いわゆる「叙述バグ」というものがある。前後のパラグラフの繋がりの組み合わせが多いゲームブックでは時折見られるものだが、『ソーサリー!』ではプロットが錯綜する最終巻に多い気がする。ネクロマンシーや日輪大蛇脱走などがこれにあたる。とあるルートでは矛盾は発生しないが、別のルートでは展開に矛盾が発生するというものである。
で、イラストでも似たようなケースがあることに気づいたというわけです。問題のイラストは第一巻の425。エルヴィンの集落で狼犬と戦うシーンである。主人公は GOB を使用したところだ。好きな数のゴブリンの歯を床にぶちまけ、下僕を生み出そう! イラストを見ると、二体のゴブリンが狼犬に立ち向かっているのがわかる。だが、一体しかゴブリンを作ってない場合もあるはずですよね。
【追記】
第四巻の646のイラストも、ゴブリンが2体はおりますね。さらに右下のやつもゴブリンか衛兵かどっちか迷いますが、6割ぐらいでゴブリンな気がします。
やっぱりゴブリンは集団でこそ映えるということでしょうか……
何を馬鹿なと言われそうなのだが、やつらには翼がある。『ソーサリー!』本編の描写を見ても『モンスター事典』を紐解いても、ありえないと一蹴されそうだ。エルヴィンらは魔力かなにか不思議な力で宙に浮遊している。そのはずだった。だが、ちょいと手をかざして HOT を撃ってみるとどうなるか。
そう、燃え上がったエルヴィンには翼があるのだ(原文では wings )。おそらく目には見えない彼らの魔力は、翼の形をしているのである。燃えることで、その形が浮かび上がったのではないか? 燐光や姿を消す魔法はさておき、これでエルヴィンの浮遊能力については説明できる気がする。
……まあ、素直に考えれば記述ミスではないかなと思いますけれどもね。
しかしこのシーン、HOT の描写もなかなかに独特である。我らのアラナンダーも器用に火の玉を操るものだ。
リー・キは巨人が住む所である。洞穴にはおそらく食用の巨大な肉の塊があり、アナランド人には持っていくことすらできない大きさを誇っている。
ちなみに創土訳では肉ではなく「大きなパンが一斤」と訳されている。原文では「large loaf」であり、loaf が意味するところは、焼いたまま切っていないパンの塊である。まだ切られていないパンだとすると、最初からこの大きさであったはずであり、それは巨人の手で焼かれたものに違いあるまい。だが同時に料理名でもあり、この場合は挽肉などを塊にまとめて焼いたものをさす。ミートローフとなれば聞き覚えもあろう。
肉をぐちゃぐちゃにして固めるのは巨人の力なら造作もないことだろう。対してパンを作るとなると粉を挽く必要があるが、何らかの穂から、臼無しで力任せに粉ができるとは考えにくい。リー・キには目の粗い網もあり、魚や獣を取っている可能性が読み取れる。だが穂の収穫に使う道具は無い。石臼の類も見つからないのだ。同じシャムタンティ丘陵でも、トレパニやクリスタタンティになると村の周りに畑があると明記されているが、リー・キではそのような描写は皆無である。
それに巨人のイメージからはパンよりも挽肉塊のほうがあっている気がする。「ジャックと豆の木」などでも巨人とくれば人食いだろう……だが、「マザーグース」にも出てくる奴のセリフを見ると、骨を挽いてパンにしてやると言っているのだ。パンと肉、どっちがリー・キ風と言えるだろうか。悩む所であります。
(マザー・グースより)
【追記】
例のアナランド人がこの「ローフ」を食して体力回復ができることを考えると、人間の骨を挽いて焼いたパンではないことを祈るばかりです。
【追追記】
『モンスター事典』の丘巨人の項目によると、彼らは人肉を好み住まいの洞窟に貯蔵庫を作っていることもあると、そんなことが書いてありました。
……これはもう決まりですね!(黒子さん情報提供ありがとうございます)