◆ 数多のガラクタ

『ソーサリー!』には数多くのアイテムが登場する。その殆どにはきちんと使い道があるが、中には意味のないひっかけアイテムもある。ナイロックの店で売っている鳥の巣や、スナタ森で拾える植物なんかがいい例だろう。しかし、このカーカバードを横断する旅において、実はもっともっと沢山のガラクタを入手する機会があることに最近気づいた。それは第三巻における魔女フェネストラとの交渉のシーンだ。以下に引用してみよう。


 彼女は呪文の触媒をたっぷり蓄えており、交換に応じてくれる。きみが持っている触媒を二つ差し出せば、お返しに好きな呪文の触媒一つをもらうことができる(彼女は『スペルブック』に掲載されている呪文に必要な触媒をすべて持っている)。(第三巻 パラグラフ234)

 当然ながら、冒険の途中で『スペルブック』を参照することはできない。つまり記憶を頼りに触媒を入手することになる……そう、ここで「勘違い」が発生しうるのだ。記憶力を試すというギミックの性質からすれば、むしろその確率は高いはずだ。我々日本のアナランド野郎であれば、さらにその可能性は高くなる。何しろ一つの触媒につき、三通りもの訳があるのだから。
 裏が金縁の鏡、黄金の装身具、水晶球、火の酒、蝋蜜、グリーンメタルの指環、若い樫の杖、太陽の石……知らず知らずのうちに、未知のアイテムを手にすることもあろう。

 女族サチュロスの集落でしか手に入らないオレンジ色の粉末も、そうした由来の品と考えることもできそうだ。そして、これであの黄色い果実の皮や、閃光の火薬(月の蛇との闘いで選択肢に現れる謎アイテム)、銀の剣(☆創元版限定アイテム)の入手経路も見つかったわけだ。使用できるタイミングがフェネストラとの邂逅よりも前の品もあるが、そこはほら、ZEDがあることだし……

(8/16/24)

【追記】
 おっと。新Ver.のZEDだと巻をまたぐ時間移動ではアイテム持ち込みができないように変更されているのでしたね……。
 だが、黄色い果実の皮ならいける!

(8/17/24)

◆ 旅立ちの装備について

 奪われた冠の奪還を目指すアナランダーではあるが、その使命の重要度に反して国が用意してくれる品はほんの僅かだ。ゲーム都合という意味では理解できるが、少々腑に落ちない……そういう人は多いのではなかろうか。特に上級ルール(魔法使い)を選んでいたのなら、触媒の一つや二つ持って旅をスタートしたいと思うのは自然なことであろう。
 しかし、アナランドはそれを許してくれはしない。何故だろうか。これはおそらくだが、アナランドとしてはカーカーバードに特命を帯びた使者を送り出したことを極力隠蔽したいのだと思われる。万が一にも、マンパンにこちらの動きを悟られたくないのだ。特にそれが魔法使いとなれば、なおさらなのだろう。だから魔法使いであっても剣を帯びることになるし、触媒も一切持たせてはもらえない。確かに、疾風の角笛なんて持っていた日には、あからさまにアナランドの魔法使いでこざいと宣伝するに等しい。
 カントパー二門から出るときさえ見つからなければ、後はアナランドから来たということをひた隠しにすれば大丈夫。多少不便ではあるが、その意図は理解できるように思う。

 ちなみに、残念ながら細心の注意を払って主人公をひそかに送り出したにもかかわらず、時を置かずにマンパンの密偵である七大蛇によって主人公の存在は明るみに出てしまうのは知っての通り。なら最初から万全の装備でもよかったじゃんと思わないでもないが、これは結果論だろう。国境を守るサイトマスターの離反が日常茶飯事であり、また冠を盗まれるという大失態をしてしまったアナランドとしては、今後は何につけても慎重に慎重を重ねていただきたい。そうでないと困る。凱旋時にも、バードマンがまた来たぞとピーウィット・クルーらに矢を浴びせるぐらいはやって欲しいものだ。

(8/19/24)

◆ 呪われしマカリティック

 マンパン砦で遭遇することになる不快極まりない怪物、それが粘液獣ことマカリティックである。優れた治療師であったジャビニーの力を以てしても、怪物を治してやることはできなかった。「神々がじきじきに連中に与えた呪い」とは彼女自身の言葉だが、一体どの神だというのだろうか。以前の考察ではマカリティックは異世界から召喚されたのではないかと結論したが、タイタンの神々が関与しているのであれば、マカリティックもまたタイタン世界の住人であると考えるのが自然だと今は思う。ジャビニーが異世界の神にも通じている可能性はないではないが、普通に考えてそれは飛躍しすぎというものだろう。

 ジャビニーが直してやることができなかった彼らの「呪い」とは、マカリティックが汚物まみれであることでも、猛毒の息を吐くことでもない。きわめて耳が遠いことと、声が小さいことの二つだ。どちらも音に関する事象であることから、音にちなんだ神の呪いだと考えることはできそうだ。『タイタン』を紐解いてみたが、音に関する神は特に記述がないようだ……強いて言えば、音を媒介する空気ということで、風神パンガラを挙げることができよう。
 パンガラといえば、七大蛇が一匹である気の蛇に力を与えた存在でもある。かの大蛇の能力が毒であることを考えると、マカリティックと風神、そして大蛇の関係性は意外と多いといえるかもしれない。汚物まみれの点についても、例の渡し守テク・クラミン氏の不潔さとも通じるものが……これは少々強引であろうか。

(8/22/24)

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