出されたと考えられているとのこと。トゥルパの鏡は黒曜石の一枚板で作られており、スローベンのルーン文字が刻まれた金属枠を備えているという。さてはKINの触媒である金縁鏡のことかと思ったが、続く記述にはこうあった。「西方の魔術師や妖術師の中には、《鏡像》や《KIN》などの呪文と付与魔術を組み合わせて、独自のトゥルパを作り出したものもいる。」
 KINはアナランドの魔法使いたちが、スローベンのそれを研究して独自に整えた術と考えることができそうだ。

(12/11/23)

【追追記】  
 ダークゴブリンについても記載があった。触れられている「カーカバードでよく使われている罵り言葉」に文化味を感じられて大変良きです。こういう仕込みは大好き。
 それにまさかのボリンが!

(12/12/23)

【追追追記】  
 角蛙についても記載がありました。どれだけ補完してくるというのだろうか、この事典は……!

(12/23/23)

★ マンパンの地下迷宮

 砦に地下牢があることは以前触れたことがあるが、どうやらもっと大規模な造り――それこそ迷宮と呼べるぐらいの――になっているらしい。その根拠となるのは『モンスター事典』における以下の記述だ。


この身の毛もよだつ怪物がどこからきたのか正確に知る者はいないが、マンパンの大魔法使いが地下迷宮の警備用に数頭やとったことは周知の事実である。

 これは粘液獣の項の一文だが、はっきりと地下迷宮と断言されている。大魔導の支配下にある場所をと考えると、かの砦あるいは監獄塔のいずれかであろう。先に見た地下牢や、地下に広がる抜け穴の存在を考えるに、砦のほうが有力と思える。我らがアナランダーも踏み入れなかった秘密の領域……四つのスローベン・ドアに守られた正規のルートの裏に、遭難必須のダンジョンがあったのだとすれば様々な疑問が氷解する。すなわち、カルトゥーム隊長らが夜の間や第三のスローベン・ドアを使わずとも砦の各所へ向かうルートが確保でき、また砦のいかなる場所からもナガマンテの拷問室へと哀れな犠牲者を連行することもできる。スローベン・ドアによって砦内が分断されていることの弊害が解決するのだ。もちろん、迷宮の全容を知る者は大魔導ただ一人だろう。如何なる地位の者であれ、誰もが己の領分についてのみ経路を知らされているはずだ。一歩でも知らぬ路に入り込めば、たちどころに死に至るような罠(なにしろマンパンの機械技術には目を見張るものがある……監獄塔のせりあがる床や、第一のスローベン・ドアを見るがいい)や、『モンスター事典』に書かれている通り粘液獣のような危険な怪物に出くわすのは間違いあるまい。

(8/21/23)

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