◆ 『ソーサリー!』三度

 発売日に遅れること1日、2024年2月17日にそいつはうちにやってきました。グループSNEが手掛けたFFコレクション第四弾、スティーブ・ジャクソン編。重厚な化粧箱に収められた6冊。その大きさはこれまでの『ソーサリー!』の比ではない。判型こそ創土版と同じだが、厚さが違う。パラりとめくってみればわかるが、今回は二段組みではないのだ。第二巻や第三巻がもう創土版の第四巻と同じぐらいの分厚さ。そこに別冊となった『スペル・ブック』、さらにはジャクソン氏の最新作『サラモニスの秘密』が加わる……これがまたごっつい。先の第二巻、第三巻よりも当然分厚い今回の第四巻と同じぐらいあるのだから、全部合わせればそれはそれはものすごいことになってしまっている。品が到着する前に本棚にあらかじめスペースを空けてはいたのだが、なにしろ8センチ分しか用意してなかったので、まったく足りやしなかった。甘かった。しかたがないので先住の何冊かに移動してもらい、無事FFコレクション版を収めることができた。創元版、創土版、そしてPuffin版と合わせて総勢17冊(残念ながら私が所持しているPuffin版は初版ではない。つまり呪文書が独立しているVer.ではないのだ)。なかなかに圧のある顔ぶれと言えるだろう。他にもWizard版もあるが、内容はまったくPuffin版と同じだったので別の棚にある。もしかしたらそのうちScholastic版も揃えるかもしれないので、そうなると6種24+1、25冊もの大所帯となるわけだ。

 それはともかく、早速第一巻『シャムタンティ丘陵』をざくっと遊んでみよう……の前に、『スペル・ブック』で術のおさらいをせねば。上級ルールとしては「魔法使い」となっているが、AFF2に合わせ「アナランドの妖術師」で統一されているようだ。なるほど……こうきたか。
 準備は整った。冠を取り戻す旅に三度出ようじゃないか! これまでの翻訳とはまた異なる新訳による冒険。三種三様の雰囲気があって面白い。グループSNEによるAFF2関連書籍と同じように、サイトマスター、ミニマイト、オーガー、ヒル・ジャイアントなどモンスター名は基本的にはカタカナ化されている。武器や道具に関してはそうではない。ブロードソードは幅広の剣になっているし、術の触媒なんかも日本語になっている。このあたりは創元版と同じ傾向にあると言えるだろう。そう言えば、昨年の発表記事では「マンパンの大魔術師」となっていた Archmage は創元版と同じ「大魔王」になっていた。やはりインパクトある響きだ。かつて「王たちの冠/諸王の冠」と訳された Crown of Kings はシンプルに「王の冠」とされている。これは第四巻のタイトルでもある。
 カントパーニ門から出発した我が分身たるアナランダーはシャンカーを通ってクリスタタンティへ。その後リー・キへ進み、ダンパス、疫病の村を経てビリタンティへ入る。マンティコアは呪文3連でいなして無事にクリア。今回は4冊まとめての購入なので、このままインターバル無しに第二巻の冒険を開始することができる。だがその前に一筆と、今現在こういうわけである。

 当サイトでは今後も色々と書き連ねる予定であるが、今回のFFコレクション版、従来のVer.とは最終戦周りが異なる新Ver.だという。つまり、誰もが初体験となる。一応 index.htm に〝ネタバレ注意〟と書いてはあるが、今しばらくその差異については触れないようにするつもりだ……だが、それ以外の部分についてはたぶん随時書く。クリアした第一巻をパラパラめくっているだけでも色々と気付きがあったりするものでして……是非これからも取り留めのない我が戯言にお付き合いくださると幸い。よろしくお願いいたします。そして、グループSNEの方々をはじめ、第三訳にかかわった皆様。今回の翻訳お疲れさまでした。ありがとうございます。よし、次はカーレだ!

(2/19/24)

◆ 隠し資産

 我らがアナランダーは旅立ちの際、最小限の装備しか用意していない。旅に有用な品の数々は、旅路にて調達せよとの王家のお達しである。どこにでもある普通の剣一本、背負い袋、財布には金貨が10枚。そして二食分の保存食。これがルール説明にて明記されている初期装備の全てとなっている。パラグラフ1を見ても「服を着て」とあるだけで、アナランドは本気のようだ。ドラクエの王様もかくやという支給っぷりだが、マンパンに正体がばれないよう、ただの旅人を装わなければならないという理由もあるのだと納得するよりあるまい。
 ところが、最初の晩に実は「毛布」を持っていたことが判明する。


きみは毛布にくるまって眠りにつく。(第一巻パラグラフ283)

 なんだよ、こんなかさばるモンもってたんかお前。いやまて、第三巻でクラッタマンに夜襲されたときには上着をかぶって寝ていたはずだ。創元版で「チュニック」となっていたのが創土版では「上着」と訳されていたのが印象深くて覚えているぞ。どっかで失ってしまったのか、それともバクランドでは毛布を何か別の用途に使っていたのか……。いずれにせよ、アドベンチャーシートに記載されることのないアイテムを持っているというのは確かであろう。捨てたなんて描写はどこにもないのだ。
 つまりね、これは物々交換に使ったりプレゼントとして贈ることができるのではないかと。「何かおいていかなければならない」という指示の対価にすることもできるはずだ。狡い? そりゃぁ、今は重箱の隅をつついているわけですからして……

(2/21/24)

★◆ サマリタン

 まあ巷には「中世ヨーロッパをモチーフとした世界にジャガイモとは何事だ」というつっこみがあるわけですが、これは要するに「中世のヨーロッパにはまだジャガイモは新大陸から持ち込まれていなかった。歴史に合っていないからおかしい!」という主張ですね。ジャガイモはオーパーツだと、こういう話だ。
 存在しえない物品、概念。これは『ソーサリー!』でいえば先ず「サマリタン」であろう。前にも触れたが、サマリタンとはサマリア人、パレスチナ中央部サマリア地方に住む人々のことだ。当然ながらタイタン世界にサマリアなる地名は無い……自分が見落としていたのなら申し訳ないが、少なくともカーカバードを流れるナゴマンティ川の東、シンの地にサマリアがあるなんてことはあるまい。タイタン世界にいきなり「モンゴリアン」や「パリジェンヌ」が登場するような違和感と言えば伝わるだろうか。
 しかしこのサマリタン、英語では「good Samaritan」で情け深い人という意味を持つ言葉でもある。作中に出てくるシンのサマリタン(Samaritans of Schinn)には good はついていないが、意味合いとしては文字通りのサマリア人ではなく、ピーウィット・クルーらの立場を表した名称だと思われる。そういう点では、創土訳の「篤志家」という語は悪くなかった。篤志家とは、志が篤い者であり、社会奉仕の熱烈の支援者、実行者のことだ。カーカバード征服をもくろむマンパンの大魔導に抵抗する彼らの活動は、正に社会のためと言える。

 ちょっと脱線してしまった感がでてきた。今回何が言いたかったのかというと、このサマリタンというワードが、タイタン世界に即した地名由来だったらよかったのにと、そういう話である。ポート・ブラックサンダーやアトランティアンなら、住人の特性に合わせた熟語になっていてもおかしくはあるまい。例えば「詰めが甘い人々」だったらアナランダー一択だろうと、そういうことだ。心に名誉点を持っているのなら、君はグッド・ハチマニアンに違いない。

(2/21/24)

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