◆ DOCの謎――あるいはアナランダーの不思議

『ソーサリー!』にはいくつかの病が登場するが、今ぱっと思いだせるのは以下の五つである。すなわちシャムタンティに蔓延りつつあるという赤い病、バクランドで罹る可能性がある肺炎と黄死病、女族サチュロスを苦しめる震え病、そしてマンパン砦の便所を発生源とする蠅病だ。
 これらの病に対抗する手段はいくつかある。例えばビリタンティの水晶滝の水。そして優れた癒し手による治療。聖人コレタスやジャビニーは手で病を吸い取ることができるし、スヴィンの祈祷師もこの手の技術はお手の物だ。ZEDによる周回を考慮すれば、これらの治療手段はすべての病に打ち勝つことができる。

 ところで、我らがアナランドにも優れた癒しの術がある。そう、DOCだ。薬と併用することでその薬効を強めることができる魔法なのだが、なぜか冒険中、アナランドの勇士にはDOCによるこれらの病気の治癒は行えない。不運にも病を患った際、DOCは何故か選択肢として登場しない。しかし例外はある。第一巻において、赤い病に侵された一家をDOCで癒すシーンが存在するのだ。
 他人は癒せるが、自身は癒せない。これはどういうことだろうか。当然ながらDOCによる体力回復は自分に効果がある。病気の治療にのみ、この不可解な法則が当てはまるというわけだ。

 先に見た病のうち、震え病の症状にヒントがあるように思える。この病は脳に負担を与え、呪文を唱える際の集中を乱す。DOCの通常の効果、つまり体力の過剰回復を狙うのなら問題はおきないが、細かい調整――特定の病を癒すなど――が必要な使い方をする場合、術師には高度な集中が必要とされるという解釈ならば、この現象をうまく説明できるのではないだろうか。

 こう考えると、アナランドは魔法使い二人体制で冠奪還に当たらせるのが正解だったのではないかと思えてくる。DOCのみならず、たとえ一人がとらわれようとも、もう一人がDOPを使うことで解放できるなど、何かと臨機応変に立ち回れるに違いない。軍隊では無理でも、二人なら何とかなりそうな気がする。イルクララを舟で渡る際、もしかしたら3人(渡し守がいるので)は乗れないという可能性もあるが、それぐらいしか行き詰まりそうな理由は思いつけない。

(5/22/24)

メニューへ戻る

次へ進む

前へ戻る