ビリタンティの近くで旅の道連れになるミニマイトのジャン。彼がいると、困ったことに一切の魔法が使えなくなってしまう。彼らミニマイトという種族は守りの霊気をまとっており、これが大多数の呪文をかき消してしまうのだ。この防御を打ち崩せるのは、ZEDなど一部の強力な魔法のみである。
このあたりに関連した呪文の描写だが、ちょっと興味を惹かれるものがあった。それは偽魔法に関するもので、ジャンが一緒にいる時には定番の「こんな呪文は存在しない」という文言抜きに五点の体力を消費するケースがあるのだ。ガザ・ムーンによってジャンを追い払うことが可能になるまでの間に偽魔法は4つ選択肢に現れるのだが、そのいずれもが同様となっている。つまりこれは狙ってこのように書かれているのであり、決して記述ミスではない。術の効果が出ない理由がミニマイトのせいなのか、それとも呪文の覚え違いなのか。その理由に関し、アナランドの勇者に与えられる情報は無い……48の呪文に含まれていたかどうか迷いながら魔法の選択肢とにらめっこする我らプレーヤーとは違い、奴め常に自信満々に呪文を唱えているというわけだ。
さらに面白いのが、「こんな呪文は存在しない」抜きのシーンにおいては例外なくジャンも何も言ってくれないところだ。後々第四巻において、ジャンは主人公が挙げる魔法の数々に対し、それが自分の守りを崩せるかどうか教えてくれる。このミニマイトはアナランドの魔法にも通じているというわけだ。それに旅を共にしている間、実在する魔法を選んだ時には彼は「ぼくがいるから魔法は無駄だよ」とか教えてくれるわけで、つまり偽魔法を選んだ際、ジャンはそれがでたらめだとご存じだということになる……おそらくは主人公が魔法を使っているつもりになっているとすらも思っておらず、故に己の霊気のことも言い出さないのではなかろうか。
簡潔な描写から読み取れる二人のすれ違いに、思わずくすりとくるのである。
GAKの触媒となる黒い仮面。カーレで手に入れた際には、これがブラックエルフたちの信奉する神々の一柱を模したものであるという説明がされる。『モンスター事典』によれば、彼らブラックエルフはかつて邪悪なダークエルフとともに地下に潜ったが、兄弟分の悪魔信仰に与するを良しとせず、反逆したとある。それ以上の情報は『モンスター事典』にはなかった。ダークエルフについては詳しい『タイタン』にも、ブラックエルフに関してはあまり書かれていない。さて……いったいどんな神なのだろうか? ダークエルフを裏切り、敵対する彼らが信奉しているのだから、この仮面のモデルとなった神は悪神ではなさそうだ。
基本に立ち戻り、『ソーサリー!』本編を見てみよう。まずは『スペルブック』を見てみたが、仮面の由来に関しては特に情報はない。だが実際に術を使ってみると、マナンカの霊はGAKについて詳しく知っているような様子をみせる。どういうわけかエルヴィンの集落で箱に入っているこの悪霊であるが、『モンスター事典』に載っている類似の存在「ナンカ」は名もなき邪悪な神の使いだという。ただ、ナンカを送り出すのは魔王子たちが崇めるほどの上位存在だとされているので、その魔王子らを崇拝し始めたダークエルフと袂を分かったブラックエルフが信仰しているとは考えにくい。しかし、もしも本当にそうだったのなら、エルフたちは悪しき神々の手のひらでいいように踊らされているというわけだ……この世界の神々は多くの名と顔を持っているケースも多々あるので、そういうことも十分あるかも知れない。
FFコレクション版においては、カーレの悪名高き〈旅の宿〉で出てくる料理が「芋虫料理」となっている。原文は grub で、こいつは「食べ物」のほかに「カブトムシなどの幼虫」を意味する言葉だ。過去二度の邦訳においては前者の意味合いで訳されていたのだが、今回後者の解釈となったということらしい。これまでカーレ名物といえばラムレ湖のマトン魚と相場が決まっていたが、これはこれで大いにありかもしれない。たしかに、芋虫料理が名物であるのならシンのサマリタンらが「カーレで楽しい思いをした」のも納得いくというものだ。
この新メニュー、まず間違いなく「ギロチンの犠牲者」は使われているだろうから……●肉と芋虫の熱々プレートという感じだろう。旅人の少し固い肉にクリーミーな芋虫が見事なハーモニーを奏でる。カーレの港へ来たなら、是非とも食しておきたい一品だ! おかわりもあるぞ!